疲労の影響か一気に3失点
立役者はアーリング・ハーランドと並ぶ“ノルウェーの希望”だった。現地21日に行われたプレミアリーグ第29節。敵地に乗り込んだアーセナルは、ウェストハムを相手に“自作自演”とでも呼ぶべき怒涛の試合を演出した。
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前半が始まってハマーズに主導権を握られたガナーズ。開始10分間のボール支配率はウェストハムが86%を記録した。敵の強度の高い守備ブロックを前に、アーセナルの選手たちはなかなかビルドアップできず、ボールを前に運ぶことができない。14日はトッテナム戦、18日はヨーロッパリーグ(EL)のオリンピアコス戦と、選手を入れ替えながらも過密日程をこなしてきたことで、チームとして疲労の蓄積は否めないようだ。
17分にジェシー・リンガードに強烈なシュートを叩き込まれると、そのわずか2分後に敵に与えたFKのチャンスでクイックリスタートを許し、立て続けに2失点。このようにチームとして集中を欠いたところに、タフな日程による疲れの影響が垣間見える。
その後もハマーズの強度の高い守備ブロックに苦しむアーセナル。32分には自陣でボールを奪われ、ミカイル・アントニオが叩きつけたボールを、後ろから入ってきたトマシュ・ソーチェクに押し込まれて3失点目。敵将デイビッド・モイーズ監督のペースで進んだ前半は、ようやく38分にオウンゴールで1点を返すのが精一杯だった。
追い上げをみせた後半
いくら疲労の蓄積があったとはいえ、このように不用意に失点を重ねてしまうところが、アーセナルがリーグ戦で9位に低迷する要因の一つなのかもしれない。トーマス・トゥヘル体制下のチェルシーのように、安定して機能する守備を構築出来れば、自ずと順位は上がっていくのではないか。何せ後半は、ここから2点を奪って3-3のドローに持ち込んでいるのだ。
後半に入ると、2点リードして引いたウェストハムに対して、アレクサンドル・ラカゼットが中盤に降りてボールに触るなどして、徐々に主導権を掴みだしたアーセナル。特に右のハーフスペースを効果的に使いだした。ボックスの右の角の手前にポジションを取るブカヨ・サカを、ハマーズの選手たちは捕まえることができない。
62分には、そのサカがマルティン・ウーデゴールに落として、ノルウェー代表MFは、右に展開。上がってきたカラム・チェンバースが鋭いクロスを入れて、クレイグ・ドーソンのオウンゴールを誘発した。
82分には、同様に右のハーフスペースでボールを受けたウーデゴールが、右のニコラ・ペペにパス。2点目と同じような展開で、ペペが入れたクロスを、ファーでラカゼットが押し込んで3点目。自分たちの不用意な失点から3点のリードを許しながら、主導権を取り返して追い付くという、あたかも“自作自演”の試合展開で、アーセナルは難敵ウェストハムとの一戦を3-3のドローに終えた。そしてその立役者は、ハーランドと並ぶ“ノルウェーの希望”だった。
ノルウェーの神童を指揮官も絶賛
この試合の後で、ミケル・アルテタ監督は、全得点に絡んだウーデゴールを讃えている。
「彼(ウーデゴール)は信じられないパフォーマンスを見せたと思う。彼はゲームの読み方、ゲームを効果的にするやり方において知性に溢れていた。そして、どれだけ勝ちたいかを再び示した」。
不用意な失点からウェストハムに3点をリードされるという不必要かつ不安定な試合展開も、1月にレアル・マドリードからレンタルで加入して武者修行中のウーデゴーにとっては、成長する上で、絶好の機会だったのかもしれない。ある種必死にならざるを得ない状況で、ハマーズ相手に自らの力を誇示して、3点差を追い付く必要があったからだ。そして実際に、攻撃の軸として劣勢を覆していった。
ウーデゴールは、3月のカタール・ワールドカップ欧州予選を戦うノルウェー代表に選出されている。アーセナルで修行中の22歳の若武者は、代表の新キャプテンに就任した。同代表には、ボルシア・ドルトムントで化け物じみた破壊力を見せつけているハーランドも選出されている。
1998年のフランス大会以来、20年以上もW杯出場から遠ざかっているノルウェー代表を、再び夢の舞台に導けるか。そのカギは、ハーランドと並ぶウーデゴールが握っていると言えそうだ。
(文:本田千尋)
【了】