相手のプランに溺れる
ラ・リーガでは昨年12月の第12節カディス戦以来負けなし。ロナルド・クーマン監督率いるバルセロナはまさに絶好調で、首位アトレティコ・マドリードをその座から引きずり下ろそうとしていた。
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しかし、そんなバルセロナでも、永遠のライバルであるレアル・マドリードから勝ち星を奪うことはできなかった。激しい雨と風に見舞われたエスタディオ・アルフレッド・ディ・ステファノでのエル・クラシコで1-2と敗れている。
結果的に、となってしまうが、3-4-2-1でスタートしたバルセロナは前半45分間の出来で大きく崩れてしまったと言える。ただ、同チームが酷かったというわけではなく、マドリーの準備が素晴らしかったと言うべきだろう。
ジネディーヌ・ジダン監督が右ウイングに起用したフェデリコ・バルベルデにより、左ウイングバックのジョルディ・アルバが警戒された。右ウイングバックのセルジーニョ・デストは対峙したフェルラン・メンディを個で上回れず、スピードのあるウスマンヌ・デンベレも仕事は与えてもらえない。要所要所で、バルセロナの選手は自身の良さを消されていた。
J・アルバのマンマークを右WGのバルベルデが担当したことで、右サイドバックのルーカス・バスケスがより内側を意識して守備できる。するとマドリー最終ラインの距離感が必然的に良くなり、各スペースが狭まる。この実質5バックがバルセロナにとっては非常に厄介で、最も狙いたいポケット(ハーフスペースの延長上)を突くことが難しくなってしまった。
アウェイチームはボールこそ持てたが、上記した守備を見せるマドリーに問題を起こさせることはできなかった。むしろ、ある程度受けてカウンターを狙うという姿勢を崩さぬ相手に苦戦し、3バックの脇や裏のスペースを何度も突かれている。ボールロスト後に即時奪回を狙っても、トニ・クロースのダイレクトパスやルカ・モドリッチのワールドクラスのキープ力を前に無力化され、自陣深い位置へと押し戻されていた。
相手の徹底したカウンターに苦労したバルセロナは13分と28分に失点し、前半を0-2で折り返している。45分間で支配率68.8%を記録しながらも、シュート数でマドリーを下回ったというスタッツが、すべてを表していた。
マドリーの中央3人衆に苦労
クーマン監督は後半に入り3-4-2-1から4-3-3へと変更している。前半はスペースがなく苦労していたデンベレを右サイドに移し、リオネル・メッシを中央、左にはデストに代わったアントワーヌ・グリーズマンが配置されている。
前半のうちにL・バスケスが負傷し、今季あまり試合に絡めていないアルバロ・オドリオソラが登場。さらに立ち上がりから運動量豊富に働いていたバルベルデにやや疲労の色が見え始めたことで、バルセロナは前半よりもマドリーを押し込むことができた。60分にはJ・アルバのクロスをオスカル・ミンゲサが合わせ、1点を返している。
その後もバルセロナはもちろん攻め続けた。選手交代も積極的に行い、途中からはフレンキー・デ・ヨングを最終ラインに落とした攻撃的な布陣に変更している。
ただ、ジダン監督もそれを黙って見ているほど甘くない。同監督は72分、カリム・ベンゼマやクロースら重鎮を下げ、マルセロらを投入し、ミリトン、ナチョ・フェルナンデス、F・メンディの3バックを形成。守備時は5バックとなった。
再び最終ラインに多くの人数を並べられたバルセロナは、ここでも苦戦。とくにマドリーの中央は堅く、なかなか攻略できなかった。
ミリトンはもともと身体能力が高く、ボールを撥ね返す力がある。ナチョは上背こそないが、優れた危機察知能力とカバーリング力で最終ラインを引き締めた。この二人はセルヒオ・ラモス、そしてラファエル・ヴァランという両者の“代役”という域を遥かに超えるパフォーマンスを見せていたと言える。
その中央の守備力をさらに引き上げたのがカゼミーロ。マドリー不動のアンカーはこの日も絶妙なポジショニングで攻撃をシャットアウトし、インターセプトは両者合わせて断トツの5回を記録した。終盤に警告2枚で退場へと追い込まれたが、それも危険なスペースを的確に埋めたからこそだった。
その3人を中心とした守備を前に、バルセロナの攻撃の要であるメッシも苦労。シュート数は両者合わせてトップの7本放ったが、うち5回はブロックに遭っている。前線のメッシが中盤まで下がって組み立てに参加したことも、マドリー側の守備がセットしやすくなった要因と言えたのかもしれない。
ポケットを突くという4バック攻略の常套手段を封じられ、カウンターを狙われ、後半は1点を返すも守備を固められ敗北。試合運びという面で、バルセロナはマドリーを下回ってしまった。
(文:小澤祐作)
【了】