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トリノとすぐに再戦
トリノとは3日前に対戦したばかりだった。その試合では前半に奪った2得点を守り切り2-0で勝利したが、今回はかなり厳しい戦いを強いられた。
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負傷から回復したズラタン・イブラヒモビッチやサンドロ・トナーリらが先発に入っていたミランだが、立ち上がりはスローテンポ。軽率なミスも目立つなどトリノのゴールを脅かすことができず、静かな時間を過ごしていた。
普段は苦しい状況でもゴールをこじ開けることができるイブラヒモビッチだが、この日はボールが収まらず、珍しく前線で孤立。3日前のリーグ戦同様、守備時5-3-2の陣形を組むトリノを崩すのに相当手を焼いていた印象だ。
結局ミランは前半で3本しかシュートを放つことができず、イブラヒモビッチに関しては枠外シュート1本に留まった。支配率でもトリノを下回るなど、なかなかギアを上げることができなかった。
イブラヒモビッチやサム・カスティジェホを下げて挑んだ後半はペースが上がりシュート数も増えたが、GKヴァニャ・ミリンコビッチ=サビッチのセーブなどもあり得点が遠い。少しでも負担を減らすべく90分間で決着をつけたいところだったが、勝負はスコアレスのまま延長に突入した。
延長戦もミランが押し込む時間こそ続いたが、相変わらずゴールネットを揺らす音は聞こえてこない。今季のセリエAで得点力の高さを見せつけているミランだが、結局120分間を無得点で終えることになった。
PK戦はトリノの4人目トマス・リンコンが失敗。対してミランの選手は全員が成功したことで何とか次ラウンドへ駒を進めることができた。しかし、120分間を費やしてしまったことは、少し痛いと言えるかもしれない。
トリノ戦でトップチームデビュー
さて、このトリノ戦ではある一人の選手が見事トップチームデビューを果たしている。その人物とは、背番号92番を身に着けていたジャコモ・オルザールである。
2001年4月14日生まれの19歳は、ミラン・プリマヴェーラ(下部組織)で最も将来有望で興味深い才能を持った一人と言われている。身長188cmと大柄ながら足元の技術がしっかりしており、優れた戦術眼と高い決定力も兼備。周りからはアタランタのヨシップ・イリチッチに「似ている」と評されているようだ。また、センターフォワードからトップ下、インサイドハーフまでこなすなど、実に万能。ちなみに本人の希望はより自由にプレーできる中盤だと話している。
そんなオルザールの両親は元バレーボール選手。長身とスポーツへの情熱は、親譲りということなのだろう。ただ、母親はやはりバレーボールの道に進んでほしかったのだろうか、「サッカー選手になることは難しい」と幼少期の同選手に言っていたという。
しかし、オルザールにとって祖父の存在が大きかった。よく試合観戦に連れて行ってくれたようで、サッカーへの情熱を注ぎ続けてくれたと話している。もし祖父の存在がなければ、オルザールは今頃バレーボールプレーヤーとしての人生を歩んでいたかもしれない。
出身地のロヴェレートでサッカーを始めたオルザールは、その後キエーボでプレー。当時すでに大きな注目を集めており、とくにミラン、ユベントス、バルセロナが獲得に熱心だったようだ。ただ、オルザールの中では2択。ミランとユベントスのどちらかに新天地候補を絞っていたようだ。
そして、同選手はミランを選んだ。理由はサッカープレーヤーとして、人間としての成長を強く約束してくれたからのよう。こうして当時ミランのチーフスカウトだったマウロ・ビアンチェッシ(現ラツィオのスタッフ)に連れられ、彼はミランの一員となった。その時のことを同選手は「僕はいつもミランを応援していた。夢を叶えた」と話していた。
U-17チームに所属したオルザールは、2017/18シーズンのリーグ戦で25試合に出場し9得点といきなり活躍。2018年からはU-19チームへ昇格し、昨シーズンは怪我などもありながらリーグ戦12試合で5得点4アシストを記録していた。
こうして評価を高めたオルザールは、トップチームからも声がかかるようになり、出番こそなかったがセリエAやコッパ・イタリアでベンチ入りを経験。「トップチームでトレーニングすると強度とペースがどれだけ変化するかがわかる」とレベルの違いを体感しながら日々成長している。
ちなみにトップチームではアルゼンチン代表MFルーカス・ビリア(現ファティ・カラギュムリュク)からよくアドバイスを受けていたようで、トレーニングなどで違いを生むためにそれらを役立てていたと話している。
また、オルザールはイブラヒモビッチにも言及。「彼はトレーニング中であっても全員をより高いレベルに押し上げた。彼は見ものだ。いつも遠くから彼を研究しているよ」とベテランストライカーの存在感の大きさを話していた。
そして現地12日のトリノ戦で念願のトップチームデビュー。延長後半からの出場と時間が短くインパクトを残せたとは言い難かったが、本人にとってはかけがえのない時間だったことは間違いない。
クリスティアーノ・ロナウドの仕事ぶりに感銘を受けているが、アイドルは「遅かれ早かれ彼に会いたい」と話すカカ。その偉大なレジェンドに追いつくことができるか。ミランの未来を担うであろう逸材の今後に注目だ。
(文:小澤祐作)
【了】