代表チームらしい強化の手法
大量14ゴールとなったモンゴル代表戦。このスコアではリードしているほうが緩む。または、負けているほうがラフプレーに出たり、すっかり諦めてしまう。そうやってゲームが壊れていくものだが、この試合はそうではなかった。
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たとえ相手が格下であっても14点はなかなかとれない。モンゴルは5-4-1で守備を固め、球際の強さもあり、驚くべきことにほぼ最後まで集中力を切らさなかった。その相手に全く緩むことなく得点を重ねた日本代表の姿勢は見事だった。
日本の先発メンバーは韓国代表戦から両SBが代わっただけ。森保監督就任時の中島翔哉、堂安律、柴崎岳のいたメンバーも強かったが、現在のチームはそれ以上の威力をみせている。戦術的なベースは同じにして、そのときどきの調子の良い選手を組み込む手法は代表チームらしい。
代表チームはワールドカップごとの4年で強化を行う。期間が長いわりには、まとまって練習する機会が少ないのがクラブチームとの大きな違いだ。
4年の間にはピークを過ぎてしまう選手もいれば、台頭してくる選手もいる。そこで戦術的なベースだけは一定にしておく。そのほうが新たに入ってくる選手もわかりやすい。あまりにも作り込みすぎてしまうと、選手が変わることでチームへの影響が大きくなり、試せる選手も限られてしまう。
鎌田大地、伊東純也の台頭が人選の大きな変化だった。2人とも所属クラブで活躍している。一方、初期のレギュラーだった中島、柴崎が外れた。そして遠藤航が不可欠の存在になった。クラブで活躍している選手を起用し結果も出ている。良いプレーを見せて人々を元気づけたいという森保監督の言葉どおりのプレーぶりでもあった。
鎌田大地と南野拓実の関係性
歴代の日本代表を振り返ると、戦術的なポイントが左サイドであることが多い。ハンス・オフト監督時代のラモス瑠偉、フィリップ・トルシエ監督のときの中村俊輔や小野伸二、アルベルト・ザッケローニ監督時の香川真司、ロシアワールドカップの乾貴士、そして森保監督下の中島、南野。
能力が高いだけでなく、よく言えば「自由人」。単純に右利きがほとんどのせいもあって、中へ入っていく傾向がある。そのため左の自由人は戦術的に諸刃の剣という側面もあった。
規格外の選手にはメリットもデメリットもある。例えば、リオネル・メッシはチームにもたらすメリットがあまりにも大きいので問題にもならないが、メッシを起用することでのデメリットもあるのだ。デメリットのほうを監督が許容できないと、かつてのバルセロナにおけるルイ・ファンハール監督とリバウドのような確執も起こる。
南野拓実は左サイドでプレーしながらゴール前へ入って行く。先制点のときはむしろ右寄りにいて、大迫勇也のチーム2点目は吉田麻也からのパスを中央でスルーしている。
南野の得点に直結するプレーは中央でこそ発揮されるので、左サイドに張り付かせるのは得策ではない。ただし、トップ下として相手のDFとMFの間でパスを受けるプレーにはそれほど特別な印象がなくて、アジアカップでもむしろ大迫が引いたほうがスムーズだった。トップ下としては鎌田が適任だ。しかし南野の得点力は捨てがたい。
モンゴル戦では南野が中へ入ると、鎌田がサイドへ流れていた。ザルツブルクでサイドハーフとしてプレーしていたときの南野もやはり中へ入っていたが、味方がレーンを埋めてくれることはなく、持ち場まで自力で戻っていたものだ。ポジションを離れても糸の切れた凧にならないのは南野の長所だが、ザルツブルクと比べれば日本代表ではもう少し楽にプレーできそうだ。
後半には鎌田と南野をインサイドハーフに置いた4-3-3も試していた。伊東純也のように大外レーン専門の選手もいるが、鎌田と南野のようにレーンを交換できるユニットがいくつかあると、より攻守の柔軟性は高まるはずだ。
(文:西部謙司)
【了】