守り抜いたカディス
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)から中4日で迎えたカディス戦、バルセロナはパリ・サンジェルマン戦と同じ11人を起用した。同じメンバーで勝利を掴み、4失点した悪い記憶を払拭したいという目論見だっただろう。
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しかし、ロナルド・クーマン監督の思惑通りに事は運ばなかった。自陣のゴール前に選手を並べたカディスの守備を崩すことができず、奪ったゴールはリオネル・メッシのPKによる1点のみ。89分にはPKを与えてしまい、試合を振り出しに戻された。残留争いを演じるカディスに対して痛恨のドローゲームに持ち込まれてしまった。
まず言及すべきはカディスのパフォーマンスだろう。基本は4-5-1の布陣だが、両サイドハーフが両サイドバックの脇を埋めることで、4バックはペナルティエリア幅を守ることに専念した。1トップのアルバロ・ネグレドも含め11人全員がディフェンシブサードに戻る時間も多く、防戦一方の展開だった。
カディスのボール保持率は18.8%で、パス本数はバルセロナの1/4にも満たない198本だった。それでも辛抱強く守り切り、少ないチャンスから得点を狙った。
直近のラ・リーガで4連敗を喫したカディスは、4試合で15失点と守備陣が崩壊していた。「最近は60分の時点で負けていた。我々が生きるためにはこれしかなかった」とアルバロ・セルベラ監督は試合を振り返る。キャプテンのホセ・マリは「私のキャリアで最も難しかった1か月に打ち勝って戻ってこれた」と語った。
カディスにとっては苦しんだ中で掴んだ勝ち点1で、それに値する粘り強い戦いを見せた。『ムンド・デポルティボ』は「すべてを出し切った」というルベン・ソブリノのコメントを伝えている。カディスは守備的だったが、ある意味で勇敢で、団結力を感じた。
機能しないバルセロナのトランジション
問題はバルセロナである。81%もボールを握り、20本のシュートを放ちながら、奪ったゴールはPKによる1点のみ。PSG戦から2試合連続で、流れの中からゴールを決めることができなかった。
前提として、この日のカディスのパフォーマンスの前に得点を重ねるのはどのチームでも難しかっただろう。ピッチの11人はボールを動かしながらカディスの穴を見つけようとしたが、その穴は小さかった。
穴が小さければこじ開けなければいけない。カディスのブロックの間に縦パスを入れると、複数の選手がボールに寄せた。ここでカディスがボールを奪った瞬間にバルセロナのカウンタープレスが機能すれば、もっと決定機は作れたかもしれない。バルセロナにはカディスの守備をこじ開けるために必要なトランジションの質が欠けていた。
実際に、ペドリがPKを獲得したシーンもそうだった。セルヒオ・ブスケッツが奪われたところでジョルディ・アルバとともにプレッシングを開始し、相手のバックパスが短くなったのを見逃さなかった。一足先にボールに触れると、相手選手の足が伸びてきてペドリは倒された。
相手がカウンターに転じようとしたところでカウンタープレスをかけてボールを奪えば、前掛かりになった相手の裏にはスペースが生まれる。しかし、そういった場面は少なかったので、カディスはカウンターを開始するか、少なくともクリアするだけの時間があった。カディスの思う壺で、バルセロナのプレッシングは緩み切っていた。
自責の念に駆られるジョルディ・アルバ
バルセロナは両サイドバックとウスマン・デンベレが幅を取り、フレンキー・デ・ヨングやアントワーヌ・グリーズマンがポケットを攻めた。チームとしての戦い方はある程度明確だったと思う。
しかし、トランジションの精度は現代サッカーの生命線で、これがうまくいかないとすべてが機能不全に陥る。狙い自体が悪くなくても、ボールを奪い返せないので攻撃が単発になる。カディスのゾーンディフェンスは最後まで崩れなかった。
戦略的にもっとこうすればという点はあったと思うが、トランジションが機能していなければどんなプランも水泡に帰してしまう。その意味でバルセロナは戦術以前の問題だった。
アラベス戦のようにメッシにスーパーゴールが生まれれば展開は変わっていたが、それは個人技頼みで再現性がなさすぎる。違いを生んでいたのはペドリだけで、それ以外は厳しいパフォーマンスだった。
「自分たちのせいだ。今日(の試合)は恥ずかしかった」とジョルディ・アルバは試合を振り返る。昇格組のカディスにはアウェイでも敗れており、1度も勝つことができなかった。屈辱的な試合を終えたバルセロナはミッドウィークのエルチェ戦を挟んで、セビージャとの上位対決を迎える。クーマン監督は守備が緩んだチームをどのように立て直すのだろうか。
(文:加藤健一)
【了】