デビューから4試合連続フル出場
欧州初挑戦のサムライが早くも不動の地位を築こうとしている。
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ポルトガル1部リーグ第17節が現地4日に行われ、サンタ・クララはファレンセと1-1で引き分けた。日本代表MF守田英正はサンタ・クララの一員として先発メンバーに名を連ね、公式戦4試合連続のフル出場を果たした。
川崎フロンターレからポルトガル(しかも大西洋の真ん中に浮かぶ離島)に渡って、新天地デビューを飾ったのが1月25日のこと。それから2週間も経たないうちに4試合をこなし、その全てでフル出場、さらに1得点1アシストを挙げている。一度も交代を告げられず、過密日程でも中盤の要たるポジションを任され続けている事実を見るだけでも、ダニエル・ラモス監督からの信頼がうかがえる。
ファレンセ戦で4-3-3の中盤アンカーに配置された守田は、前半から積極的にボールを触ってビルドアップの起点になっていた。ディフェンスラインからパスを引き出し、サイドに散らしながら堂々とゲームを組み立てる姿は欧州にやってきたばかりとは思えないほど。
守備への切り替えも迅速で、両サイドへのカバーリングも精力的にこなす。球際の競り合いにも臆さず飛び込み、ガツガツと相手の選手に当たってボールを奪っていく。日本人選手は海外移籍の際に球際の弱さを不安視されることも多いが、守田には全く当てはまらない。
すでにサンタ・クララの中盤でも屈指のクオリティを発揮していて、周囲からも実力を認められているのは間違いない。
もちろん課題はある。フロンターレ時代ほど味方との距離が近くなく、自らボールを持って運ぶ際に不用意な失い方をする場面も散見される。だが、チームメイトたちとの距離感や連係は時間とともに良くなっていくはずで、現時点で深刻な問題として捉える必要はないだろう。
失点場面のプレーは…
40分にライアン・ゴールドが決めたファレンセの先制点の場面では、密着マークしていながらゴールネットを揺らされてしまった。しかし、守田にほぼ非はない。ゴールドは自身の背中側に入ってきたグラウンダーのクロスに対し、左足ヒールでコースを変えてゴールに流し込む離れ業を見せた。いくら体を寄せていても防げる失点ではなかった。週間ベストゴールに選ばれてもおかしくない“ゴラッソ”だった。
試合全体を見るとサンタ・クララはファレンセにシュート数や枠内シュート数で上回られ、ペナルティエリア内から13本ものシュートを放たれた。セットプレーの数も相手の方が上だった。それでも引き分けに持ち込めたことを誇るべきだ。
ダニエル・ラモス監督は「前半の彼らはより多くのデュエルに勝ち、セカンドボールが生まれた場面でも危険で、こちらは思っていたほどチームとして機能していなかった。ファレンセのプレッシャーから逃れる力も欠けていた」と劣勢だった試合内容を振り返っていた。
後半に関しては「(同点ゴールにつながる)PKを獲得する前に、我々はドローに値するパフォーマンスを見せていた」と納得の出来で、「どちらのチームが勝っていてもおかしくなかった」と手応えを口にする。こうして指揮官がポジティブでいられるのは、劣勢のなかでもピッチの中央で攻守の要となってチームのつながりが途切れないよう必死に戦った守田の存在があってこそなのではないだろうか。
創設100周年、クラブ史上最高のシーズン
サンタ・クララは1月に入ってから守田がデビューする直前までのリーグ戦3試合で2分1敗と足踏みが続いていたが、守田がデビューしてからの3試合は2勝1分。たった1人の存在で全てが変わったとは言わないまでも、チームにいい流れをもたらしているのは間違いない。
プレーぶりはフロンターレ時代に見慣れた姿、そのものだ。味方からの粗めのパスも巧みにコントロールし、ツータッチ目で間髪入れず鋭いパスをつける。ボールに触ってから次の動きに移るまでが淀みなく、ファーストタッチが乱れなければ次の判断までのスピードが頭抜けていて、一瞬も無駄がない。長短のパスの使い分けもお手の物、狭いスペースでも技術がブレない守田の動きには他の選手たちにない独特のリズムがある。さながら「1人フロンターレ」状態である。
攻撃を加速させるテクニックとプレービジョン、守備に強度をもたらす球際の迫力や献身性はポルトガルでも十分に通用している。チームのなかでも随一のクオリティは、加入から2週間で周囲にも認められた。
サンタ・クララはファレンセ戦で1ポイントを積み上げて、勝ち点22、17節を終えて7位につけている。前半戦を終えての勝ち点22は、2001/02シーズンに記録した勝ち点23に次ぐクラブ史上2番目の多さ。さらに20失点は、2001/02シーズンと2019/20シーズンに並んで最少タイとなっている。
クラブ史上最高のシーズンを過ごした翌年、2002/03シーズンには2部降格。それからは2部が定位置になり、2018/19シーズンに15年ぶりの1部リーグ参戦を果たした。昨季は1部で過去最多の勝ち点43を稼ぎ出し、順位も過去最高の9位だった。
今季はさらに上を目指せる位置につけ、歴史に残るであろうシーズンの真っ只中に加入した守田がダニエル・ラモス監督率いるチームをさらに勢いづけている。後半戦もここまでに披露してきたようなハイパフォーマンスを維持できれば、今季で創設100周年を迎えたサンタ・クララの歴史に名を刻む選手になれるはずだ。
(文:舩木渉)
【了】