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ルイス・スアレスの恐るべき輝き。貫禄の2ゴール、この男がいるだけでアトレティコは強い【分析コラム】

ラ・リーガ第22節、アトレティコ・マドリード対セルタが現地時間8日に行われ、2-2のドローに終わっている。アトレティコはこれでリーグ戦の連勝が8でストップ。2試合連続で複数失点を喫することになった。一方で攻撃陣はまたも複数得点。ルイス・スアレスが輝きを放っている。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

セルタに苦戦。厄介だったのは…

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【写真:Getty Images】

 ジョアン・フェリックスやトマ・レマルなど、新型コロナウイルス感染者が多く出ている苦しい状況の中、よく勝ち点を奪ったと考えるべきだろうか。

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 現地8日に行われたラ・リーガ第22節、アトレティコ・マドリード対セルタのゲームは互いに譲らず2-2のドローに終わっている。アトレティコはこれでリーグ戦連勝が「8」でストップ。勝ち点1の獲得は第5節ビジャレアル戦以来、今季3度目となっている。

 3-1-4-2で挑んだアトレティコは前半から苦しい戦いを強いられた。

 2トップの相手に対し3バックで数的優位を作り、両ウイングバックに幅を取らせてセルタのインサイドハーフを引き付ける。そうして空いたスペースにコケとサウール・ニゲスの両インテリオールが顔を出す、というビルドアップ時の狙いは見えたが、セルタも非常に守備の意識が高く、なかなか深くまでは侵入できなかった。

 そして13分に痛恨の失点。セルタに右→左と揺さぶられ、最後はウーゴ・マージョの鋭いクロスにサンティ・ミナが飛び込んでいる。

 リードを奪われたアトレティコはその後も攻撃が噛み合わず、中途半端な位置でボールを失ってはセルタに攻められた。とくに厄介な存在となっていたのは2トップの一角に入ったイアゴ・アスパス。アトレティコは、ライン間を自由に動き回るセルタのエースを捕まえきれていなかった。

 18分の場面では、セルタに左サイドでボールを持たれると、ミナがレナン・ロディの背後を狙ってランニング。そこをカバーしようとアンカーのジョフレー・コンドグビアが下がったのだが、同選手が動いたことにより空いたエリアをアスパスが利用。背番号10はボールを引き出し、最後は味方とのワンツーで深くへ侵入して際どいクロスを送り込んでいる。

 41分の場面では、セルタの選手がボールを奪うとアスパスが一気にギアを上げスルーパスを呼び込む。そして最後はドリブルでペナルティーエリア内まで侵入し、コーナーキックを得ている。このように、アトレティコは何度かセルタの絶対的エースを良い形で攻撃に絡ませてしまったのである。ここは、苦戦を強いられた一つの原因となっていた。

シメオネの修正力

 しかし、それでもアトレティコはワンチャンスを生かした。45分、右サイドからのクロスにルイス・スアレスが飛び込み同点。ホームチームにとってはこれがこの日3本目のシュート。スアレスにとってはこれがファーストシュートだった。

 エースが仕事をし1-1で迎えることができた後半、ディエゴ・シメオネ監督が動きを見せた。フェリペを下げてルーカス・トレイラを送り込み、システムをそれまでの3-1-4-2からこれぞアルゼンチン人指揮官の代名詞とも言える4-4-2へと変更したのだ。

 するとアトレティコは後半開始早々の50分に逆転。歓喜をもたらしたのはまたもスアレスで、今度は左からのクロスに飛び込んでいた。

 2-1としたアトレティコは完全に流れを引き寄せていた。前半は守備時5バックで自陣深くにおいてのブロックを基本としていたが、4-4-2への変更後はよりラインを高くし、全体をコンパクトにしてセルタのポゼッションを圧迫した。前半空きがちだったアンカーのコンドグビアの脇もダブルボランチになったことで締められ、危険人物アスパスに仕事を与える機会も減っていた印象だ。

 試合終盤までアトレティコに失点する気配はほとんどなかった。セルタ側も選手交代を行うだけでウイングを配置する(コンパクトな陣形を広げるため)などの大きな修正はできていなかったので、2-1のまま試合は終わると確信した。

 しかし、結果は2-2。アトレティコは89分に一瞬の隙を突かれて同点に追いつかれている。形は1失点目と同じく左サイドで作られてのもの。クロスを上げたのはアウグスト・ソラーリだったが、同選手のマークをコケがボールウォッチャーとなったことで放してしまったのが痛かった。勝てただけに、非常にもったいない失点になったと言えるだろう。

スアレスはアトレティコのラストピース

ルイス・スアレス
【写真:Getty Images】

 冒頭でも記した通り、アトレティコはこれでリーグ戦連勝が8でストップ。前節のカディス戦に引き続き複数失点を喫してしまったのは、少し不安である。

 ただ、この勝ち点1でそう悲観的になる必要はないだろう。主力に離脱者が出ており、前半がうまくいかず、セルタが非常によくやっていた中で勝ち点を奪えたことはポジティブに捉えてもいい。90分間の内容がダメダメというわけでもなかった。

 個人にフォーカスすれば、やはりルイス・スアレスの輝きは大きかった。訪れたチャンスを決して無駄にせず2ゴール。アトレティコを救っている。

 ロナルド・クーマン監督率いるバルセロナでは戦力外となってしまったが、ストライカーとしての能力はまったく錆びついていない。1試合2得点はこのセルタ戦含めて今季リーグ戦5回目。新型コロナウイルス感染により離脱する時期がありながらもここまで17試合で16得点を奪っており、リオネル・メッシらを抑えて得点ランキングの単独トップに立っている。

 ペナルティーエリア内へ侵入してゴールを奪うまでのビジョンを、ボールと人の位置を把握しながらしっかりと描き、それを行動に移して歓喜を呼び込む。この最大のストロングポイントはバルセロナからアトレティコへ活躍の場を移してもなお、余すことなく発揮されている。だから、セルタ戦の2ゴールもすべてダイレクト。クロスが素晴らしかったことはもちろん、ゴールを奪う形を早い段階で見つけているスアレスはポジショニングの時点で勝負を決めているのだ。

 フローニンヘン、アヤックス、リバプール、バルセロナ、そしてアトレティコと欧州のクラブを渡り歩いてきたスアレスは、どのチームにおいても点を取りまくっている。恐らくスアレスは、どうチームに馴染むかではなく、どうゴールを奪うかを優先して考えることができるFW。だからこそゴールネットを揺らし続けることができると感じている。

 昨季のアトレティコはラ・リーガ最多タイとなる16回ものドローを経験している。守備は堅いが点が取れない、という試合が多かったのだ。

 そのアトレティコにとってザ・ストライカーであるスアレスは、まさに求めていたラストピースだ。昨季のチーム総得点は51だが、今季はすでに同42得点。そのうちの16得点をウルグアイ人FWが奪っていることからも分かる通り、彼の加入はチームのウィークポイントを一瞬で変えている。そしてもともと堅守は自慢。完成形に近づいていると言えるのではないか。

 ラ・リーガ全体が恐れる点取り屋スアレスは、今後もアトレティコに勝ち点をもたらし続けるはずだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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