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アーセナルが浮き彫りにしたビエルサの弱点。アルテタはどのようにリーズのマンツーマンを崩したのか?【分析コラム】

プレミアリーグ第24節、アーセナル対リーズ・ユナイテッドが現地時間14日に行われ、4-2でアーセナルが勝利した。マンツーマン・ディフェンスを軸にプレッシングサッカーを展開するマルセロ・ビエルサ監督のチームを、ミケル・アルテタ監督は有効な対策で打ち破っている。(文:本田千尋)

text by 本田千尋 photo by Getty Images

マンツーマンを破ったアーセナル

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【写真:Getty Images】

“技術”でマンツーマンを打ち破った。2月14日に行われたプレミアリーグ第24節で、ホームにリーズ・ユナイテッドを迎えたアーセナル。試合前の“奇才”マルセロ・ビエルサ監督のチームに対する警戒度はマックスだったようだ。

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 試合後、ミケル・アルテタ監督は「私の考えでは、リーズはこのリーグでベストのチームの1つで、準備して対戦するのが最もハードなチームの1つだ」とコメントを残した。右SBのエクトル・ベジェリンも「プレミアリーグに90分間走ろうとするチームがあるとすれば、それはリーズだ」と振り返っている。

 しかし逆を言えば、これらのコメントは、ビエルサ監督が仕掛けてくる戦術がどういったものなのか、前もって予想しやすいということをも意味するのではないか。

 もちろんゾーン・ディフェンスに慣れた選手たちにとっては、豊富な運動量に支えられたマンツーマンは厄介なことこの上ないだろう。しかし、ゾーン・ディフェンスが主流の今だからこそ、マンツーマンは不意を突いて仕掛けた場合に最も威力を発揮する。前もってマンツーマンで来ると分かっていれば、対策を立てられないこともないのではないか。

 このリーズ戦でアルテタ監督は、ここのところ左サイドで先発が続いていたペペを外し、今冬に加入したマルティン・ウーデゴーアを初先発させている。2列目はエミール・スミス=ロウが左サイドに回り、ウーデゴーアがトップ下、右にブカヨ・サカを並べた。ウインガーのペペの突破力ではなく、スミス=ロウ、ウーデゴーアの足元の技術を優先させた格好だ。

 また、ボランチのポジションでは、怪我のトーマス・パルティに代わって、モハメド・エルネニーではなく、そのエジプト代表MF以上にテクニックと創造性のあるダニ・セバージョスが選択されている。

アーセナルが突いたリーズの弱点

 マンツーマン・ディフェンスの弱点として、マークする相手がこちら以上に足元の技術、キープ力、スピードがあると、ボールを奪い切れない、という点を挙げることができるだろう。特にダイレクトでボールを回された場合、そのボール以上の速さで動ける人間はいない。

 13分のアーセナルの先制点を振り返ってみると、CBガブリエルが縦に入れたボールを、スミス=ロウ→グラニト・ジャカ→ピエール=エメリク・オーバメヤンとダイレクトで繋いで、左サイドで1対1の状況を創り出している。

 スピードのあるガボン代表FWを1対1で止めろと言われるのは、まるで何かの罰ゲームのようだ。対面したリーズのCBルーク・アイリングはうかつに飛び込めず、後ずさりながら守備をせざるを得なかった。オーバメヤンはこのイングランド人DFをかわして先制点を決めた。

 ちなみにこの一連の流れの中で、ガブリエルが縦パスを入れた時、自陣方向に戻りながらパスを受けるスミ=スロウに対して、リーズの右SBジェイミー・シャクルトンが激しく食らいついたが、ここでもマンツーマンの弱点が浮き彫りになっている。

 攻撃側としては、相手がマンツーマンであるがゆえに、釣り出しやすいところがある。そしてこのスミス=ロウのアクション(シャクルトンを釣るためのダイレクトプレー)は、先制に繋がるサイドでの数的同数を創り出した。

鋭い攻から守への切り替え

 また、マンツーマンを仕掛けられてボールを失ったとしても、即座に攻から守へと切り替えることが出来れば、こちら側も同数でプレスを掛けやすい。39分に右サイドでボールを失ったサカが、敵のGKまで追ってPKを獲得したシーンは、そうした切り替え時のメリットが現れた場面と言えるだろう。

 サカが左CBリアム・クーパーへのコースを切りながらGKイラン・メリエにプレスを掛けた時、リーズの他の選手も同数でハメられており、一瞬、20歳のGKは出しどころを見つけられないようだった。ここはオーバメヤンがきっちり決めてアーセナルが2点目を奪っている。

 3点目は、先制点に繋がる一連の流れと同様に、ボックス内の右側でベジェリン、スミス=ロウ、セバージョスのパスワークでリーズのディフェンスを翻弄。最後はベジェリンが決めた。

 4点目は後半入ってすぐの47分。ショートカウンターからスミス=ロウがファーに絶妙なパスを出して、オーバメヤンがヘディングで決めた。

 もちろん試合の90分間を通してアーセナルの選手たちが、足元の技術やスピードでリーズの選手たちのマンツーマンを悠々と剥し続けたわけではない。豊富な運動量とハードな守備に少なからず苦しんだし、何度かチャンスを創られ、後半には2失点を喫している。リーズがプレミアリーグで「ベストのチームの1つで、準備して対戦するのが最もハードなチームの1つだ」であることは間違いないのだ。

 しかしそれ以上に、アーセナルの選手たちの“技術”がマンツーマン・ディフェンスの弱点を浮き彫りにし、“奇才”マルセロ・ビエルサ監督のチームを打ち破ったのである。

(文:本田千尋)

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ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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