連敗を7で止めたサウサンプトン
サウサンプトンは連敗を6で止め、7試合ぶりの勝ち点を手にした。南野拓実にとって加入後初の勝ち点は、自らのゴールで引き寄せたものだった。
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ハムストリングを痛めたカイル・ウォーカー=ピータースが欠場。ヤン・ベドナレクを右サイドバックで起用した。4-4-2で守るが、攻撃時は左肩上がりになり、3-4-2-1の形に変わった。南野は左サイドで先発している。
立ち上がりからチェルシーがボールを握り、サウサンプトンはほとんどの時間を自陣で過ごした。しかし、チェルシーは攻めあぐねてフィニッシュになかなか持ち込めない。すると、33分のファーストチャンスを南野がモノにした。
2トップの間にポジションを取り、相手のライン間のスペースで縦パスを受ける。ワンタッチで前を向いてDFラインを突破すると、滑り込むセサル・アスピリクエタと身体を倒すGKエドゥアール・メンディの位置を冷静に見極めてゴールに流し込んだ。
サウサンプトンが先制した後も、チェルシーがボールを保持する時間が続いた。メイソン・マウントがダニー・イングスに倒されてPKを獲得し、54分に自ら決めて同点に追いついている。
チェルシーのボール保持率は70.9%で、パス本数はサウサンプトンの295本に対し、チェルシーは727本。しかし、サウサンプトンの守備は最後まで集中を切らさなかった。プレミアリーグ4連勝中のチェルシーから、価値ある1ポイントを持ち帰ることに成功した。
カンテに吹っ飛ばされた南野拓実
ゴールを奪うまでの32分間、正直なところ南野にゴールの匂いはしなかった。南野だけの問題ではなく、チームとしてほとんど攻撃の形が作れていなかった。そう表現した方がいいかもしれない。
南野はチェルシーのプレッシングに苦しんでいた。3バックの右のアスピリクエタが対面し、ウイングバックのリース・ジェームズも激しく寄せてくる。立ち上がりは南野がボールを受けたところで潰されるシーンが何度もあった。
象徴的なシーンがゴールを決める前にあった。ボールを奪われるシーンが続いていた南野は少ないタッチ数でボールを捌いていく。そして、チャンスと見て素早いターンで前を向いた瞬間、エンゴロ・カンテの足が伸びてきて吹っ飛ばされてしまった。
しかし、ゴールはその約30秒後に生まれた。ボールを奪われても、相手の隙を見てチャンスを狙い続ける。何度でも、何度でも立ち上がり呼ぶ姿勢を貫いたことで、チェルシーのDFラインに一瞬の隙ができた。
南野にはアタッカーに必要な諦めの悪さがある。ハーゼンヒュットル監督は『BBC』の試合後インタビューで「南野はボールを持つとサプライズなプレーをする選手だ。フィジカル面でとても優れているわけではないが、意志の強さがある」と称えた。
南野拓実とサウサンプトンの相性
サウサンプトンへの期限付き移籍が決まった直後、リバプールのユルゲン・クロップ監督は南野が出場機会を得られなかった理由を挙げている。
「様々な理由がある。サイズが理由だったこともある。守備陣に問題があり、(チーム全体の)高さが十分ではなかった。そこで南野が投入されると、『どうすればいいんだ?』となる。セットプレーの守備は非常に重要で、サイズが違いを生むことがある」
リバプールはセンターバックに負傷者が相次ぎ、ファビーニョやジョーダン・ヘンダーソンをセンターバックで起用せざるを得ない状況が続いた。ファビーニョは空中戦にも強いが、代わりに中盤で起用されるチアゴ・アルカンタラと離脱したフィルジル・ファン・ダイクの差を考えると、高さのマイナスは明らかである。
そこに南野が起用されるとなると、セットプレーでの守備は不安を増す。ファン・ダイクやジョエル・マティプがいれば南野の高さは問題にならなかったが、そうもいかないチーム状況になっていた。
サウサンプトンにはヤニック・ヴェスターゴーアという2m近い男がいて、この試合は右サイドバックに本職がセンターバックのベドナレクが入っている。サウサンプトンでは、南野のウィークポイントがリスクにさらされることも少ない。
ハーゼンヒュットル監督には「フィジカル面でとても優れているわけではない」と評されたが、自身の特徴を活かせる環境がサウサンプトンには揃っている。フィジカルの問題は一朝一夕では片づけられないが、諦めが悪い南野は成長していくのではないだろうか。
(文:加藤健一)
【了】