これがヘタフェの真骨頂
結局、ヘタフェはヘタフェである。それは、今後しばらく変わらないのだろう。
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リーグ4連敗で迎えた第25節バレンシア戦。ヘタフェはお馴染みの4-4-2で挑んでいる。スタイルは、ホセ・ボルダラス監督の下で成熟させてきた堅守速攻だ。
バレンシアのシステムもヘタフェと同じオーソドックスな4-4-2だった。いわゆる、ミラーゲームである。そのため、立ち上がりから球際でバチバチとやり合う、かなり激しい展開となっていた。
その中で、攻守の切り替えなどにおいてやや上回っていたのはヘタフェだった。すると39分、マウロ・アランバリが「今季ベスト」と言えるようなスーパーミドルを突き刺し、先制に成功する。ヘタフェにとってリーグ戦での得点は、1ヶ月前に行われた第20節アスレティック・ビルバオ戦以来となった。
前節のベティス戦はハイプレスが噛み合わなかったが、今節はバレンシアが「お付き合い」してくれたこともあり、ヘタフェの強度が際立つようになっていた。1-0のまま迎えた51分にムクタール・ディアカビが一発退場を喰らって試合は完全に壊れるのだが、そのディアカビのファウルを誘発したのは、ヘタフェ側のハイプレスがうまく機能したからだった。
数的優位を得たヘタフェはその後も危なげなく時間を進め、55分にハイメ・マタ、87分に途中出場のカルレス・アレニャが得点を奪いバレンシアを突き放している。試合はそのまま3-0で終了し、ヘタフェは連敗を「4」で止めることになった。
データサイト『Who Scored』によるヘタフェのパス成功率はわずか59%。スタメン出場の選手で最も数字が良かったのはネマニャ・マクシモビッチの82%で、その他の選手は全員70%を下回っている。支配率も42%しかなかった。このデータを見ても分かる通り、パスを繋いで崩し切る、という部分はヘタフェにまったく期待できない。
それでも結果を残せるのがヘタフェである。1点目と3点目、そしてディアカビの退場は高い位置からのプレッシャーが効いたことで生まれており、2点目のきっかけとなったのは、GKダビド・ソリアからのわずか1本のロングボールである。ボルダラス監督率いるチームにとっては、これで十分なのだ。
久保の立場は厳しくなるばかり
さて、日本代表MFの久保建英だが、バレンシア戦でもベンチスタート。先発落ちはこれで4試合連続となった。
出番が訪れたのはアレニャらと同じ85分だった。わずか5分間の出場なので見せ場はやはり多くなかったが、90分にはアレニャのシュートのこぼれ球に反応し、角度のない所から右足でシュート。惜しくもポストを叩いている。
と、出番こそ貰っている久保だが、やはり立場は厳しいと言わざるを得ない。加入後しばらくは先発出場が続いていたが、今月9日のレアル・マドリード戦で移籍後初めてスタメン落ちして以降、35分→32分→23分→5分とプレータイムがどんどん減少している。明らかにチームの信頼を掴むことができていない。
確かに、ここまで久保を長い時間起用するメリットはハッキリしていない。同選手の影響で失点数が減るわけでは当然ないし、得点数が増加しているわけでもない。むしろ、久保が先発から外れた直近4試合で失点数は「3」と減っており、バレンシア戦では背番号5の力がなくとも3得点を奪っている。
バレンシアに快勝したり、ここ最近失点数が減ったりしている要因は、原点に戻ったからと言えるだろう。オーソドックスな4-4-2でハードワークを徹底し、奪ったら難しいことをせずシンプルに縦へ放り込む。見ている側からすると決して面白いスタイルとは言えない。ただ、先述した通り、これである程度の結果を残せるのがヘタフェと言うチーム。そこに関しては誰も文句は言えない。
チームとしてハードワークを徹底する中、技術はあるがフィジカル的に不十分な久保はやはり起用される機会が減る。それならば、プレーの選択肢が少なく多少の荒さがある点は否めないが、パワーのあるアラン・ニョムを右サイドで使った方が、まだ戦える。ボルダラス監督はそうしてチームを作り上げてきた。
技術重視ではないヘタフェにおいて、久保と同じく今冬新加入のアレニャもプレー時間が少なく苦戦している。ただ、久保とアレニャで大きく異なるのは数字だ。前者はここまで0得点0アシストだが、後者は限られた時間の中でも1得点2アシストを記録している。チームからはもちろん、個人の勝負でもどんどん突き放されている、というのが厳しい現実だ。
“本来の姿”でバレンシアに快勝したことで、今後もヘタフェは堅守速攻型を貫くはずだ。そうなると、久保の出場時間はさらに限られてくるだろう。この状況を打破するにはまず「結果」だが、果たして。
(文:小澤祐作)
【了】