ハーランドは沈黙
ドルトムント加入後、ブンデスリーガ25試合目で25得点をマークしたアーリング・ハーランドは、2試合連続でノーゴール。普通のストライカーにはよくあることだが、ハーランドとなると話は変わってくる。
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前節のマインツ戦ではシュートが1本。前線で孤立してチャンスにほとんど絡むことができなかった。レバークーゼン戦ではチャンスがいくつかあったが、2本のシュートはいずれも枠を捉えられなかった。
ハーランドという得点源が沈黙したドルトムントは、マインツ戦に続いて先制点を許している。レオン・ベイリーがDFラインの裏にロングパスを蹴ると、これをトラップしたムサ・ディアビが左足で決めた。
引き分けたマインツ戦と同様、ドルトムントは後半に追いついたが、試合終盤に落とし穴が待っていた。途中出場のパトリック・シックとディアビのパス交換で左サイドを突破すると、ディアビのラストパスは中央を駆け上がるフロリアン・ヴィルツの下へ。ペナルティーアーク付近から右足を振り抜くと、ボールはゴールネットを揺らした。
若手の活躍が目立つレバークーゼン
ドルトムントに勝利したレバークーゼンは、前半戦を3位以内で終えることが確定した。
開幕から3試合連続で引き分けが続いたが、12節までは無敗をキープ。過密日程の影響で勢いのないバイエルン・ミュンヘンを尻目に、一時は首位に躍り出ている。12月にはいって負傷者が続いて連敗を喫したが、3位以内での折り返しは上出来と言えるだろう。
攻撃の中心だったカイ・ハフェルツとケビン・フォラントが夏に抜けたレバークーゼンの下馬評は決して高くなかった。しかし、若い選手たちの活躍がチームを支えている。
21歳のエドモン・タプソバは昨冬の加入からすぐにレギュラーに定着。今季は序盤でヨナタン・ターをおさえて先発起用が続き、今季限りで引退するスヴェン・ベンダーに代わって不動の地位を築いている。
ドルトムント戦で全得点に絡んだディアビもまだ21歳。パリ・サンジェルマンの下部組織出身で、19年夏に加入。昨季は途中出場が多かったが、今季はここまで全試合に先発して3得点4アシストをマークしている。
最年少出場記録を更新した17歳
若手が躍動するチームの中にあって、ヴィルツはひと際若い。17歳で、まだ学校にも通っている。昨年1月にケルンの下部組織からレバークーゼンに移籍すると、17歳の誕生日を迎えた15日後にブンデスリーガデビュー。ハフェルツが持っていたクラブ史上最年少出場記録を塗り替えている。そこから20日足らずで、王者バイエルンを相手に当時のリーグ最年少得点記録を更新している。
今季は開幕からレギュラーとしてプレーするヴィルツは、ここまで公式戦20試合で6得点6アシストという結果を残す。4-3-3のインサイドハーフを主戦場に、攻撃においては欠かせない存在としてチームに刺激をもたらしている。
レバークーゼンでのハフェルツの活躍には目覚ましいものがあったが、ヴィルツの才能はそれに匹敵する。デビュー当初のハフェルツがそうだったように、テクニックやキックの精度はすでにブンデスリーガでもトップレベルにある。ハフェルツに比べれば10cm以上小さいが、優れた身のこなしと当たり負けしないフィジカルの強さがボールキープを可能にしている。
ハフェルツと同様に、ハイレベルな基本技術を活かすための卓越したインテリジェンスがある。認知のスピードと精度が高く、狭いエリアでも的確にパスを繋いでいく。データサイト『WhoScored.com』による1試合平均のキーパス数は2.1本でチームトップ、リーグでも10位につけている。
バイエルン戦では冷静なフェイントからゴールを決めた。ホッフェンハイム戦、ケルン戦での2試合連続ゴールはGKの位置を見て、届かないコースに蹴っている。とっさの判断の素晴らしさはチャンスメイカーとしてだけでなく、フィニッシャーとしても発揮されている。
ハフェルツと重なる存在感
ヴィルツが「今でもお手本」というのは半年間ともにプレーしたハフェルツ。ポジションを引き継いだヴィルツは「カイよりももっとうまくなるためのモチベーションになっている」とチェルシーにステップアップした元同僚に刺激を受けている。
同僚のユリアン・バウムガルトリンガーは「恐れを抱いたり不安をもったりしていない。良い意味で遠慮がない」とヴィルツを評している。16歳も年上のチームメイトは、「ハフェルツもそうだったけど、メンタリティは規格外だ」と活躍の秘訣が精神面にあることを示唆している。
ヴィルツは膝を痛めたことで公式戦3試合を欠場。ドルトムント戦で復帰を果たした。チームはヴィルツが不在だったブンデスリーガ2試合で1得点しか奪えなかったが、復帰したドルトムント戦は攻撃が活性化した。
レバークーゼンというブンデスリーガの強豪クラブで主力を張れるのは、ヴィルツが単に才能を持っているからではなく、それに相応しいプレーを見せているからである。ドルトムント戦は苦しむチームを救う大黒柱としての活躍を見せた。瞬く間にレギュラーとなり、攻撃のタクトを振る姿はハフェルツと重なる。
レバークーゼンは後半戦の出だしから山場を迎える。23日にはホームでヴォルフスブルク、30日にはアウェイでライプツィヒと対戦。怪我人も徐々に戻ってきており、ボス監督の選択肢も増えるだろう。17歳の新鋭が上位対決でどのような結果を残すのか。今季のサプライズはまだまだ続いていく。
(文:加藤健一)
【了】