10人相手を上回れず
120分間の激闘の末、最後に笑ったのはポルトだった。イタリア王者としてチャンピオンズリーグ(CL)に挑んだユベントスはベスト16敗退。毎年のように同大会での優勝を目標に掲げているが、これで2季連続のベスト16止まりとなっている。
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ポルト戦で2得点を決めたフェデリコ・キエーザは「パフォーマンスを褒められるのは嬉しいが、今夜は何もポジティブなことはないよ。特に後半のパフォーマンスの後で、勝ち抜く力があったと思うから非常に失望している。でも言い訳はできないよ。勝ち抜くべきだったのに、それができなかったんだ」と試合後に話している。
そのキエーザの言葉通り、ユベントスは「勝ち抜くべきだった」。1点ビハインドの後半、ポルトが退場で一人を欠いたことにより、ホームチームは苦労することなく敵陣深くへ侵入することができていた。その中でコンディションの良さをアピールしていたキエーザが得点を奪い、一時は2戦合計スコアで同点にも追いついている。流れを完全に掴んでいた。
しかし、その良い流れを生かし切れなかった。GKアグスティン・マルチェシンのファインセーブもあったが、とにかくゴール前でのチャンスをふいにし過ぎている。90分間でシュート20本を放ち、そのうち半分を枠内に飛ばしたが、ゴールネットを揺らしたのは最終的に2回である。
そして、追加点を奪えぬまま延長戦に入り、117分に3点目を献上。これで苦しくなった。ユベントスはアドリアン・ラビオの得点で1点返すが、時すでに遅かった。10人相手に、恥ずべき試合をしてしまったと言わざるを得ない。
急ぎ過ぎた前半
もちろん、この日のユベントスの問題は決定力不足だけに留まらない。
「ポルトが良いスタートを切り、その後僕たちもプレーし始めた。後半は良かったけど、勝ちことはできなかった」。
この日はベンチスタートとなり、後半途中からピッチに立ったマタイス・デ・リフトの試合後のコメントだ。オランダ代表DFが言うように、ユベントスはスタートダッシュでポルトを上回ることができていなかった。
1stレグを落としていたユベントスは、何とかこの試合で取り返そうという気持ちを見せていた。しかし、それが強すぎたせいか、前半は点を取ることを「急ぎ過ぎていた」と感じている。
前に人数をかけるが、守備の陣形はバラバラ。ボールを失うと焦って取りに行くが、ポルト側が巧みなパスワークでそれをかわし、うまくカウンターに繋げていた。ユベントスはチームというより、個で守備をしてしまったのである。
17分のPK献上シーンも、各エリアでフリーの選手を作られ、左から右にボールを運ばれたことで最終ラインが揺さぶられた。そして最後は、メリフ・デミラルがペナルティーエリア内で我慢できず足を出してしまっている。このように、ユベントスは簡単にポルトに深い位置への侵入を許していた。
そして、肝心の攻撃陣はポルトの守備に苦戦している。
スタート4-4-2のポルトは守備時、右サイドハーフのヘスス・コロナを一列落とし、右サイドバックのウィルソン・マナファを中に絞らせて基本5-3-2の形になる。ただ、左サイドハーフのオタービオがマークに付くファン・クアドラードの位置によって最終ラインに落ちることもあったので、2トップの一角ムサ・マレガが中盤に落ちた6-3-1のような形もあった。つまり、オタービオの動きによって後ろが5枚か6枚に変化するということだ。
いずれにしても後ろに人数をかけるポルトを前に、ユベントスは攻撃のアイデアを失っている。クアドラードのピンポイントクロスは脅威だったが、そのパターンがほとんどとなっている。結局、ボールを支配できていたはずのユベントスは前半、シュート数でポルトを下回っている。このギアが上がり切らなかった45分間は、イタリア王者にとって非常にもったいなかった。
(文:小澤祐作)
【了】