攻守に輝いたバルベルデ
「我々はゲームをコントロールすることができたし、勝利するに値した。3点目や4点目を決めるチャンスもあった。我々はリバプール戦同様、今日の試合でも多くのものを要求されたが、この手の試合だとそれは普通のことだ。これは、レアル・マドリードに相応しい勝利だった」。
【今シーズンのレアル・マドリーはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】
バルセロナとのエル・クラシコを終え、ジネディーヌ・ジダン監督はこう振り返った。確かにマドリーに相応しく、そして実にマドリーらしい勝利だったと言える。
ラ・リーガ連覇のために負けるわけにはいかなかったマドリーは、今回のエル・クラシコを前半のうちに“決めることができた”と言ってもいい。ジダン監督が用意してきた策はバルセロナを前に抜群の効果を示している。
まずキーマンとなったのはフェデリコ・バルベルデだ。本職ではない右ウイングで起用されたウルグアイ人MFは、守備時に左ウイングバックのジョルディ・アルバに仕事をさせない任務を託されている。そして、同選手はそのタスクを見事に完遂。右サイドに蓋をしていた。
バルベルデが高い位置にポジショニングするJ・アルバを警戒することで、マドリーは守備時に実質5バックとなった。そうすることで各スペースを埋められ、バルセロナの攻撃の勢いを止めていたのである。
そのバルベルデは攻撃時にも存在感を示している。13分の先制点の場面では、同選手が内側にドリブルしたことでDFが引き付けられサイドが空き、そこをルーカス・バスケスが突いた。そしてバルベルデからパスを受けたL・バスケスはカリム・ベンゼマにグラウンダーのクロスを送り、ゴールをお膳立てしている。
34分には豊富な運動量と抜群のスプリント力を活かして自陣から一気にゴール前へ。ヴィニシウス・ジュニオールからパスを引き出した同選手はポスト直撃のシュートを放つなど、GKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンを脅かした。
バルベルデは後半にやや疲労の色が見え始め、足を痛めた感じもあった。そして61分にベンチへ下がっているが、それまでの仕事量は申し分なかった。マドリーが前半を2-0で終えられた一因は、間違いなくこの男の存在である。
戦術上のキーマンになりつつある背番号20
そしてもう一人忘れてはならないのがヴィニシウス・ジュニオールの存在だ。
マドリーは立ち上がりからバルセロナにボールを保持された。しかし大きな問題を起こすことなく、反対にある程度受けてからカウンターという狙いを徹底するなど、押されているようでしっかりと押していた。
そのカウンター時に存在感を発揮したのがヴィニシウス。バルセロナ3バックの背後や脇に出てくるボールに対ししっかり反応し、足を動かし続けた。
ただ出てくるボールに走るだけでは怖くないが、ヴィニシウスの場合ドリブルで仕掛け深さを作れる。そして、そこからまたやり切れる力がある。だからこそ、オスカル・ミンゲサやロナルド・アラウホにとって脅威の存在だった。バルセロナをゴールから遠ざけるという意味でも、ヴィニシウスのもたらした効果は大きかった。
28分にトニ・クロースが少しラッキーな形でフリーキックを決めるが、そのキッカケとなったのはヴィニシウスの仕掛けである。数的不利という難しい状況だったが、二人の間を射抜くような突破でファウルを誘発した。
結果的にゴールやアシストという結果は出なかったが、ヴィニシウスはカウンターを武器とするマドリーにおいてキーマンになりつつあるということを証明した。爆発的なスピードと切れ味のあるドリブルが魅力というのはもちろん、課題である仕上げの部分も着実に向上している。もちろんまだまだ満足いくレベルではないが、明らかにプレーからは自信が溢れている。
用意した策でJ・アルバを封じ、カウンターでバルセロナを苦しめ前半のうちに2点を奪ったマドリー。後半は相手に押し込まれ1点を返されたが、やはり2点のリードは大きく、その後は守備を再び整備するなどうまく時間を進め試合を締めた。強豪らしいゲーム巧者ぶりと言えるだろう。
その戦術の中で与えられた役割をしっかりと、それも高いレベルでこなしたバルベルデとヴィニシウスは大きく評価されるべきだろう。もちろん他の選手も素晴らしかったが、エル・クラシコという舞台のダブル主演は彼らだった。
(文:小澤祐作)
【了】