久保建英は“ぶっつけ本番”で2点に関与
久保建英のヘタフェ移籍が発表されたのは8日のこと。今季終了までの期限付き移籍で、バレンシア州からマドリード郊外に拠点を移すことになった。
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エルチェ戦は10日に予定されていたが、マドリードを襲った大雪の影響で1日順延となった。ヘタフェは前日練習を行うことができなかったが、久保はベンチ入り。練習なしのぶっつけ本番でエルチェ戦に臨むこととなった。
出番は1-1で迎えた65分に訪れた。イバン・マルコーネが2枚目のイエローカードをもらい、エルチェは1人少ない状況となっていた。中盤の底でプレーしていたネマニャ・マクシモビッチに代わってピッチに入った久保は右サイドでプレー。ポルティージョは右サイドからトップ下、トップ下のカルレス・アレニャは中盤の底へとポジションを移している。
新天地デビューからわずか3分、久保は思い切りよく右寄りの位置からシュートを放つ。これが相手GKを強襲し、こぼれたところをハイメ・マタが詰める。久保の投入が逆転につながった。
その後も久保は右サイドから積極的な仕掛けを何度か見せる。84分には右サイドからクロスを上げると、ゴール前でアンヘル・ロドリゲスが倒されてPKを獲得。これをロドリゲスが自ら決めて3点目をゲット。ヘタフェは2点のリードを守り切り、4試合ぶりの勝利を手にしている。
2人の加入に指揮官も満足
ヘタフェはインテンシティの高いフットボールを標榜している。前線からのハイプレスが武器で、高い位置でボールを奪えば直線的にゴールに向かう。全選手の高い守備意識をベースに、ヘタフェは17/18シーズンの1部復帰以降、3シーズン続けて8位以上という成績を残してきた。
しかし、ボルダラスが監督に就任して5季目の今シーズンはここまで13位に沈んでいる。17試合で15得点はリーグワースト3位タイと、得点力不足が成績に響いている。
エルチェは自陣でプレッシャーをかけながら、ブロックを敷いて守った。前半のヘタフェはビルドアップがうまくいかず、敵陣にボールを運ぶことに苦労している。
「私たちに重要な貢献をしてくれる2人の選手の到着に満足しているよ」と、試合後のボルダラス監督はアレニャと久保の加入についてコメントした。「戦術レベルで変更を加えるための多くの選択肢を持っている」と分析している。
アレニャはチームで2番目に多い51本のパスを成功させ、チャンスクリエイトの部分で多大な貢献を見せた。久保が入った後半は中盤の底でボール捌いて相手を押し込む。マウロ・アランバッリ、マクシモビッチとはタイプが違うが、ボールを持つ時間帯が長いゲームでの選択肢としては確実に機能するだろう。
久保建英がヘタフェに適応するには?
「今日はホテル滞在中に、彼(久保)がもしピッチに立つ場合にはどういった貢献できるかを説明した」とボルダラス監督は語った。練習しなくても指揮官の求める役割をピッチ内で表現していたことには、久保のセンスと能力の高さを感じさせた。
アレニャと同様のことが久保にも言える。右サイドでレギュラーとして起用されているアラン・ニョムは、スピードに優れ、空中戦に強い。ヘタフェのサッカーを象徴するようなプレースタイルの選手だが、相手に引かれてしまうとチームとして手詰まりになることがある。
一方で久保はボールを持ったとき、チームにプレーの選択肢を与えてくれる。2点目のように直接ゴールを狙うこともあれば、3点目のように深い位置に切り込んでクロスを選択することもできる。PKとはならなかったが、ドリブルを仕掛けて倒されるシーンもあった。
アンヘル・ロドリゲスやハイメ・マタ、昨季マジョルカで同僚だったクチョ・エルナンデスなど、ヘタフェには多様なFWがいる。使う側の久保の加入は、戦術的な幅を確実に広げてくれるはずだ。
とはいえ、手放しで称賛するのはまだ早い。久保がプレーした時間帯のエルチェは退場者を出しており、ヘタフェは容易に相手を押し込むことができた。数的同数の拮抗した試合で久保がどのようにチームに調和していくのかは、今後の戦いを見ていかなければならない。
気になったのは守備における対応で、相手の左サイドハーフに低い位置までついていき、DFラインに吸収されるシーンがあった。マジョルカ時代やビジャレアルで求められていた動きだが、ヘタフェでは勝手が違う。ポルティージョと比較しても、高い位置でボールを奪いたいヘタフェのサッカーとは逆の動きにも見える。
もちろん、これは久保がヘタフェで全体練習をこなしていないことも影響している。ヘタフェで信頼を勝ち取るには、求められる水準以上の守備を見せられるかどうかが大きく影響するだろう。
(文:加藤健一)
【了】