【写真:Getty Images】
なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)は11日、パナマ女子代表との国際親善試合に7-0で勝利を収めた。
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8日に行われたパラグアイ女子代表戦に続く7点差の大勝となったが、相手はともに格下。最新の女子FIFAランキングではパラグアイが47位で、パナマは59位だ。また、どちらの国も東京五輪の出場権を獲得できていない。
日本が実力に大きな差のある国相手に2試合をこなしているのと同時期に、他の東京五輪出場国は強豪同士のマッチアップで確実な強化を図っている。
アメリカ女子代表は10日に欧州の強豪スウェーデン女子代表と1-1で引き分け、13日にはフランス女子代表と対戦予定だ。中2日での連戦という点も含め、五輪本番のシミュレーションとして2試合に違いない。
今年3月にプレーオフを勝ち抜いて東京五輪出場権を獲得したオーストラリア女子代表も、今月は欧州遠征に出た。2-5敗れはしたものの10日にドイツ女子代表と対戦し、13日にはオランダ女子代表戦を控えている。こちらも東京五輪の中2日の日程を考慮したマッチスケジュールを組んで強豪国との対戦経験を積んでいる。
なでしこジャパンが東京五輪の準備に使えるのは、6月の2試合と、開幕直前の7月憎まれている1試合、合わせて3試合だけだ。いずれもまだ対戦相手は決まっていないが、他国の状況を見ていると準備の遅れを取り戻せるかどうか疑問が残るところだ。
パナマ戦を終えた後、なでしこジャパンを率いる高倉麻子監督は「今回もまずこういった形で試合ができたことをプラスに考えたいと思います」と述べたうえで、次のように続けた。
「五輪のメダルをかけて戦うことを考えると、もう少しFIFAランキングが上のチームとも試合をしていかないといけないので、そのへんはお願いをして交渉をしています。しかし、こういった状況のなかで、たとえばヨーロッパのチームが日本に来るだとか、私たちがヨーロッパに行くのは、本当に厳しいものがある。もちろん交渉を続けながらも、(6月は)なるべく五輪に参加してくるようなチームと対戦できるような方向に持っていきたいなと思います」
指揮官も、よりハイレベルなチームとの対戦機会を欲している。現状に満足していないのは間違いない。
パラグアイ戦で1得点を挙げ、パナマ戦ではハットトリックを達成したFW菅澤優衣香も「五輪を想定した中でスピードやパワーのある海外のチームと対戦できればいいと思っているので、どこというのはあまりないけど、力のあるチームと対戦できればいいと思っています」と、6月には強豪国との試合を望んでいる。
パナマ戦の前日にオンラインでの取材に応じたFW籾木結花は「もちろんアメリカ代表やヨーロッパの強豪国と試合ができたら、今の自分たちの立ち位置であったり、できること・できないことがはっきりしてくると思う」と語っていた。
新型コロナウイルスなどの影響も受けて理想的な準備ができないなか、東京五輪に向けて危機感は「もしかしたら感じないようにしているのかもしれない」と、籾木は思わず本音も漏らしていた。
しかし、「自分たちがコントロールできない部分がすごく大きい」状況では「目の前の相手や自分たちに矢印を向けて、今できることをしっかり積み上げていくことが、周りで行われている親善試合と比較することなく、自分たちが五輪や優勝に向かっていく上で一番の近道」だと籾木は強調する。
格下相手の国際親善試合に全く意味がないわけではない。約1年ぶりとなった代表チーム相手の対外試合で、自分たちの攻撃のリズムを再確認し、うまくいっているように見えるなかでも課題を抽出することはできる。
とはいえ本番で起きうる状況を体感し、より実戦的な側面からチームの現在地を正確に認識するのは難しいだろう。自国開催の五輪で金メダル獲得を目指すにあたり、大会直前に実力差の大きなチームとの対戦しか組めなかったことを、夏になって後悔しなければよいのだが……。
(取材・文:舩木渉)
【了】