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日本代表 4年前

すでに日本代表は出遅れている可能性も…。ワールドカップベスト16の先を目指すために必要な「デジタル化」とは?【西部の目】

日本代表は25日、韓国代表との国際親善試合に臨み、3-0で勝利している。初出場初先発でゴールを決めた山根視来に加え、出場した多くの選手が爪痕を残した。試合自体は文句の付け所のない快勝だったが、ワールドカップでベスト16の先を目指すためには、現在のチームに強豪国に太刀打ちできる強さはないのかもしれない。(文:西部謙司)

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司

日韓戦完勝に見えた収穫

日本代表
【写真:Getty Images】

 完勝だった。交代出場選手も含めて全員が持ち味を発揮し、即席に近いチームとは思えないほど連係もスムーズ。これは日本代表の強みで、同時に壁でもあるかもしれないのだが、この韓国戦に関しては全く何の問題もない。

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 前半に圧倒された韓国は後半から「精神武装」してくるのかと思ったが、それすらなかった。日本は5点とれたと思うし、VAR(ビデオ・アシスタント・レフリー)が入っていたら韓国は退場で10人になっていたはずだ。この試合の力量差ははっきりしていた。

 昨年の欧州遠征あたりから取り組み始めたGKを含めた後方からのビルドアップは上手く機能している。ロシアワールドカップのベルギー戦のように、相手に押し込まれたときに流れを変えるには必要な戦術だ。ここに進捗が見られたのは収穫だった。

 ごく短い準備で、これだけスムーズなチームプレーができるのは日本の長所だと思う。ただ、この初速が最大かもしれない。

 森保一監督が指揮を執りはじめたときもそうだった。南野拓実、大迫勇也、堂安律、中島翔哉の前線が素晴らしい個人技と連係を見せつけ、今すぐカタール大会でいいのではないかと思えたものだ。ただ、それ以上は伸びなかった。

 ナショナルチームとは、そういうものでもある。各ポジションに最高の選手を揃え、最小限のコンセプトで束ね、即興的な連係と個人技で勝負する。クラブチームのような時間はないので、その国伝統のスタイルをベースに、寄せ集めでも機能する戦術を採用する。

 ロシアワールドカップでも監督交代で準備期間が限られた中、ふわっとしたまとめ方で機能させていちおうの成功をみた。だが、もしあのメンバーで続けていたとして、そのまま右肩上がりに強くなったかどうかは疑問だ。

 韓国戦の日本は文句のつけようのないプレーだった。ただ、これもすでにピークなのではないかという気はする。

日本代表に悪かった選手は1人もいなかった

 遠藤航と守田英正のボランチは出色の出来だった。欧州遠征で別格のプレーを示した遠藤は、現在のチームに不可欠な存在になっている。

 代表デビューの山根視来は先制点だけでなく攻守に安定したプレーをみせ、大迫のキープ力も健在。伊東純也は右からの仕掛けとアグレッシブなプレーで存在感を示した。

 得点チャンスを逃したとはいえ、南野はやはり最もゴールが期待できる選手だった。かつて岡崎がポジションに関係なく得点し続けたように、南野もサイドでも点がとれそうなのは確認できた。トップ下には鎌田がいるので、ハードワークの質が高い南野はサイドに置いたほうがチームへの貢献は大きいだろう。

 DFを操ってGKから見えにくいコースのシュートを決めた鎌田大地は、トップ下の一番手になった。鎌田と交代した江坂任もJリーグ同様のチャンスメークが光っていた。

 吉田麻也、冨安健洋の鉄板コンビは相変わらずの安定。GK権田修一はパンチングやセーブの確実さで力を示した。浅野拓磨のスピードは驚異的だ。強力なオプションとしての可能性をみせつけた。古橋亨梧も鋭い動きで爪痕を残した。悪かった選手は1人もいなかった。

ワールドカップでベスト16の先に行くには…

 戦い方のベースはすでにある。ある程度、選手が入れ替わっても順応しやすいものでもあり、それでよく連係できるのは日本の強みだ。これでカタールまでは行くだろう。ナショナルチームらしい強化方針になっている。

 ベスト16を目指すチームとして、おそらくこれで問題はない。ただ、その先を目指すのであれば、現在のチームは“わかりやすすぎる”。

 ヨーロッパのいくつかのクラブチームは日本代表のようなプレーはしていない。それはクラブとナショナルチームの違いなのだが、例えばマンチェスター・シティやRBライプツィヒは寄せ集めでやれるようなサッカーをしていない。質的にデジタルとアナログのような違いがある。

 サッカーがアナログからデジタルへの移行期にあるとすると、切り替え作業にはどうしても時間が必要だ。その時間は代表チームには与えられていない。だから繰り返すが、現時点ではクラブと代表の違いで片づけてもいい。

 しかし、やがてはデジタルなクラブが増えるに従って、そうしたクラブから招集した代表もデジタル化する。そうなったとき、現状の日本のままでは太刀打ちできなくなる。

 韓国に優位性を示した「個」は、現状でも強豪国に威力を発揮するとは思えない。さらにチームとしての機能性に後れを取った場合、どうなるか想像するのは容易だろう。

 韓国戦では守田と山根の間に明確な意思の疎通が見えた。寄せ集めでも連係できる日本選手だが、その中でもより通じるものが2人にあったのは、昨季同じクラブにいたからだ。

 Jリーグにも川崎フロンターレなどデジタル化しつつあるクラブがあり、それをどう取り込むかに日本代表のデジタル化もかかってくる。おそらく切り替え作業は早いほうがいい。日本がアドバンテージをとれる時間はたぶんそう長くないからだ。

 文句なしの快勝の後なので、あえての粗さがしである。ただ、カタール代表の成功例もあるので、もしかしたらすでに出遅れている可能性もあり、現状の強化路線が順調であるほど切り替え時期が遅れる懸念もある。

(文:西部謙司)

【了】

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