【写真:田中伸弥】
日本代表は25日、国際親善試合で韓国代表に3-0の快勝を収めた。
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キャプテンの吉田麻也は試合前から日韓戦の重要性を説き、勝利を目指すにあたって並々ならぬ意気込みを抱いていた。圧勝で終わった試合後には「ここで結果を出さなきゃ男じゃないな、というプレッシャーがいつも以上にあったんですよ、正直」とまで語った。
いったい何が彼にこれほどまでの覚悟を抱かせたのだろうか。そこには2国間のライバル関係にとどまらない理由があった。
吉田は先週日曜日にサンプドリアでの試合を終えて、帰国の途についた。しかし、日韓戦に出場するためには月曜日のうちに日本へ入国しなければならない。日本代表戦を国内で開催するために導入された特殊な感染症対策プロトコルの影響で、「帰国翌日から3日間の検査で新型コロナウイルス陰性」が証明されなければ試合に出場する資格を得られなかったのである。
サンプドリア対トリノの試合が終了したのは、現地21日の16時頃。その時、日本はすでに22日の0時を回ろうとしているところ。「月曜日」が始まろうとしていた。
海外渡航が厳しく制限されている昨今、通常の航空便の運航は大幅に減っている。平時なら急いで出発すれば月曜日のうちに帰国することも可能だが、現状ではそうもいかない。何としてでも吉田を日韓戦でプレーさせるため、日本サッカー協会をはじめとした関係各所が必死に動いていた。
最終的に吉田は、大西洋に浮かぶポルトガルの離島から移動することになっていた守田英正とともにチャーター便で帰国することができた。入国したのはタイムリミットが迫っていた月曜日の夜中だった。
「協力してくださった(日本サッカー)協会の方々、そして夜遅くに着いたので、月曜までに(日本に)入らないといけなかったんですけど、23時半くらいギリギリに羽田空港に入りました。僕ら以外の飛行機、通常の便は飛んでいなかったので、空港の職員の皆さんが待機してくださっていて、何人もの方が僕のために働いてくださったので、そういうのも含めて結果を出さないといけないなと思いました」
これだけ手厚いサポートを受けて勝てなかったら…というプレッシャーは相当なものだっただろう。想像するのも極めて難しい。吉田は「ここで結果を出さなきゃ男じゃない」という、いつも以上のプレッシャーを乗り越えて勝利という結果を手にし、「試合が終わってこんなにホッとするのは久しぶりだな…というくらいホッとしています」と明かした。
「(宿泊している)ホテルの方々も非常に難しい状況で協力してくださっています。いろいな方々のヘルプがあって今回仕事ができていますし、もっと言うと、韓国代表もこの厳しい、難しい状況、賛否両論がある中で日本に来てプレーしてくれた。みんなの力があって、この試合を開催できたことが良かったですし、僕個人も力が出せたのは、なんとか面目を保ったかなと思います」
今回の日本代表戦は、対戦相手チームや海外組の選手をはじめとした全ての関係者を完全に隔離する“バブル”を形成しながら開催している。日韓戦の圧勝劇の裏側では人知れず選手の活躍を後押しする大きな力が働いていた。
通常よりもたくさんの人々が関わって試合や日々の練習が成り立っている今回の日本代表合宿は、サポートの力の大きさと徹底した準備の重要性をひしひしと感じるエピソードばかりだ。
(取材:元川悦子、文・構成:編集部)
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