3連勝のアーセナルとは別物だった前半
昨年の12月26日、チェルシーに勝利したのを皮切りに、アーセナルは自信を取り戻しつつある。リーグ戦では3連勝と好調を維持しながら、1月9日、ニューカッスルとのFAカップ3回戦に臨んだ。
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このニューカッスル戦でミケル・アルテタ監督は、大胆なローテーションを慣行。1週間前のウェスト・ブロムウィッチ戦から、ピエール=エメリク・オーバメヤンとキーラン・ティアニー、パブロ・マリ、そしてGKベルント・レノを除く7人の選手を変更。[4-2-3-1]のシステムはそのままだったが、3連勝中のチームとは実質的に別物と言って差し支えないだろう。
特に中盤の3枚は、ウェスト・ブロムウィッチ戦と比べて、ボールを動かしてゲームを作ることができなかった。今回のニューカッスル戦で先発したのは、ダブルボランチがジョー・ウィロックとモハメド・エルネニー、トップ下がウィリアン。
しかし、ウィリアンは好調からは程遠く、そもそもゲームを作る10番タイプではないこともあってか、存在感を示すことはできなかった。ブラジル代表のアタッカーは、どこか手持ち無沙汰で、なかなかボールに触れない。よって前半のアーセナルの攻撃は両サイドに偏り、単調なものになってしまった。
主力投入により改善
そこで後半に入ると、アルテタ監督は、少しずつメンバーを戻していった。リーグ戦と違って、FAカップは5人の交代枠が認められている。56分、リース・ネルソンに代わってエミール・スミス=ロウ。スミス・ロウがトップ下に入り、ウィリアンは左サイドに回った。
続いて66分、ウィロックに代わってグラニト・ジャカ、ウィリアンに代わってブカヨ・サカ。試合は0-0のまま延長に突入し、106分には、ニコラ・ペペに代わってアレクサンドル・ラカゼットが投入される。延長の後半に入って、ジャカと前の4人が、ウェスト・ブロムウィッチ戦のメンバーに戻った。そのままプレスの連動性も改善され、109分、アーセナルはようやく先制点を奪うことに成功する。
ボックスの手前で、スミス=ロウが勝手知ったるサカとの連動したプレスでボールを奪い返すと、そのままアンダー世代の盟友に渡す。サカはラカゼットに浮き球のパス。3人目の動きでボックス内に入っていったスミス=ロウが、再びラカゼットからボールを受け取り、右足一閃。アーセナルは117分にオーバメヤンが決勝点を奪い、2-0でニューカッスルを振り切った。
輝きを放つ“エジル2世候補”
これで昨年末のチェルシー戦から4連勝となった。絶不調のアーセナルが上向き始めた原動力の1つに、スミス=ロウの名前を挙げることができるだろう。下部組織育ちの20歳のMFはUEFAヨーロッパリーグで結果を残し、リーグ戦は件のチェルシー戦で今季初先発。ウェスト・ブロムウィッチ戦でも、今回のニューカッスル戦と同様に、サカ、ラカゼットと見事な連携を見せ、28分のサカのゴールをアシストしている。若者らしく怖いもの知らずの勢いで、トップ下で10番タイプの輝きを放っている。
アルテタ監督も、この“エジル2世候補”の重要性を強調した。試合後のコメントで、スミス=ロウに対して次のように言及している。
「スミス=ロウのパフォーマンスは、私たちが彼を信頼し、彼はとても上手くプレーしてチームの中でますます重要になっていることを意味している。彼にもっとボックス内に入ってさらに脅威になるように要求したが、今日、彼は私たちにとって本当に重要なゴールを決めたね」
苦境を完全に脱する救世主の役割まで求めることは、さすがに荷が重すぎるか。しかし、他ならぬメスト・エジルも認めているように、スミス=ロウの成長が、後半戦のアーセナルの浮沈に影響を及ぼすことは間違いなさそうだ。
(文:本田千尋)
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【了】