両者にとって痛い勝ち点1
ワンダ・メトロポリターノで行われたマドリードダービーの結果で喜ぶことができるのは、アトレティコ・マドリードでもレアル・マドリードでもない。ロナウド・クーマン監督率いる2位バルセロナだと言えるだろう。マドリーに勝ち点差「2」をつけ、首位アトレティコとの勝ち点差を「3」に縮めることができたからだ。ラ・リーガ優勝争いの行方は、ますますわからなくなってきた。
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年明けのリーグ戦でわずか1敗と好調を維持していたマドリーだが、この日は相手がアトレティコということもあり、かなり苦戦を強いられている。守備時4-4-2、攻撃時に3-4-2-1に変化するホームチームに立ち上がりから勢いを持たれ、15分という早い時間にルイス・スアレスに得点を許してしまった。
その後もマドリーはポジティブな流れを掴み切れず、アトレティコに決定機を何度も作られている。52分、54分と立て続けにペナルティーエリア内へ侵入されており、GKティボー・クルトワのセーブがなければ2点目を失っていただろう。
ただ、「前半は彼らのもの、そして後半は僕たちのものだった」と試合後にカリム・ベンゼマが振り返った通り、後半途中からマドリーに流れが傾いている。
マドリーに追い風が吹いた大きな理由は二つある。
まず、ここ最近好調のヴィニシウス・ジュニオールとフェデリコ・バルベルデを投入して変化を加えたこと。そして、良いペースを握っていたアトレティコ側が早い時間の選手交代により、ウノゼロ狙いの守備重視にシフトチェンジしたことである。
ディエゴ・シメオネ監督の采配が全て間違っていたとは思わないので、こればかりは結果論になってしまうが、70分前という早い時間から守りに入った相手を前に、マドリーはそれまでにはなかった決定機を作り出し、守護神ヤン・オブラクを急襲した。そして、88分というギリギリの時間に待望の同点弾をゲット。振り出しに戻した。
試合はこのまま1-1で終わったが、内容で勝っていたのはアトレティコだろう。ただ、両者に共通していたのは、決定力不足を露呈したということ。アトレティコは早い時間で勝負を決めることができたはずで、マドリーももっと早いタイミングで同点弾を奪うことができていたはず。オブラクとクルトワというGKの壁が高かったことももちろん忘れてはならないが、いずれにしても両者にとって痛い勝ち点1となった。
アセンシオはもう限界?
ジネディーヌ・ジダン監督率いるマドリーの課題は明白だ。この試合でも浮き彫りとなった得点力不足である。リーグ戦ではこれで3試合連続の最少得点。チャンピオンズリーグ(CL)のアタランタ戦も含めれば4試合連続である。
その中で勝ち点を得られていることは救いで、守備陣の奮闘は賞賛に値する。しかし、攻撃陣はもう少し後ろの選手を助けてあげなければならない。今に始まったことではないが、前線の選手はあまりに頼りなさすぎる。
とくに、4-3-3というフォーメーションにおいてはウイングの働きが重要となるのだが、ここがめっぽう弱いというのが致命的だ。
アトレティコ戦では左にマルコ・アセンシオ、右にロドリゴ・ゴエスが起用されたが、いずれも怖い存在にはなれず。前者はキーパス2本を記録したが、タッチ数はスタメン11人中最低の31回で、シュート数は0本。ドリブル成功数も0回である。後者もシュート数は0本で、タッチ数34回でボールロスト10回。お世辞にも良いデータとは言えない。
ロドリゴは前節レアル・ソシエダ戦のパフォーマンスがそこまで悪くなく、負傷明けということもあるので、まだ許せる部分があるかもしれない。しかし、アセンシオに関してはここまでくるとさすがに擁護できない。大怪我から復帰後、ジダン監督からコンスタントに起用されているが、武器であったミドルシュートは影を潜めており、ゴールへの意欲やプレーのメッセージ性を感じられない。アトレティコのヤニック・フェレイラ・カラスコが良かったので、なおさら悪さが目立ってしまった。アトレティコ戦で本職ではないWGに入ったバルベルデの方が、まだ可能性があったようにも感じる。
アトレティコ戦のアセンシオは左サイドに置かれ、主にタッチライン際に張ってプレーしていた。そして空いた内側のスペースを左サイドバックのフェルラン・メンディが使うという場面が目立っている。CLアタランタ戦でもこのような形はあったので、チームとしてある程度狙っているのだろう。
ただ、これによりアセンシオの怖さはさらに減少。左利きのため中に切り込むことも少なく、クロスマシーンと化してしまった。もちろん、マドリーの攻撃はそれでは活性化しない。言い方は悪いが、いる意味はほぼなかったようにも思う。
ジダン監督にはアセンシオを一度スタメンから外すという判断が求められるだろう。恐らく、このまま使い続けてもズルズルと行ってしまう。それでも使うならば、CLアタランタ戦のイスコのように工夫が必要となるだろう。
(文:小澤祐作)
【了】