監督交代で浮上するシント=トロイデン
シント=トロイデンは現地時間1月31日、入れ替え戦に進む17位のセルクル・ブルージュと対戦し、3-0で勝利を収めた。リーグ戦は残り9試合となる中で、17位との勝ち点は8に広がっている。
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前半戦は思うように勝ち点を得られず、第2節からは8戦未勝利と苦しんだ。降格圏に沈んだ12月にケビン・マスカット監督は解任。暫定監督を経てピーター・マースが後任に就いている。
監督交代後は6勝3敗1分と好調で、降格圏を脱した。開幕から全試合に先発する鈴木優磨は監督交代後10試合で7得点とゴールを量産中。シュミット・ダニエルは怪我から復帰した10月以降、正GKとしてチームを支えている。
冬の移籍市場での動きは活発で、既に3人の即戦力がリーグ戦でプレーしている。ベルギーリーグでの経験も豊富な32歳のクリスティアン・ブルースと33歳のイロンベ・ムボヨを完全移籍で獲得。主にマインツのセカンドチームでプレーしていたディミトリ・ラヴァレーを期限付き移籍で獲得している。
彼らはまだ加入から間もないが、既にチームの戦力として活躍している。ベテランの2人は既に主力として鈴木優磨と攻撃陣を引っ張り、ラヴァレーも前節で初先発。セルクル・ブルージュ戦でも3人は先発し、ブルースは1得点1アシストと活躍している。
鈴木優磨が身に着ける術
マース監督が就任して1か月半が経過し、ベースとなるスタイルは固まりつつある。5-3-2の布陣で基本的に高い位置からボールを奪いに行くことはない。敵を自陣に引き込んで、ボールを奪えば鈴木優磨を含めた前線でカウンターを仕掛けるのが特徴だ。
前線の選手はできるだけ少ないタッチ数でボールをつなぎ、ゴール前に顔を出していく。1点目のシーンもロングカウンターからで、左ウイングバックからのスルーパスを鈴木優磨が右サイドで受け、中央のブルースがミドルレンジから決めた。ボールを奪ったリベラト・カカーチェを含めた3人で攻撃を完結させている。
ゴールを量産する鈴木優磨の身長は182cmあるが、屈強な選手が揃うベルギーリーグの中では決して大柄ではない。セルクル・ブルージュ戦でもシンプルな空中戦の競り合いではなかなか勝つことができなかった。
ただ、DFラインの裏を取る動きや、相手の背後からクロスに飛び込む動きからゴールを重ねている。ボールと相手の間にうまく身体を入れてファウルをもらうのもうまい。シンプルな強さや高さでは分が悪いが、それを補う術を鈴木優磨は身に着けている。
橋岡大樹が争うポジションは?
1月31日、浦和レッズとベルギーのシント=トロイデンは、橋岡大樹の期限付き移籍が合意に達したことを発表した。期間は22年6月末まで。現時点ではベルギーの入国が条件付きで可能となっているようで、プロコトルに則ってチームに合流するようだ。
ベルギーリーグは欧州主要リーグへ羽ばたくためのステップアップとなる舞台だ。シント=トロイデンからも遠藤航がシュトゥットガルトに、冨安健洋はボローニャに移籍して、それぞれレギュラーとして活躍している。
しかし、その切符を掴めるかは結果次第。遠藤や冨安のように実績を残せば評価されるが、プレーするチャンスを得られずJリーグに帰ってきた選手も少なくない。当然だが、ステップアップするには、シント=トロイデンで結果を残さなければいけない。
橋岡は3バックの一角か、右ウイングバックのポジションを争うことになるだろう。センターバックはポル・ガルシアがこの冬にメキシコへと渡り、先述した通りラヴァレーを獲得している。
マース政権では、右ウイングバックを固定できていない。マキシミリアーノ・カウフリーズは本職がセンターバックで、攻撃面での貢献度は物足りない。ウォルク・ジャンセンはセルクル・ブルージュ戦で監督交代後初めてプレーしたが、アピール成功とはならなかった。
世界で戦うには…
遠藤はシュトゥットガルトの中盤でセンセーショナルな活躍を見せているが、Jリーグでは最終ラインでプレーすることがほとんどだった。しかし、リオデジャネイロ五輪を率いた手倉森誠監督は世代別の日本代表で遠藤を中盤の底で起用していた。
橋岡もユースではセンターバックが主戦場だった。トップチームで抜擢したのはユース時代にも指導した大槻毅前監督だが、右ウイングバックにコンバートしている。「足がつっても走れる」と言われた運動量とスピードをサイドで活かしていた。
2人ともJリーグではセンターバックとしてプレーするだけの能力を持っていた。しかし、近い将来、世界で活躍することを視野に入れて、大槻監督は橋岡をサイドで、手倉森監督は遠藤を中盤で起用していたのかもしれない。
182cmという橋岡の身長はベルギーでは平均的で、センターバックとしては小柄な部類に入る。センターバックであれば190cmを超える屈強なFWと対峙しなければならないが、ウイングバックでは穴になることは少ない。
ゲームメイカー的な攻撃の組み立てはそこまで得意ではないが、シント=トロイデンのサッカーではそこはあまり要求されないだろう。「足をつっても走れる」運動量は何よりも強みになる。ドイツ時代の酒井宏樹のようなサイドバック像になるだろうか。
ポジションこそ違うが、大きくて強い相手に対してどのように立ち向かうかは、鈴木優磨がいい教材になるだろう。サッカーは身体能力だけでは決まらない。活躍の道は険しいが、シント=トロイデンというチームは橋岡の特徴が発揮できるチームのように見える。
(文:加藤健一)
【了】