「これまでのJリーグだと奪ったあとに誰もプレッシングに来なかった」
――川崎フロンターレは昨年、圧倒的な成績でJリーグと天皇杯の2冠を制しました。まず、フロンターレの何が良かったのでしょうか。
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「新型コロナウイルスの影響で他のクラブが思うようにチーム作りを進めてこられなかったなかで、フロンターレが積み上げてきたものが顕著に出たシーズンだったと思います。クラブのコンセプト、戦術が浸透していて、スタメンの11人だけではなくリザーブを含めて高いレベルで共通理解がありました。完成度の高さが成し得た業でしょうね。ブンデスリーガでもメンバーを固定せず、フレキシブルに戦ったクラブが成績を残しています。一方で2019年のJリーグ王者・横浜F・マリノスは積み上げがなかったという印象がありました」
――昨年のフロンターレは「即時奪回」というテーマを掲げていました。その完成度に関してはいかがだったでしょうか。
「意図は取れました。ただ、ドイツ的ゲーゲンプレッシングかと言えばそうではなく、数人、あるいは一人でボールを奪回できている場面が多く見受けられました。これまでのJリーグだと奪ったあとに誰もプレッシングに来なかったので、相手があわあわしていた印象です。特に大柄なレアンドロ・ダミアン選手が追いかけるとすぐに奪えてしまう。本当にJリーグは外国人に弱いな、と(笑)。やはりJリーグは『即時奪回』がしやすい。
また、フロンターレは敵陣では[4-3-3]、自陣では[4-4-2]で守備をする場合がありますが、[4-3-3]で守っているほうがよかった。ボールを外に出させないように中に誘い込み、無理矢理外に蹴り出されてもSBがしっかりついていきます。そういった点でも『即時奪回』の共通理解があったと思います」
「フロンターレは『ポゼッション』と言われていますが…」
――ズバリ、昨年のフロンターレから感じ取れる、今号のテーマであるコンセプトとはなんでしょう。
「常に相手陣内でゲームをやりたいということでしょう。CBのジェジエウ選手が相手に起点を作らせないようにしていたのもそのためです。フロンターレは『ポゼッション』と言われていますが、縦に速い時もあってロングボールも使っています。日本では数少ない、ドイツ語で言うDer zielorientierte Ballbesitz(ゴールから逆算したポゼッション)ができるチームでした。だからこそあれだけの得点を重ねることができた。コンセプトは持っていると思います」
(構成:石沢鉄平)
▽河岸貴(かわぎし・たかし) 1976年7月25日生まれ、石川県出身。金沢大学卒業、同大学大学院修了。ドイツ・シュトゥットガルト在住。高校の講師を経て2004年にプロサッカー選手を目指し単身ドイツへ渡り、2006年にブンデスリーガの名門シュトゥットガルトの育成指導者に。2011年1月に岡崎慎司のシュトゥットガルト移籍と同時にトップチームに昇格。2013年8月まで監督とコーチをサポートし、ドイツカップ準優勝、2回のヨーロッパリーグ出場を経験。その後、スカウトと日本のコーディネーターを歴任し、2015年6月に退団後、サッカーコンサルティング会社「KIOT CONNECTIONS」を設立。2019年12月に石川県宝達志水町で海外を目指す若手Jリーガーのキャンプ、2021年1月に同県同町でドイツサッカーに基づく指導者講習会を実施するなど、サッカー指導者として日本でも活動している。
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