ソシエダのPK失敗と幻の初ゴール
2ndレグは1stレグの余韻を感じるような90分だった。どちらもチャンスはあったが、1対1の攻防ではマンチェスター・ユナイテッドが勝っていた。1stレグの点差を守り抜いたユナイテッドが順当に次のステージへと駒を進めている。
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両チームともに次戦を見据えた選手起用となった。ソシエダはナチョ・モンレアルはベンチに置き、ダビド・シルバとイジャラメンディはベンチからも外した。ミケル・オヤルサバルとアレクサンデル・イサクはハーフタイムでベンチに退いている。
前半をスコアレスで終えると、オーレ・グンナー・スールシャール監督も静かに試合をクローズさせていった。ブルーノ・フェルナンデスとマーカス・ラッシュフォードは45分ずつプレータイムをシェアし、フレッジとアーロン・ワン=ビサカも45分でお役御免。ハリー・マグワイアには実に4か月ぶりとなる休養が与えられた。
ソシエダからしてみれば、前半のPKを決めていれば流れは変わっていたかもしれない。12分にアンドニ・ゴロサベルがペナルティエリア内で倒されてPKを獲得。しかし、オヤルサバルのキックは左にそれてしまった。
ソシエダの生え抜きでキャプテンを務めるオヤルサバルは、これまで17本のPKを蹴ってすべて成功させている。18本目の失敗を責められる人はいなかった。意気消沈のソシエダは90分で枠内シュートが1本に留まった。
ユナイテッドはCKからアクセル・トゥアンゼベが頭で合わせてゴールネットを揺らした。しかし、ニアでヴィクトル・リンデレフがファウルを犯していたためゴールは認められず。トゥアンゼベのキャリア初ゴールは幻に終わった。
マンUが誇る2人の若き才能
時間が進むにつれて、興味は試合全体から選手個人へと移った。負傷したダニエル・ジェームズに代えてアマド・ディアロを59分に入れる。さらに76分にはメイソン・グリーンウッドを下げてショラ・ショレティレを送り込んだ。
2002年生まれのディアロは冬にアタランタから加入した。アタランタでは17歳108日で迎えたセリエAデビュー戦でいきなりゴールを決め、昨年12月にはUEFAチャンピオンズリーグでもプレーした。プレミアリーグでの出場はまだないが、ソシエダとの1stレグで移籍後初出場。セカンドチームでは格の違いを見せている。
173cmと上背はないが、細かいボールタッチや推進力のあるドリブルが魅力だ。ボールを奪われることも何度かあったが、するすると抜いていくドリブルは可能性を感じさせる。左利きの右ウインガーというのもチームにとっては貴重な存在だ。
ショレティレはディアロよりもさらに2歳も若い。今月2日に17歳になり、8日にプロ契約を結んだばかり。21日のニューカッスル戦でトップチーム初出場を果たし、この試合ではクラブ史上最年少記録で欧州デビューを飾った。
ニューカッスルのアカデミーでプレーしていたが、10歳のときにマンチェスターに移住してユナイテッドのアカデミーに加わった。14歳でUEFAユースリーグ(U-19)に出場し、16歳でU-23(セカンドチーム)に活躍の場を移している。
ニューカッスルのアカデミー時代のコーチは、ショレティレの速さと強さが若き日のマイカ・リチャーズを彷彿とさせるという。常に上の年代でプレーしてきたショレティレは、体格で優る相手に対応するテクニックやポジショニングを磨いた。攻撃的なポジションをすべてカバーできるユーティリティ性は、その副産物なのかもしれない。
若手を起用するマンUの流儀
「若者たちは時間を必要としていた」とスールシャール監督が言うように、公式戦のピッチに立つことに大きな意味があった。実際に彼らはピッチで何かを成し遂げたわけではないが、この経験はユナイテッドの未来に向けた投資である。
ユナイテッドが強いときは、若い選手が活躍していた。ライアン・ギグスやデイビッド・ベッカムといったアカデミー出身だけでなく、ウェイン・ルーニーのような選手も当てはまる。クリスティアーノ・ロナウドのようにメガクラブに行く選手もいるが、キャリアのピークをユナイテッドで過ごした選手は多い。
現役選手でロールモデルになるのはラッシュフォードだろう。スコット・マクトミネイがそれに続き、今季は壁にぶつかっているグリーンウッドもそうなるはずだ。ショレティレは「アカデミーのみんなにとって、マーカス(ラッシュフォード)とメイソン(グリーンウッド)は憧れの存在」と語っている。
ショレティレのプレミアリーグデビューを受けて、スールシャール監督は「これは我々のDNAに刻まれているもので、マンチェスター・ユナイテッド流のやり方だ」と述べた。選手として過去の栄光を経験したスールシャール監督は、若手の重要性を強く感じており、彼らの起用法に長けている。
もちろん、彼らの成功が保証されているわけではなく、デビューが早くても伸び悩む選手はこれまでも数多くいた。それでも、結果を残して実力を示せば、年齢に関係なく出場機会は訪れる。選手と監督の共通認識が、若手が次々と活躍する土壌になっている。
(文:加藤健一)
【了】