9試合ぶりの勝利
ここ最近、引き分けが続いていたボローニャだが、第17節のジェノア戦で久々に勝ち点を落とした(0-2)。「敗戦は妥当ではないが、結果に対する責任は担わなければならない。彼らは全員で守備に徹し、我々にはビハインドに陥った後、相手の守備を崩すためのクリエイティブさが求められたが、実現できなかった」とシニシャ・ミハイロビッチ監督は試合後に話していた。
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ジェノア戦を落としたことで、ボローニャはリーグ戦8試合未勝利となった。相変わらず失点数が減らず、リードを奪われることも多く、それらをカバーできるだけの攻撃力もない。なかなかストロングポイントを見つけられない、厳しい状況が続いていた。
しかし、セリエA第18節、ホームでのエラス・ヴェローナ戦では、今季の大きな課題だった部分で相手を上回り、久しぶりの勝ち点3を手に入れることに成功している。
開始わずか30秒でムサ・バロウがシュートを放つなど幸先良いスタートを切ったボローニャは、その勢いのままヴェローナを押し込んだ。すると17分にロベルト・ソリアーノがPKを獲得。これをリッカルド・オルソリーニが冷静に流し込んで1-0とリードを奪った。
その後は一進一退の攻防が続いたが、中盤におけるデュエルで勝っていたのはボローニャ。全体をコンパクトに保ち、サイドに流させたり、ロングボールを蹴らせたりとプレーを限定させ、ボール支配率を高めることに成功していた。結局、前半ヴェローナに許したシュートはわずか1本だった。
後半の序盤はより前に出てきたヴェローナに苦戦。63分には不十分なクリアからビッグチャンスを与えている。守護神ウカシュ・スコルプスキのファインセーブがなければ、勝ち点2を落としていたかもしれない。
それでも、その後のボローニャ守備陣は安定感を披露。前半同様、選手間の距離を空けすぎず、ダブルボランチの一角イェルディ・スハウテンを最終ラインに落として5バック気味にするなど工夫を凝らし、リーグ戦9試合連続得点中のヴェローナにゴールを許さない。終盤には猛攻を受けたが、最後まで崩れることはなかった。
「我々の方が良いチームだった。相応しい勝利だ。パフォーマンスは常に発揮した。激戦を一致団結して戦い抜いたチームを見ることができた」と話したのはミハイロビッチ監督。無失点で9試合ぶりの勝利を収めることができた意味は、ここからの巻き返しを狙うボローニャにとって決して小さくないだろう。
クリーンシートの立役者は文句なしで…
0-2で敗れたジェノア戦の後、ボローニャの闘将は「我々には二桁のゴールを挙げられるストライカーはいない。自分たちで掴んだ全てのチャンスを生かすには、点取り屋がいた方が良い」とコメントを残していた。
冒頭でも記した通り、ボローニャに攻撃力があるとは言い難い。このヴェローナ戦でも良い形でボールを奪いながら、焦ってダイレクトパスを入れたことでミスが起きたりと、もったいないシーンがいくつかあった。最終的にシュート数は20本を記録したが、奪えたのはPKによる1点のみ。決定力という部分の課題を残したことは明らかだ。
それでも勝利を奪うことができたのは、やはり守備陣の奮闘があったからに他ならない。そして、その中心にいたのは、日本代表DFの冨安健洋だ。
ここ最近サイドバック起用が続いていた冨安だが、この日は左センターバックで出場。対峙したのはかつてミランやアトレティコ・マドリードでもプレーし、ズボニミール・ボバンに「怪物のようだった」と評価されたこともあるニコラ・カリニッチ、そしてツーシャドーの一角に入ったアントニン・バラクだった。
ダニーロとコンビを組んだ背番号14は立ち上がりから集中した守備を披露し、最終ラインに安定感をもたらしている。15分にはパスカットからマイボールへと持ち込み、オルソリーニの決定機を生むきっかけとなっていた。
DFとして多くの武器を持つ冨安だが、この日目立ったのは読みの鋭さや判断力の良さだ。多少のリスクは覚悟の上で相手より先に動いたり、的確なカバーリングでピンチを早い段階で防いで攻撃へとつなげる。こうした仕事をハイレベルに行い続けていた。
たとえば39分の場面では、冨安の冷静な判断力がピンチの芽を摘んでいた。
ヴェローナDFジャンジャコモ・マニャーニがボールを持つと、カリニッチが冨安の前(ダニーロの背後)へランニング。当然ダニーロはカリニッチの姿が見えていない。しかし、相手を目で確認している冨安はダニーロとラインが合っていると判断し、あえてカリニッチをフリーに。つまり、走るカリニッチに付いていかず、オフサイドラインを下げなかったのだ。
結果的にマニャーニからペナルティーエリアの角を取ったカリニッチへパスが通ったが、冨安が直前に走るのを止めたことでオフサイドに。細かいシーンではあるが、マイボールへ持ち込むという意味ではかなり効果的なプレーだった。
その後も冨安はあらゆる場面でカリニッチを上回り、決定的な仕事を与えることはなかった。結果的にクロアチア代表FWはシュート1本で69分にベンチへ。個人の対決は冨安の完勝だったと言っていいだろう。
またもフル出場を果たしたサムライはデータサイト『Who Scored』内で「7.8」と高レーティングを獲得。パス成功率は64%と低かったが、空中戦勝利数8回(全体1位)、タックル成功数2回(チーム内3位タイ)、インターセプト数4回(全体2位)、クリア数3回(チーム内1位)を記録。申し分ない数字だ。
ミハイロビッチ監督はヴェローナ戦の冨安を「ファンタスティックだ」と評価した。さらにイタリア各紙も冨安には高評価を与えているようだが、それに対し文句を言う人はいないだろう。それほど冨安の輝きは他の選手を上回っていた。
ズラタン・イブラヒモビッチやロメル・ルカクなど、世界的ストライカーにこそ力の差を見せつけられたが、その悔しさをバネに冨安は着実に成長しているように思う。今後も背番号14はボローニャの中心として日本に良い知らせを届け続けてくれるだろう。
(文:小澤祐作)
【了】