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チェルシーで驚異のドリブル数を残した男とは? 取り戻した強さ、ニューカッスル戦完勝の理由【分析コラム】

プレミアリーグ第24節、チェルシー対ニューカッスルが現地時間15日に行われ、2-0でホームチームが勝利している。チェルシーはこれでリーグ戦4連勝。絶不調リバプールを抜いて4位に浮上している。では、なぜニューカッスルに完勝することができたのだろうか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

好調チェルシーがCL圏浮上

チェルシー
【写真:Getty Images】

 トーマス・トゥヘルを新監督に迎えたチェルシーが好調だ。ドイツ人指揮官の初陣となったウォルバーハンプトン戦は0-0に終わったが、その後バーンリー、トッテナム、シェフィールド・ユナイテッドに連続勝利。同4試合で失点わずか「1」に抑えているなど、安定感ある戦いぶりを披露している。

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 そのチェルシーは、現地15日に行われたプレミアリーグ第24節ニューカッスル戦でも2-0と完封勝利。これでリーグ戦では4連勝となり、絶不調リバプールを抜いてチャンピオンズリーグ(CL)出場圏内の4位に浮上している。

 ニューカッスル戦はほぼ完璧な内容だったと言っていい。とくに前半はボールを握り続けてアウェイチームをまったく寄せ付けておらず、早い時間からチャンスも作っている。スティーブ・ブルース監督率いるチームはファーストシュートを放つのに20分もの時間を費やしていた。

 チェルシーは20分にタミー・エイブラハムがプレー続行不可能になるアクシデントに見舞われたが、31分に途中出場オリビエ・ジルーが先制点を奪取。その8分後にはティモ・ヴェルナーにも得点が生まれ2-0としている。チェルシーは前半だけでシュート12本を記録、被シュート数はわずか2本だった。

 しかし、後半はニューカッスルが勇気を出して前に出てきたことでややリズムが崩れてしまった。後半開始早々にはいきなりピンチも招いている。「(後半)最初の2分でいきなり2本のシュートを放たれてしまったり、デュエルを失ったり、コーナーを与えたりと、何かを失うような感覚があった」とトゥヘル監督も振り返っている。

 ただ、自慢の守備陣が奮闘。第5節サウサンプトン戦以来のリーグ戦先発入りとなったGKケパ・アリサバラガのファインセーブなどもあり、相手に得点を許さず。上記した通り後半の立ち上がりは少しバタついたが、途中からはリズムを取り戻すこともできていた。

 チェルシーは最終的にシュート数18本、支配率65.7%を記録。その中で3点目を奪うことができなかったことは反省点と言えるかもしれないが、ヴェルナーに久々に得点が生まれたり、ここ最近軽率なミスが目立っていたケパがハイパフォーマンスを披露したりと、多くの収穫を得ることができている。

重要だった両WBの働き

 では、なぜチェルシーはニューカッスルに完封勝利することができたのか。その理由の一つに、両ウイングバックの働きがあったと感じている。

 4-3-3を採用したニューカッスルはチェルシー(3-4-2-1)の3バックに対し3トップを当てており、あまり前から行くことなく、ジョルジーニョとマテオ・コバチッチへのパスコースを切ることでビルドアップを封じている。そしてインサイドハーフは、落ちてくるシャドーのヴェルナーやメイソン・マウントを警戒。この形が守備時の「基本」となっていた。

 しかし中は堅いが、そのぶん外が空く。チェルシーのWBに対してはサイドバックが見るという対応をしたが、彼らの距離は長いので、当然ニューカッスル側からすると深くまで追うことは不可能。そのため、チェルシーの両WBマルコス・アロンソとカラム・ハドソン=オドイは立ち上がりからよくボールに触れることができていた。事実、20分までのタッチ数でコバチッチに次いで多かったのは左WBのアロンソだった。

 もちろんボールに触れるだけでは怖くない。受けた後、どのようなアクションを見せるかが重要だったのだが、トゥヘル監督が送り込んだ両WBはそのミッションを高いレベルでクリアしてみせた。

 左WBのアロンソは持ち味であるキック精度の高さと技術の良さを発揮し、シュート数5本(チーム最多)、そしてキーパス2本を繰り出すなど攻撃のグレードを高め続けていた。また、外に張るだけでなく、ハーフスペースを突いてシャドーのヴェルナーにサイドへ流れるためのスペースを提供したりと、ボールを持っていない状態でも効果的な動きを見せている。

 ベン・チルウェルもレベルの高い選手だが、彼と違いアロンソには高さがある。相手と競ってボールをスペースに落とすというプレーができるのは、やはり魅力だ。この日は最終ライン以外の選手としては最多となる空中戦勝利3回を記録していた。

 右WBのハドソン=オドイは反対サイドのアロンソと違い、内側に入ることは少なく大外でのプレーを基本としていた。そこでボールを持ったら迷わず縦へ。一瞬の加速でニューカッスルの左サイドを何度も破っており、際どいクロスも数本送り込んでいる。打開力はやはりピカイチだった。

 アロンソとハドソン=オドイに共通していたのは、しっかりと「深さ」を作り、“やり切る”ことができていたこと。相手が下がるということはそれだけゴールに近づいているということであり、同時に自分たちのゴールから遠ざけていることもできているため、被カウンターから失点する確率も低くなる。そういった意味で、両WBのアクションは攻守両面において非常に効果的だったと言えるだろう。

剥がしまくったコバチッチ

マテオ・コバチッチ
【写真:Getty Images】

 ニューカッスル戦完勝のもう一つの理由は、コバチッチの存在感だろうか。両WBもさすがだったが、クロアチア人MFの輝きは別格だった。

 先述した通り、ジョルジーニョとコバチッチのダブルボランチはビルドアップ時に警戒されていたため、たとえボールを受けることができても素早い寄せに遭ったり、なかなかスペースがない中でのプレーを強いられていた。

 しかし、コバチッチは相手のプレスを何度も無力化。技術の高さを生かしてボールを少しずらしたり、寄せてくる相手へ先に身体を当てることでボールをうまく隠し、体幹の強さを生かしてグッと前を向く。そしてどんどん縦へ進み、ニューカッスルを押し込んでいる。

 14分にエイブラハムにチャンスが訪れたが、その起点となったのはコバチッチだった。自陣でプレスを回避し、見事なロングフィードを相手最終ラインの背後に届けている。64分には自陣で相手をかわし、ボールを預けて敵陣へ。その後リターンを受け少しドリブルで運び、右サイドへ展開してハドソン=オドイの決定機を演出している。

 データサイト『Who Scored』によるスタッツも申し分ない。タッチ数はこの日最多の108回を記録しており、パス数91本で成功率96%、キーパス2本を繰り出している。なお、ビルドアップ時に警戒されてもタッチ数が多かったのは、途中からダブルボランチの一角を最終ラインに落とし、ニューカッスルの3トップに対し数的優位な状況を作り出せたからである。

 驚異だったのはドリブル成功数だ。コバチッチは何と8回という数字を叩き出している。もちろん、この日単独トップの成績だ。

 個人で相手を剥がすことができれば、相手が対応できる人数は減り、マークのズレも各所で生じる。そうなれば、より多くのスペースを作り出せる。チェルシーの攻撃がサイドでワンパターン化しなかったのは、コバチッチの独力での打開によって空間ができ、崩しの選択肢をより多く持つことができたからと言っても過言ではない。

 チェルシーは次節サウサンプトン戦、その後マンチェスター・ユナイテッド戦、エバートン戦、リーズ・ユナイテッド戦、リバプール戦と続く。その間にCLラウンド16のアトレティコ・マドリード戦も入ってくるので非常にタフな時間を過ごすことになりそうだが、その中でも結果を残すことができるか。

(文:小澤祐作)

【了】

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