ウーデゴールがたたき出した驚異的なスタッツ
マルティン・ウーデゴールはトッテナム戦の44分に貴重な同点ゴールを決めた。3日前のUEFAヨーロッパリーグ・オリンピアコス戦に続く2試合連続ゴールで、これがプレミアリーグ初得点となった。
【今シーズンのアーセナルはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】
ゴールシーンは見事だったが、試合を通じて光っていたのは、ウーデゴールのゲームメイク力である。味方とつながる能力は、レアル・ソシエダで入れ違いになったダビド・シルバのようだった。
この試合のパス成功率は96.6%で、トップ下の選手としては驚異的な数字である。成功数はジャカの66本に次ぐ56本を記録。サイドチェンジも効果的で、ロングボールは3本すべてを通している。使い古された表現ではあるが、まさに潤滑油のような働きで、パスワークのつなぎ目となっていた。
スミス=ロウが左サイドでボールを受けると、ティアニーがスプリントしてマット・ドハーティーを引き付けた。パスを受けたティアニーは、縦に突破してグラウンダーのボールを入れる。相手DFの前でフリーになっていたウーデゴールが左足を振り抜いた。
この試合でスミス=ロウは、チームトップとなる97.3%のパス成功率を記録している。2人がライン間でボールを収めることで、両サイドバックは積極的にオーバーラップできる。両サイドのオーバーラップは深さを生み、DFラインの前にはスペースが生まれる。サイドの関係性は相乗効果となり、アーセナルの武器となっていた。
トッテナムを封じたアーセナルの守備
「彼は本当にスタミナがあって、才能もある。そして、信じられない仕事量だ。それだけではなく、彼は頭がいい」
ミケル・アルテタ監督は試合後、ウーデゴールを称賛した。ウーデゴールはこの試合で初ゴールを決めたが、アルテタが称賛したのはそれだけではない。ディフェンス面での貢献度も際立って高かった。
トッテナム戦のアーセナルは、高い位置からのプレッシングが機能していた。16分にはウーデゴールのボール奪取からトーマス・パルティがつなぎ、スミス=ロウがミドルレンジから狙う。ボールは惜しくもクロスバーを叩いたが、アーセナルの狙いが奏功した象徴的な場面となった。
トッテナムのセンターバックがボールを持つと、ウーデゴールは背後の相手選手を把握しながらボールホルダーに寄せた。すると、中盤のタンギ・エンドンベレやピエール・エミール・ホイビュルクがなかなかボールをもらえなくなる。サイドバックにボールをつけると、そこにはアーセナルの両ウイングがマンツーマンで見ていた。
ハリー・ケインが降りてきて縦パスを収めるというパターンもあるが、そこはジャカとパルティが監視している。トップ下のマルティン・ウーデゴールが、アーセナルの守備戦術を成立させていた。
ウーデゴールの希少な能力
データサイト『Whoscored.com』によれば、アーセナルの中盤3人、グラニト・ジャカ、トーマス・パルティ、ウーデゴールの3人はそれぞれ3回のタックルを成功。ジャカは両チーム通じて最多となる4回のインターセプトを記録している。ティアニーも6度のタックルを成功させてガレス・ベイルを完封。トッテナムは完全に攻め手を欠いていた。
指揮官が称賛するインテリジェンスと献身性は、マンチェスター・ユナイテッドのブルーノ・フェルナンデスを彷彿とさせる。そして、ボールを持てば、ダビド・シルバのように味方とつながる能力を発揮する。ボールをつなげる選手はいるが、ウーデゴールのように味方とつながり、優位性を生み出していく選手は希少である。
アーセナルでウーデゴールが輝いたのではなく、ウーデゴールがアーセナルを輝かせたと言った方がいいかもしれない。
(文:加藤健一)
【了】