ミスから崩れなかったアーセナル
「感情的にさらにもっと落ち着かなければならないし、安全でなければいけない」
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アーセナル公式サイトによれば、2017年からアーセナルはプレミアリーグで最も多くのPKを与え、最も多くミスから失点しているという。PK献上は23回で、ミスからの失点は35。レッドカードも最多で、14枚となっている。自滅の多さについて、ミケル・アルテタ監督は精神面を原因に挙げた。
この試合でもミスは起きた。アーセナルは前半をリードして終えたが、58分に失点する。ベルント・レノからパスを受けたダニ・セバージョスがボールを奪われ、ユセフ・エル=アラビにゴールを決められた。
アーセナルは前節の悪夢がよぎった。6分にピエール=エメリク・オーバメヤンのゴールで先制したバーンリー戦は、グラニト・ジャカのミスを突かれて失点。試合はそのまま引き分けに終わっている。
オリンピアコスという相手が、いやな記憶を思い出させる。昨季のELラウンド32でアーセナルとオリンピアコスは対戦している。アーセナルは1-0でアウェイゲームを制したが、2ndレグは延長戦に。1-2で敗れ、アウェイゴール数によりアーセナルはラウンド32で大会から姿を消すこととなった。
しかし、アーセナルは落ち着いていた。2つの嫌な流れを払拭するように、アーセナルは敵地スタディオ・ヨルギオス・カライスカキスで終盤にゴールを重ねた。ウィリアンのクロスをガブリエウ・マガリャンイスが頭で合わせ、80分に再びリードを奪う。さらにその5分後にはモハメド・エルネニーが鮮やかなミドルシュートを決めて突き放した。
「1人がミスをしたら、チームとしてみんなが反応していた」。ウーデゴールは試合後にそう振り返った。2試合続けてミスから失点したが、そこから立て直す気概は示している。前節よりかは進歩が見られた。
失点の責任は誰に?
勝つには勝ったが、防げた失点である。
バーンリー戦とオリンピアコス戦の失点は、ともにレノからパスを受けた中盤の選手がボールを奪われた。相手が前線からハメようとアプローチする中で、レノは中央へのパスを選択している。どちらの場面もレノの周囲は数的同数で監視されていた。
レノからパスを受けたMFは2人の選手に間合いを詰められ、パスコースを消された。ジャカもセバージョスもダイレクトでサイドにはたこうとしたが、間合いを詰めたDFにボールを奪われている。
ビルドアップにおけるGKの配球(ディストリビューション)はいくつかの種類に分けられる。前線へのロングフィードは最もリスクが少ない。サイドに開いたセンターバックへ供給する場面はゴールキックの場面などでもよく見られる。
足元の技術に自信があるGKであれば、高い位置を取ったサイドバックへ浮き球のミドルパスを送ることもある。難易度は高いが、このゾーンはフリーになっている可能性が高い。そして、万が一奪われても、ゴールまで遠いので危険は小さい。
問題なのは、失点シーンのような中央へのショートパスである。キックの難易度は高くない。しかし、受け手がトラップミスをする可能性があり、相手に寄せられると前を向くことは難しい。リスクはあるが、リターンが小さい。
ミスはレノだけではない。21分のウーデゴールのバックパスが相手に渡り、40分のダビド・ルイスのパスが奪われ、いずれもシュートに持ち込まれた。データサイト『Whoscored.com』によれば、この試合のレノのパス成功率は100%だった。パスは味方に通した。でも、その判断自体が正しくない場面があった。数字に表れない部分で、アーセナルに落とし穴が待ち受けていた。
(文:加藤健一)
【了】