あまりにも酷いヘタフェの攻撃
ヘタフェにとって待望のシーンは71分に訪れた。マルク・ククレジャのFKを、ペナルティエリア内でソフィアン・チャクラが頭で合わせる。しかし、ボールはGKジョエル・ロブレスの手中に収まった。
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何が待望だったかと言えば、これがヘタフェの放った4試合ぶりの枠内シュートだった。4試合前のディポルティーボ・アラベス戦で、39分にハイメ・マタが枠内シュートを放って以来だった。
ただ、これは久保建英が蹴ったCKからで、セットプレーからの枠内シュートという点で見れば、レアル・ベティス戦はゼロ。最後の得点となったアスレティック・ビルバオ戦の開始20秒のゴールが、オープンな局面から放った最後の枠内シュートとなる。
そんな皮肉を言ってしまいたくなるくらい、ヘタフェは攻撃が機能していない。昨季のマジョルカに比べるまでもないくらい酷い状況だ。
ビルバオ、セビージャ、レアル・マドリード、レアル・ソシエダといった上位のクラブとの対戦が続いた。そういった相手に劣勢になるのは仕方がないが、ゴールの匂いすらしないのは問題だ。ベティスも上位につけているが、この試合のパフォーマンスを考えれば、もっとチャンスを作れてもおかしくはない。ゴールが遠いのはヘタフェ自らが招いたものと言わざるを得ない。
機能しないヘタフェのハイプレス
ヘタフェのアイデンティティだったハイラインとハイプレスは機能していない。DFラインが低いので、ボールを奪っても相手のゴールまで遠い。
ヘタフェのセンターバックがボールを繋げない。ベティス戦のパス成功率はチャクラが67%、カバコは47%だった。ロングボールを蹴るから仕方ないというわけでもなく、カバコのパスは30本中13本がショートパスである。6分のバックパスは相手に奪われ、決定的なピンチを招いていた。
カバコだけではない。チャクラも29分のパスミスからピンチを招いており、右サイドバックを務めたジェネもパスミスからカウンターを受けた。最終ラインがこの体たらくでは、攻撃できるものもできなくなる。3ラインはコンパクトさを失い、DFラインは下がらざるを得ない。まさに悪循環である。
67分にカルレス・アレニャが入り、ボールの循環は改善された。先述した枠内シュートはその流れから生まれている。マウロ・アランバッリの惜しいシュートもあったが、良い流れを活かすことができなかった。
久保は81分に入ったが、結果を残すにはあまりにもプレー機会が少なかった。ボールタッチ数は3回に留まり、ヘタフェはこの試合も無得点で試合を終えている。
91分にカウンターの流れでボールを受けたが、久保のドリブル突破は失敗に終わった。アランバッリやアレニャへのパスという選択肢もあったが、4人に囲まれたことでパスコースを失ってしまった。
久保建英は被害者だが…
久保の起用がウィークポイントとなるのは守備強度とされている。今のヘタフェのサッカーはDFラインが低いので、サイドハーフには最終ラインに加わって守る能力と、攻撃時に長い距離を走る走力に対する優先順位が高い。
レアル・マドリード戦の試合後に、ホセ・ボルダラス監督は久保について「フィジカルのレベルを改善して成長しなければならない」と言及した。フィジカルに優れるアラン・ニョムの起用が続いているのはそれが理由だろう。
ただ、ヘタフェがハイプレスとハイラインを取り戻せば、久保も十分に対応できるはずだ。パスコースを消しながらDFラインに寄せるポジショニングはうまく、ボールを持った際のアイデアはショートカウンターで威力を発揮する。
ただ、指揮官の指摘通り、うまい選手というだけでやっていくのが厳しいのも事実である。ククレジャが起用され続けるのは欠点が少ないからだろう。キープ力があり、ボールを展開でき、走れて身体を張れる。秀でたものがあっても、ウィークポイントがあれば戦術変更のあおりを受ける。
久保にとって想定外だったのは、加入後にヘタフェの戦いが変わってしまったことだろう。もちろん、指揮官の言う通りフィジカルの改善は必要だろう。しかし、戦術的な視点で見るとアレニャや久保は被害者で、チームの不調と2人の出場時間の減少は同じ理由で語ることができる。
チームは4連敗を喫し、ホセ・ボルダラス監督への風当たりは強さを増す。ヘタフェが本来の良さを取り戻すことができなければ、今の久保が輝くのは難しいだろう。
(文:加藤健一)
【了】