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バルセロナに現れた最高のコンビとは? シャビ&イニエスタ級の資質も。若き2人が織りなす最高の関係性【分析コラム】

ラ・リーガ第20節、エルチェ対バルセロナが現地時間24日に行われ、0-2でバルセロナが勝利を収めた。リオネル・メッシを出場停止で欠くバルセロナは、若き中盤コンビが躍動。ペドリとフレンキー・デ・ヨングは、過渡期を迎えるバルセロナの新たな顔になるための資質を秘めている。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

メッシ不在と過密な日程

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【写真:Getty Images】

 降格圏に沈むエルチェを相手に2-0。終盤までは追加点を奪えず、楽な勝利ではなかった。しかし、リーグ戦はこれで3連勝となり、7戦無敗で3位に浮上している。

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 試合が難しくなった理由はいくつかある。バルセロナは2021年の年明けから遠征が続いており、7試合続けてカンプノウ以外のスタジアムでプレーしている。直近のコパ・デル・レイ(スペイン国王杯)からは中2日。9日間で3試合をこなしたが、そのすべてが延長戦に突入して120分戦っている。

 さらに、リオネル・メッシがコパ・デル・レイ決勝で一発退場となり、この試合は出場停止となった。ジェラール・ピケ、セルジ・ロベルトら負傷者も多く、ロナルド・クーマン監督は厳しいやりくりを強いられている。2人のセンターバックはこの3試合すべてに先発しており、クレマン・ラングレにはエルチェ戦に休養が与えられた。

 今季2度目の先発起用となったサミュエル・ウンティティのパス成功率は97.3%。109本中106本を成功させているが、パス成功率は高ければいいというものではない。そのほとんどが横や後ろへのパスだった。

 最終ラインで横につないでいるだけのパスは意味がない。ペップ・グアルディオラも「パスワークを目的とするすべてのプレーを嫌う。ティキ・タカのことだ」と言っている。ボールを持っても前に運ぶことができず、ロナルド・アラウホとの息も合わなかった。最終ラインから攻撃を組み立てられず、攻撃は単発になっていた。

バルセロナを象徴するペドリの働き

 バルセロナの変遷を辿ると、常に優秀なMFがいたことを思い出す。ライカールト時代はデコとシャビ・エルナンデスが、グアルディオラ時代はデコに代わってアンドレス・イニエスタがシャビとともに攻撃の舵を取った。シャビがベテランの域に差し掛かると、イバン・ラキティッチがその枠に収まっている。

 デコとイニエスタではタイプが違うし、シャビとラキティッチでも担う役割は異なっていた。イニエスタとシャビがコンビを組んでいたときは澱みなくパスをつなぎ続けるスタイルが看板となっていたが、ラキティッチがプレーした時期は直線的な攻撃も組み込まれるようになっている。しかし、どの時代も彼らの特徴がチームとしての戦い方を決めていた。

 中盤に定着した新加入のペドリは、今季のバルセロナのスタイルを象徴するかのような躍動を見せている。

 本名はペドロ・ゴンザレスで、テネリフェ島の出身。かつてバルセロナでプレーしたペドロ・ロドリゲスと同郷だが、ペドリのアイドルはアンドレス・イニエスタだった。華奢な身体で相手のライン間にポジションを取り、正確なテクニックでボールを捌いていく。その姿は往年のイニエスタと重なる。

 バルセロナは守備への意識が高く、エルチェのシュートをわずか4本に抑えている。バルセロナはボールを失ったときの反応が早く、即時奪回のためのプレッシングが機能した。

 87分に下がったペドリの走行距離は11kmを超えた。オフ・ザ・ボールでも最適なポジションを取るために動き続ける。常にボールホルダーの近くにいるペドリは、チームがボールを失った際のファーストディフェンダ―としても活躍する。まさに攻守両面で多大な貢献をもたらすMFとなっている。

シャビとイニエスタのような最高のコンビ

 ペドリの相棒を務めるフレンキー・デ・ヨングはカメレオンのような選手だ。アヤックス時代も、オランダ代表でも、そして昨シーズンともプレースタイルが微妙に異なる。明確に違うわけではないが、少し違う。あらゆる能力に秀でているので、様々なタスクを担うことができる。ペドリの相棒を務める今季はいきいきとプレーしているように見える。

 守備ブロックの後ろでボールを散らすのはブスケッツの役割で、ペドリはライン間でボールを引き出している。攻撃を組み立てる役割から解放されたデ・ヨングは積極的にボックス内へと顔を出す。デ・ヨングはこの試合で2得点に絡んだ。

 1点目はセンターサークル付近でボールを受けて前を向き、ペドリにボールを預けた。左サイドに展開されると、マルティン・ブライスワイドがDFラインとGKの間にボールを入れ、アントワーヌ・グリーズマンがゴール前に飛び込んだ。DFが一瞬先にボールに触ったが、最後はデ・ヨングがボールを押し込んでいる。

 2点目は右サイドのハーフスペースでボールを受けると、そのままドリブルで深い位置まで切り込んだ。浮き球の折り返しを頭で押し込んだのは、ペドリに代わって入ったリキ・プッチ。トップチームデビューから約2年、初得点はデ・ヨングのダイナミックな持ち上がりから生まれた。

 データサイト『WhoScored.com』の集計で、ペドリはチーム最多となる4本のキーパスを成功させた。一方、ボックス内でのボールタッチでデ・ヨングはブライスワイト、グリーズマンに次ぐ6回で、ゴール前への積極的な侵入が目立っていた。

 プレーのクオリティが高いのは前提として、ペドリとデ・ヨングは互いの長所を活かしあっている。タイプは異なるが、補完関係を築く2人はシャビとイニエスタのような最高のコンビになるかもしれない。過渡期を迎えるバルセロナにおいて、2人は復権の旗頭になる資質を秘めている。

 今季限りで契約満了となるメッシはアスレティック・ビルバオ戦で退場処分を受け、21日のコパ・デル・レイとこのエルチェ戦は出場停止となっていた。図らずも訪れたメッシ不在の状況で、2人の若き司令塔はバルセロナの新たな象徴となりうる可能性を示した。

(文:加藤健一)

【了】

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