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レアル・マドリードの対応力は凄まじい。“塩漬け”ではなかった0-0の90分間、リバプールとの差は…【CL分析コラム】

UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝2ndレグ、リバプール対レアル・マドリードが現地時間14日に行われた。1stレグを3-1で勝利していたレアルは0-0のスコアレスドローに持ち込み、準決勝進出を決めている。リバプールも多くのチャンスを作ったが、レアルの試合巧者ぶりが光った試合だった。(文:加藤健一)

シリーズ:分析コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

クロースを封じたリバプールの戦略

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【写真:Getty Images】

 試合の采配は結果論のようなところがある。UEFAチャンピオンズリーグに出場するようなトップレベルのチームでは、膨大な量の分析をしたうえで、リアルタイムで起きていることも集約される。指揮官はその莫大なデータをもとに決断を下す。しかし、フットボールは結果を左右する要素が多すぎるので、下した決断がうまくいくとも限らない。

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 1stレグでレアルは、リバプールのファビーニョを回避する攻撃を見せていた。トニ・クロースが低い位置でボールを受け、DFラインの裏にロングボールを送る。ショートパスでつないでいけばアンカーのファビーニョのところで封鎖されるリスクが高いが、ファビーニョの頭の上を通るボールをうまく使っていた。

 リバプールは1stレグで起きていた問題を修正してきた。方法はシンプルで、クロースから自由を奪うことだった。対面したジョルジニオ・ワイナルドゥムは低い位置に降りるクロースにもマンマークでついていった。

 サポートに入るルカ・モドリッチに対しても、ジェイムズ・ミルナーが追っている。この日のパス成功率はクロースが87%でモドリッチが80%。普通の選手であれば十分に高い数字だが、クロースが93%、モドリッチが87%だった1stレグと比べれば、彼らはボールをつなぐ部分に苦労していた。

 レアルの心臓部を抑制したリバプールは試合の主導権を握った。敵陣に押し込み、ボールを失ってもすぐに奪い返す。シュート本数も16対7と圧倒し、決定機も作った。しかし、ゴールが遠かった。

右SBに抜擢されたバルベルデの勝利

 対策をしているのはレアルも同じだった。1stレグでは降りてくるクロースと入れ替わるようにカゼミーロが高い位置を取ることが多かった。リバプールのカウンターを受けた際にスペースが生まれていたが、2ndレグではその場面は減っていた。1stレグで勝利したことで、リスクヘッジをしっかりと行っている。

 レアルは右サイドに問題を抱えていた。ダニ・カルバハルの代わりに右サイドバックを務めてきたルーカス・バスケスも負傷し、この試合ではフェデリコ・バルベルデが右サイドバックで起用された。MFを本職とするバルベルデは、立ち上がりにマネに突破されるシーンがあり、ピンチを招いていた。しかし、試合全体で見ればバルベルデの適応力の勝利。マネからボールを奪うことが何度もあり、マネは次第に存在感を消していった。

 ターニングポイントは60分の場面だったと思う。リバプールはオザン・カバクとミルナーを下げ、チアゴ・アルカンタラとディオゴ・ジョタを投入する。攻勢を強めるというユルゲン・クロップ監督の合図だった。

 ファビーニョが最終ラインに下がり、ワイナルドゥムとチアゴが中盤の底に並んだ。最前線にモハメド・サラーが構え、2列目には右からサディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノ、ジョタが並んでいる。

 時間の経過とともにレアルはブロックを敷いて守る意識を強くしていった。右サイドに回ったマネも不発。フェルラン・メンディのマッチアップではミスマッチが起きにくく、スペースも消されていた。

単なる“塩漬け”ではない。リバプールとの差は…

 レアル・マドリードは試合を塩漬けすることが多い。力の差があるラ・リーガの試合でも、追加点を奪いに行くよりリードを守り切る方に比重を置くことが多い。リードした試合を守り切るのは、ジネディーヌ・ジダン監督の得意技だ。

 しかし、リバプール戦は塩漬けというより鎮火といった方がいいかもしれない。クロップ監督が打つ手に対して柔軟に対応し、リバプールの良さを消していた。

 レアルは72分にトニ・クロースを下げてアルバロ・オドリオソラを入れている。クロップ監督が60分に攻勢を強める交代を行ったのに対し、レアルの交代には守り切ろうというメッセージが含まれていた。

 オドリオソラは本職の右サイドバックに入り、バルベルデも中盤のMFに収まった。オドリオソラは走力を活かして右サイドを上下動し、ロバートソンを監視した。2戦合計スコアで2点をリードしたレアルはボールを持つ必要もないので、インサイドハーフもクロースよりバルベルデの方が都合が良かった。

 塩漬けというとネガティブなニュアンスだが、レアルのそれはかなり高度だ。相手の良さを消し続け、相手が出方を変えてくれば瞬時に対応する。この洗練された戦い方こそが、ジダン監督がタイトルを獲り続けてきた理由なのだろう。

 ベスト8の中でレアルは決して戦力的に優れているわけでもなく、セルヒオ・ラモスとラファエル・ヴァラン、そして2人の右サイドバックを欠いていた。相手も状況としては似ていたが、リバプールとの差はこの対応力だったのかもしれない。

(文:加藤健一)

【了】

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