J1昇格の徳島が抱える問題
Jリーグの2020シーズンが終わったのはまだつい昨日のように感じられるかもしれないが、新たなシーズンに向けた準備はすでに全速力で進められている。現在進行形のパンデミックとそれに伴う困難に対処する中で、可能な範囲内での全速力ではあるとしても。
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問題のひとつは、海外からの新戦力を日本に入国させられないことだ。新たなクラブにいつ合流できるのか不確定な選手たちが何人かいることに加えて、徳島ヴォルティスに至ってはダニエル・ポヤトス新監督の到着も待たねばならない状況が続いている。スペインで足止めを食らった新監督は早くとも2月7日まで来日できず、さらにそこから2週間の自主隔離を行わなければならない。
リカルド・ロドリゲス前監督の後を引き継ぐ42歳の新指揮官にとって、2014年以来のトップリーグに臨むヴォルティスの準備を整える上で理想的な状況とは程遠い。
これに対し、新体制にはるかにスムーズに移行できるチームもいくつか存在している。ベガルタ仙台の手倉森誠監督とセレッソ大阪のレヴィー・クルピ監督は古巣への復帰(クルピに至っては4度目)であり、清水エスパルスと契約したミゲル・アンヘル・ロティーナ監督も、その理路整然としたスタイルはセレッソでの過去2年間を通して、すでにJ1の選手やファンたちにお馴染みのものとなった。
浦和のリカルド・ロドリゲス新監督
従ってこの1月の時点では、トップリーグで初めてピッチ上での指導を開始した新顔の監督はロドリゲスが唯一の存在ということになる。ヴォルティスを昨季のJ2優勝に導いたスペイン人監督は、今季から浦和レッズの指揮を任されることになった。
2019年にはJ1参入プレーオフ決定戦で湘南ベルマーレと引き分けて昇格を逃している。しかし、その1年後に栄冠を勝ち取り、4年間に及んだロドリゲス体制の有終の美を飾ることができた。この期間中に彼は魅力的で効果的なプレースタイルをチームに植え付けるとともに、クラブのファンにも愛される存在となった。浦和ではスケールが大幅に異なる任務を課されることになるが、彼自身は数年前から目標としていた新たな挑戦を心待ちにしている。
「非常に楽しみにしている。ビッグクラブであり、野心のあるクラブだ。監督としての私と同じようにね」。12月末にロドリゲス監督は、スチュアート・スミス氏のJトーク・ポッドキャストでそう語っていた。
「私が浦和に対して抱いた最初のイメージは、2016年の(Jリーグチャンピオンシップ)決勝を観た時のことだ。満員のスタジアムで良いサッカーをしていた。私の好むスタイルともある程度同じようなサッカーだった。『いつかこのチームの監督になりたい』と、その時自分に言い聞かせたんだ。4年前に考えていたことだ。今そのチャンスがやってきた」
ストライカーの特徴が重要
その後の期間を通してロドリゲス監督は、ポカリスエットスタジアムのファンに結果とエンターテインメントを届けてきた。ポゼッション時には積極的なプレーを、相手ボール時には高いプレッシングを中心とするのが彼のサッカースタイルだ。
「GKも重要だが、私としてはストライカーの特徴の方がより重要であると考えている。良い守備をするためには一列目が非常に大事であり、チーム全体がそれに続かなければならない。もちろんGKも持ちこたえる必要がある。カミ(上福元直人)にはゴールから離れて守ることができる力がある。そして結局は、チーム全体で守ってチーム全体で攻めることが必要だ。10人だけでなく、11人の選手で。現代サッカーにおいてGKはキープレーヤーだと私は思っている」
ロドリゲス監督が浦和で出会う西川周作もまた、ビルドアップに参加して最終ラインから繋いでいくことに意欲的なタイプのGKだ。そして彼が攻撃陣にどのような組み合わせを採用していくのか、興梠慎三やレオナルドらの選手たちが守備の最初のラインとして、また攻撃の最後のラインとしてどのように機能していくことになるのか興味深い。
「私の仕事は映画監督」
「(ペップ・)グアルディオラや(ホルヘ・)サンパオリ、(マルセロ・)ビエルサから受けた影響も非常に大きかったと思う」とロドリゲス監督は、自身のサッカー哲学について語っていた。「サッカー観戦の時間がある時、私がよく観ているのはこの3人の監督たち(のチーム)だ」
「自分のサッカーのやり方、自分がやりたいと思うサッカーのタイプについては強い確信を持っている。そのやり方を高めていきたい。この信念に基づいて、チームをどうすれば改善できるかを常に考えて求め続けている」
「結局のところ監督の仕事というものは、選手たちをさらに良くして、チームをさらに良くして、そして何よりもサポーターに見応えあるサッカーを見せることではないだろうか。スタジアムに来る人々にはサッカーを楽しんで、チームを観ることを楽しんでほしいと思っている」
「そして楽しむにはどうするべきかと言えば、攻めることだ。チームが攻めるところ、チームがチャンスを生み出すところを見てこそ楽しむことができる」
徳島時代のデータもその言葉を裏付けている。彼が率いた4シーズンのうち3シーズンでチームはリーグ上位3位以内の得点数を記録しており、昨年は最も高いパス成功率(84.7%)、最多のドリブル数(1試合平均13.6回)、そしてゴールチャンスの15.9%を得点に繋げるという最も高い決定率も記録していた。
「チームが(よく)走っていて、ハイプレスをかけている時にこそ、サポーターがそういうタイプの頑張りを評価してくれることが分かった。私の仕事は映画監督や舞台監督のようなものだと考えている。人々に私の仕事を楽しんでほしいと思う」
ロドリゲス監督が彼の新たなクラブと初めて出会った数年前の鹿島アントラーズ戦ほどには、埼玉スタジアムが満員の観客で埋まることは当面ないかもしれない。だが徳島で残したのと同じような結果を浦和のピッチ上でも達成することができたとすれば、レッズサポーターも椅子から身を乗り出しスクリーンに釘付けになることは間違いないだろう。
(文:ショーン・キャロル)
【了】