アルゼンチンとの差
0-1の僅差負けだが、それなりの差はあった。主に球際とゲーム運びだ。
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U-24アルゼンチン代表は球際で優位だった。U-24日本代表の選手がボールを持ったときに、懐へ入って間合いを詰めている。入れ替わられそうになっても、体を入れるかぶつけるか、あるいはファウルでも、止められる自信があるからだろう。それだけ圧力は強くかかる。
昔からアルゼンチンは接近戦に定評がある。芝が深くボールが止まりやすいからだというが、確かにデュエルにおける体のキレや強さは伝統的な特徴だ。一方、攻撃での局地戦の上手さや突破力も伝統だが、今回のチームはときおり細かいパスワークを見せるものの、こちらはそこまでではなかった。
日本はアルゼンチンの間合いに慣れるまで時間がかかっていた。J1では無双の三笘薫のドリブルもかなり止められていた。幸いもう1試合できるので、間合いに関してはある程度修正できるかもしれない。
アルゼンチンは後方キープから裏へ足の長いボールを入れ、全体を押し上げていた。ラインコントロールも細かく、陣形をコンパクトに保ちながら前進守備で日本のパスワークに圧力をかけて主導権を握った。
アルゼンチンの球際の強さとゲーム運びにリズムをつかめないまま失点している。失点場面も板倉滉が体の入れ合いに負けたところから崩されている。ただ、後半には日本も持ち直し、前半よりもボールを運べていた。決定機はほとんどなかったものの、サイドからの崩しでいい形までは作れている。
短い時間で何ができるか
五輪代表の強化はいったん頓挫している。まず、国内組と欧州組の2つのチームを並行していかなければならない事情があった。五輪代表には招集の強制力がないからだ。強化試合に欧州でプレーする選手を毎回招集するのは難しいのだ。
国内組でベースを作り、そこへ欧州組を組み込むつもりだったのだろうが、AFC U-23選手権で惨敗を喫してしまい、欧州組に頼らざるをえない状態になっていた。昨年に東京五輪が開催されていたら、欧州組中心のぶっつけ本番に近い形で臨むことになっていたはずだ。
五輪が1年延期となって時間は稼げたが、その間に強化は行われていないので、いわば時間は止まったままだった。アルゼンチン戦に招集した欧州組は6人。招集できなかった堂安を含めると7人になる。チームとしての完成度でもアルゼンチンのほうが上に見えた。
ただ、ほぼここからのスタートなので、次戦での巻き返しに期待したい。左サイドでは旗手怜央が三笘へのパスコースを開ける立ち位置をとっていて、同じクラブのコンビらしい連係はあった。まだ周囲がそれを生かし切れていなかったが、「個」を生かせる状況は何度か作れている。残された時間は少ないながら、そうしたお膳立てがあと1つ2つできれば、個人能力をもっと使えるようになるだろう。
(文:西部謙司)
【了】