素直に喜べないELベスト16入り
後半アディショナルタイム、自陣深くでディオゴ・ダロがキックフェイントを仕掛けるも足を滑らせボールがゴールラインを割る。レッドスター・ベオグラードにコーナーキックが与えられた。しかし、ヘスス・ギル・マンザーノ主審はそのセットプレーを行わせず、3分の追加タイムをきっちり守り、試合終了の笛を吹いた。
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これにレッドスターの選手たちは猛抗議。マンザーノ主審になぜCKを無視したのかと詰め寄る。デヤン・スタンコビッチ監督も「おいおい、嘘だろ」といった感じで笑みを浮かべながら不満を露わにしていた。
セルビアの強豪チームがこれほど怒るのも無理はない。これがただのCK一本であれば話は別だが、ATの時点でレッドスターには逆転でベスト16入りを果たせる可能性が大いに残っていた。そのチャンスが、わずか一回の笛ですべて吹き飛んだのだ。主審の判断が完全に間違っていたとも思わないが、少し不運だった。
救われたのはホームのミランだ。仮に最後のCKで失点していたら、同クラブはラウンド32での敗退が決まっていた。本当にギリギリだった。
2戦合計スコア3-3、アウェイゴールの差でミランはヨーロッパリーグ(EL)ベスト16入りを決めることができたが、レッドスターとの2戦で残ったのはモヤモヤ感だけだ。1stレグは2度のリードを奪いながら、それも相手が途中から10人になったにも関わらず、2-2と逃げ切ることができず。相手に希望を残した。
そしてこの2ndレグでも、ミランはギアが上がりきらず。開始6分でPKを奪い先制に成功するも、24分に失点。後半に入りまたもレッドスター側に退場者が出たが、数的優位な状況を生かすことができず10人相手に押し込まれ、ATまで何が起きるかわからないといった展開を強いられている。
試合後、『Milan TV』のインタビューに応じたスアリオ・メイテは「ラウンドは通過したけど、いい試合ができなかったのは理解している。もっと多くのことをやらなければいけないと思っている」と話している。ELベスト16入りを素直に喜べないという思いは、フロント、監督、スタッフ、選手、そしてサポーターのすべての人に共通してあるのではないだろうか。
不調のミラン。指揮官が明かす原因
ズラタン・イブラヒモビッチ加入後、長い低迷が続いていたミランには光が差し込んでいた。それまで格下相手に勝ち点を取りこぼすことが普通になっていたが、インテルやユベントスらにも簡単に負けなくなり、勝ち点を継続して取れるようになっている。今季は冬の王者に輝くなど、まさに絶好調だった。
しかし、ご存じの通り現在は急ブレーキを踏んでしまっている。第22節で格下スペツィアに0-2と完敗したダメージが大きかったのか、今回のレッドスター戦の結果含め公式戦4試合勝ちなし。セリエAでは第23節インテル戦も0-3と落としているため、現在連敗中である。首位の座もライバルに明け渡した。
ステファノ・ピオーリ監督はレッドスター戦後に、「チームは若いかもしれないが、成熟したメンタリティーを持っている。ただ、今が我々にとって最高の時期でないことは確かだ。多くの勝利は我々にエネルギーと自信を与えてくれたが、今はその要素が少し欠けているね」と話している。
また、同指揮官はピッチ内で起きている問題についてこうコメントしている。
「以前はもっとゲームをコントロールし、後方からのパスを起点とした攻撃で素早くチャンスを作ることができていた。ただ、今は動きが鈍くなってきたことでより体を張られるようになってきている。それは、相手が我々のことをよく知っているということもあるし、我々の動きが速くないということもあると思う。もっと試合を支配し、協力して動き、もっと積極的にマーカーを振り払わなければならない」。
過密日程の中、ミランの選手には疲れが溜まっている。ピオーリ監督のいう「動きが鈍い」というのは、こうした影響もあるだろう。
それが、ビルドアップの質低下につながり、相手に捕まりやすくなっている。確かに、完敗を喫したスペツィア戦、リール戦、そしてアタランタ戦などは、相手のハイプレスに簡単に飲み込まれていた。とくにスペツィアに関しては、よくミランを研究して挑んできたと感じている。そのように、対策された場合の解決方法を見出せていないのが、現在のミランにおける最大の課題となっている。
ミランは、ここまで4-2-3-1というシステムを崩さずにシーズンを駆け抜けてきた。戦い方も一貫しているので、相手に対策されやすいというのは間違いないだろう。タイトなスケジュールの中で新しいことを準備する時間があまりないということは十分理解しているが、“プランB”の作成はやはり必要である。
(文:小澤祐作)
【了】