バルセロナの好調とトリンコンの覚醒
前半のバルセロナはなかなかゴールに結びつけることができなかったが、後半の6分間で3得点を挙げて試合を決めた。リオネル・メッシとフランシスコ・トリンコンはともに2得点をマーク。両者ともにハットトリックのチャンスこそ逃したが、大勝の立役者となった。
【今シーズンのバルセロナはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】
メッシはやりたい放題だった。ミドルレンジから狙いすました左足のシュートで2点を奪っている。チーム2点目となったゴールは意表を突くようなニアサイド。チームの4点目はファーサイドを巻くように突き、GKは一歩も動けなかった。
前半戦のトリンコンは思うような結果を残せなかったが、ここにきて吹っ切れた印象がある。レアル・ベティス戦では途中出場からラ・リーガ初得点をマークし、初先発となったこの試合では2得点を決めた。ここ最近の試合と同じように決定機を逃すシーンもあったが、積極的にゴールを狙う姿勢が2得点につながった。
期待外れだったと言われることもあったが、トリンコンはまだ21歳である。「彼の成長は自信の問題だった。彼はまだ適応の余地を残していて、まだ時間が必要だ」とロナルド・クーマン監督は語る。辛抱強くプレータイムを与え続けてきたことが、後半戦に入って徐々に結果へとつながっている。
CBを高い水準でこなすデ・ヨング
バルセロナはラ・リーガで7連勝となった。1試合消化が少ないアトレティコ・マドリードとの差はまだ8ポイントあるが、5月にはまだ直接対決も残している。逆転優勝の可能性はまだまだある。
ジェラール・ピケ、セルジ・ロベルト、アンス・ファティを含めて、バルセロナは多くの負傷者を抱えながらシーズンを戦っている。ベティス戦ではピケの代役として台頭したロナウド・アラウホが負傷。ここ数年怪我に悩まされているサミュエル・ウンティティのパフォーマンスも上がらず、最終ラインのやりくりにクーマン監督も頭を悩ませている。
ミッドウィークのUEFAチャンピオンズリーグを控えるこの試合では、ペドリとジョルディ・アルバに休養が与えられた。センターバックにはクレマン・ラングレとフレンキー・デ・ヨングを起用。デ・ヨングとペドリが不在のインサイドハーフにはリキ・プッチと18歳になったばかりのイライクス・モリバを先発させている。
若手が台頭する今季のバルセロナで、デ・ヨングを若手という括りに入れるのはもはや違和感を覚える。序盤戦ではブスケッツとダブルボランチを組み、中盤戦以降はインサイドハーフでペドリと抜群の連係を見せ、欠員が続出するセンターバックもこなす。ここまでラ・リーガ全試合に出場するデ・ヨングがいなければ、今季のバルセロナはとっくに崩壊していただろう。
ピケの長期離脱の影響もあって、今季はセンターバックでプレーする時間が増えている。正しいポジショニングを取り続けることができるので、慣れない最終ラインのポジションでもそれを感じさせないプレーを見せることができる。フィジカルや技術の高さはもちろんだが、インテリジェンスがデ・ヨングのポリバレント性を支えている。
デ・ヨングが11人いれば勝てる
司令塔からハードワークするMFへ役割を変える選手は多い。バルセロナに移籍したときのイバン・ラキティッチや、レアル・マドリードのルカ・モドリッチがまさにその例で、リバプールのジョルジニオ・ワイナルドゥムもそれに該当する。
アヤックスでは守備的なポジションで台頭した。元々は攻撃的な選手だったが、元指揮官のマルセル・カイザーはデ・ヨングをアンカーやセンターバックで抜擢している。バルセロナでは様々なポジションで起用されているが、インサイドハーフとして攻撃的な資質を披露している。
純粋な9番がいないバルセロナでは、中盤の選手がゴール前に飛び込んでくる動きがチャンスにつながることが多い。アルトゥーロ・ビダルはいない今季は、デ・ヨングが2列目からボックス内に侵入する動きが重要となっている。
アラベス戦のハーフタイムにブスケッツはお役御免となった。デ・ヨングは中盤の底に移動し、リキ・プッチとダブルボランチのような形で並んだ。アラベス戦のような押し込む時間が長い展開では、オプションとして有効である。
キープ力と展開力に長けており、キックがうまい。2列目からの飛び出しや、ゴール前でターゲットになるプレーはFW顔負けである。ボール奪取能力も高く、運動量が豊富にもかかわらず、毎週2試合に出続けられるタフさがある。
「デ・ヨングはアヤックス時代よりも完璧な選手になりつつある」とクーマン監督は評している。いろいろなポジションで使いたくなるのは、どこでも高いパフォーマンスを発揮できるからである。極論だが、デ・ヨングが11人いればバルセロナは勝ち続けるだろう。
(文:加藤健一)
【了】