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アーセナルの擁護しようがないミスはどのように引き起こされたのか? 敗戦は退場となった2人だけの責任ではない【分析コラム】

プレミアリーグ第22節、ウォルバーハンプトン対アーセナルが現地時間2日に行われ、2-1でウルブズが勝利している。先制したアーセナルは前半終了間際にダビド・ルイスが一発退場に。さらに後半にはベルント・レノも退場処分を受け、優勢だった試合を自分たちの手で壊してしまった。敗戦の矢面に立たされたのは退場となった2人だが、チームとして問題はなかったのだろうか。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

試合の主導権を握ったアーセナル

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【写真:Getty Images】

「前半のようなプレーを続けていれば、3、4得点は決めていただろう」

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 ミケル・アルテタ監督が試合後に残したコメントは、負け惜しみでも言い訳でもない。指揮官にはどうしようもないことがピッチで起きてしまった。1度であれば対処の方法があったかもしれないが、2度も起きればお手上げである。

 ボクシングデーに行われたチェルシー戦から、アーセナルは7試合負けなしと復調していた。負傷したキーラン・ティアニーや家族の事情でチームを離れたピエール=エメリク・オーバメヤンを欠きながらも、5勝2分の成績で順位を上げている。

 ウォルバーハンプトンはアーセナルとは対照的に不調にあえいでいる。クリスマス前から勝てず、9試合ぶりの勝利を目指してアーセナル戦に臨んだ。

 冒頭で紹介したアルテタのコメントの通り、立ち上がりからアーセナルが決定機を作った。開始1分、トーマス・パルティのパスに反応したブカヨ・サカがDFラインの裏を取り、シュートを放つ。9分にはサカが右足のシュートでゴールネットを揺らしたが、ラストパスを出したアレクサンドレ・ラカゼットがオフサイドとなり、ゴールは認められなかった。

 その後もアーセナルが試合の主導権を握り、32分に先制した。敵陣左サイドでニコラ・ペペボールを奪い、ラカゼットからリターンパスをもらったペペが単独突破から右足で決めた。

退場シーンの問題はどこに?

 前半アディショナルタイムの1プレーが、試合のすべてをひっくり返した。

 ウルブズのウィリアン・ジョゼが胸で落とし、ルベン・ネヴェスが縦にパスをつける。前を向いたダニエル・ポデンセはジョゼにスルーパス。裏を取られたダビド・ルイスは、ジョゼをペナルティーエリア内で後ろから倒してしまった。

 映像で見る限りダビド・ルイスがジョゼを倒そうという意思はなさそうだったが、ボールにチャレンジはしていない。競技規則に照らし合わせてみれば、ペナルティーエリア内の一発退場に相当するファウルだった。

 ダビド・ルイスの判断が不用意だったと言わざるを得ない。故意ではないとはいえ、距離感を考えれば足が引っかかるのは注意すべき。ベルント・レノの位置と能力を考えれば、十分にセーブできる可能性は残されていた。

 ジョゼが胸でネヴェスにパスをした場面で、ダビド・ルイスはジョゼに寄せていたため、DFラインに穴をあけていた。細かい指摘をすれば、左サイドバックのセドリック・ソアレスが絞っていればジョゼの突破は防げていたかもしれない。

 前半アディショナルタイムで同点に追いつかれたとしても、まだまだ勝ち越しのチャンスは残されている。「3、4得点決めていた」くらいにアーセナルは優勢だったのだ。

 ダビド・ルイスはアーセナル加入から1年半で、3度目の一発退場となった。裏を取られたこと自体が問題というよりは、セドリックも含めたその後の対応が拙かったと言わざるを得ない。

擁護しようがないミス

 10人になったアーセナルは、ラカゼットを下げて1トップを廃し、自陣にブロックを敷いている。しかし、スペースを埋める意識が強すぎるあまり、ジョアン・モウチーニョをフリーにしてしまった。ゴールから30mほどの距離から放たれたミドルシュートは、ポストに当たってゴールネットに吸い込まれる。レノをもってしても、防ぎようのないコースにボールが飛んだ。

 試合が“終わった”のは72分。右サイドバックのネウソン・セメドが浮き球のパスを出し、アマダ・トラオレが走る。ゴールを捨てて飛び出したレノが外に弾き出そうとしたが、ボールを腕に当ててしまった。

 雨に濡れたピッチで、バウンドの目測を誤ったのだろうか。横から走りこんできたことで位置の予測が難しかったかもしれない。擁護しようがないレノのミスだったが、簡単に裏を取られてしまったセドリックも問題である。

 10人になったチームが思いのほか健闘した試合は稀にあるが、9人では難しい。堅実にボールを繋いで時間を消費したウルブズが、9試合ぶりの勝利を手にしている。

 はるか昔の出来事のように感じるが、11人だったアーセナルはゲームをコントロールしていた。ペペの左サイドも板についてきて、エミール・スミス=ロウと復帰したサカのコンビネーションも良い。ルイ・パトリシオのビッグセーブもあったが、決定機は作っている。

 しかし、この試合は2人の退場がすべてだった。ただ、2人を矢面に立たせればいいというわけでもない。セドリックは2つの退場シーンに関わってしまい、パルティも中盤で不用意なボールロストを何度かしていた。そういった細かいミスが水を差し、試合を壊した。アーセナルはウルブズ戦で高い授業料を払うことになった。

(文:加藤健一)

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そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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