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ルベン・ディアスが絶好調をけん引
マンチェスター・シティが絶好調だ。
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現地20日にプレミアリーグ第1節の延期分が行われ、アストン・ヴィラを2-0で下して公式戦9連勝。負けなしは16試合継続している。
セルヒオ・アグエロやガブリエウ・ジェズスらストライカー陣に負傷離脱などもあって本調子でないなか、勝ち続けられている大きな要因は守備にある。9連勝の間に喫した失点はわずかに2つだけと抜群の安定感を誇っている。
そして、最近のシティでは攻守の切り替えに対する意識が劇的に高まっている。特にボールを失った瞬間、攻撃から守備にスイッチを切り替えるまでのスピードがとにかく速い。展開に応じて前からボールに対してプレスをかけにいくのか、一旦自陣に撤退するのかの判断も洗練されてきた。
こうした守備意識の向上は、もちろんペップ・グアルディオラ監督らスタッフ陣からのアプローチによるものかもしれないが、ピッチ上におけるディフェンスリーダーが確立されたことも大きく影響していると感じている。
昨夏、6800万ユーロ(約82億円)という高額な移籍金を支払ってベンフィカから獲得したポルトガル代表DFルベン・ディアスは、すぐさま守備の要となり獅子奮迅の活躍を披露している。
シティを率いるペップ・グアルディオラ監督もアストン・ヴィラ戦前の記者会見で「彼のリーダーシップはとてつもなく大きい」とルベン・ディアスを絶賛した。
「彼は(アディショナルタイムも含め)95分間、自分がやらなければならない全てのアクションを実行し、サイドバックやアンカーのチームメイトたちが常に集中を保てるよう働きかける能力を持っている。23歳であれほどの選手を見つけるのは難しい」
ディフェンスラインにどっしりと構え、試合開始から終了まで絶えず大声を張り上げて味方を鼓舞し、的確に動かし続ける。もちろん空中戦の強さや危機察知、カバーリングなどの能力も優れているが、ルベン・ディアスが見せるリーダーとしての自覚や守備陣を統率する能力の高さには目を見張る。
前所属のベンフィカでは重鎮のジャルデウが不在の際にキャプテンマークを託されていた。年上の選手も他に多くいたが、そのなかでもチームリーダーの1人として認められていた証拠だ。
コンパニと比較されるが…
一部にはシティでヴァンサン・コンパニの後継者になれるとの見方もあるようだが、ルベン・ディアスには偉大な元キャプテンにはなかった肉体的な頑強さも備わっている。2019/20シーズンはベンフィカで2番目に多い公式戦48試合に出場し、ほぼフル稼働でピッチに立ち続けた。
シティでもすでにプレミアリーグ16試合、UEFAチャンピオンズリーグで4試合、カラバオカップ(リーグ杯)で2試合、FAカップで1試合の合計23試合に出場している。ベンフィカで開幕直後に出場した3試合も加えると、約半年で26試合に出場していることになる。トップレベルでほぼ怪我なく年間50試合ペースに耐えうるタフさはルベン・ディアスの大きな魅力の1つだ。
だが、ベンフィカでもシティでもポルトガル代表でも若くして中心を担うにあたり、最も重要だったのは彼の「賢さ」ではないだろうか。
ポルトガル代表でコンビを組むDFぺぺは、『トリビュナ・エクスプレッソ』で最近公開されたインタビューのなかで、ルベン・ディアスについて「すでに世界最高のポルトガル人センターバックになっている」と述べたうえで「とても、とても、とても賢い。サッカー選手の質という意味を除いても、彼はスーパーマンだ」と称賛した。
「ロシアワールドカップの合宿中、彼はディナーになると常に僕のところに話を聞きにきたのをよく覚えている。いつも僕やクリスティアーノ・ロナウドらと一緒にいて、話に耳を傾け、時にはアドバイスも求めた。ずっとくっついて回るから『ネズミ』と呼んでいたくらいだ。でも、彼が僕にリスペクトを示してくれたのと同じように、僕も彼のことを尊敬している」
レアル・マドリードなど名だたるビッグクラブで実績を積み重ねてきた大先輩たちから学んだことを、ルベン・ディアスは自らの成長の糧にしてきたはずだ。何事にも貪欲に取り組み、謙虚な姿勢で新しいことを吸収しようとする姿勢はシティでの挑戦にも生かされている。
にじみ出る自信、勝ち取った信頼
もう1つ、ルベン・ディアスの「賢さ」を象徴していたエピソードがある。シティ移籍後最初のインタビュー動画で、彼は流暢な英語を披露したのだ。
ポルトガル人選手には、若くして国外移籍などを経験した特別な場合を除いて英語話者が少ない。国内リーグにやってくる外国籍選手もブラジル人選手が大半で、他はスペイン語を母語とする南米人選手が中心。ほとんどポルトガル語のみで事足りてしまう環境でもある。
にも関わらず、ルベン・ディアスはイングランド移籍前からしっかりとした英語を身につけていた。それによって最初から周囲との意思疎通に壁がなく、ピッチ内外でしっかりとコミュニケーションを取れる素養があった。
「僕は若い。でも、選手としてのキャパシティは若さによって評価されるものでもないと持っている。もちろん僕はまだ23歳だけど、すでに何年もトップレベルでプレーしてきた。だから同じ23歳の他の選手たちよりも(高いレベルに挑戦する)準備はできていると思う」
シティ移籍直後のインタビューで、ルベン・ディアスは的確な自己分析を披露した。幼少期に習っていた空手で自分自身をコントロールする術を学び、ベンフィカという最高の環境でサッカー選手となってキャプテンも任され、ワールドカップをはじめとした数々の国際舞台も経験している。確かに他の23歳の選手と比較しても経験値では群を抜いている。
すでにベテランのような風格すら漂わせるシティの新たなディフェンスリーダーには、周りからも厚い信頼が寄せられる。センターバックでコンビを組むジョン・ストーンズは「ルベンは素晴らしいよ。彼はここにきて以来、多くの称賛に値するものを見せてきた。プレミアリーグにもうまく適応していると思う」と、すでに心酔している。
「彼の横でプレーできるのば僕にとっても素晴らしいことだし、ピッチの中でも外でもいい関係を築くのは簡単だったね。意気投合したよ。そうなればフットボールも楽しくなるし、彼と一緒にプレーするのを心の底から楽しめている」
プレミアリーグでもトップレベルのフィジカルやテクニック、さらにはピッチ内外での人間性も一級品。ルベン・ディアスは誰もがワールドクラスと太鼓判を押す、一流のセンターバックとしてシティの守備陣を力強く支える。
「僕は勝ちたいと望み、勝てるチームにいたい。ベンフィカでもポルトガル代表でも、常に毎試合勝つために戦ってきた。もちろんベンフィカは(プレミアリーグとは)違うリーグで、競争力も落ちる。でも、メンタリティは同じだ。挑戦がより大きなものになるのは当然で、僕はそれを求めてきた。シティならそういう大きな挑戦を僕に与えてくれると思う。だからこのクラブに来られて幸せだ」
23歳のポルトガル代表は移籍直後のインタビューでこのように語っていた。追い求めるのは常に勝利。いままさに絶好調のチームをけん引するだけでなく、今後も長くシティで活躍を続け、ゆくゆくはコンパニを超えるクラブのレジェンドになっていても驚きはない。
(文:舩木渉)
【了】