チェルシーのビルドアップを封じたマンC
マンチェスター・シティの複数の選手に新型コロナウイルスの陽性反応が出たとして、28日に予定されていたエバートン戦が中止に。年明け初戦となったチェルシー戦は無事開催されたものの、ガブリエル・ジェズスとカイル・ウォーカーに加え、エデルソン、フェラン・トーレス、エメリク・ラポルテ、ナタン・アケらがベンチを外れている。
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最終ラインから攻撃を組み立てるチェルシーに対し、シティはむやみにプレスをかけることをしなかった。ケビン・デ・ブライネはアンカーのエンゴロ・カンテをマークし、両ウイングはサイドバックへのパスコースを消しながらセンターバックにアプローチ。インサイドハーフの2人はハーフスペースを埋めながら相手のセンターバックの前に立った。
ボールが相手のインサイドハーフに出れば、シティのインサイドハーフが寄せ、ウイングはサイドバックのパスコースを消す。ここを剥がされてもシティはDFラインの前にロドリが立ちはだかり、チェルシーの3トップに対して4バックが数的優位を保っている。
チェルシーの攻撃はクリスティアン・プリシッチや途中出場のカラム・ハドソン=オドイらの個人技に依存。シュートは9本放ったものの枠内シュートはわずか2本で、この試合がプレミアリーグデビューとなったザック・ステッフェンを脅かすシーンをほとんど作れず。守備の局面におけるシティの策略は見事にはまっていた。
秀逸だった5人の「8番」
苦しい台所事情の中でペップ・グアルディオラ監督は8番(インサイドハーフ)の選手を4人もピッチに立たせた。3トップの中央にデ・ブライネ、左にはフィル・フォーデン、アンカーのロドリの両脇にはイルカイ・ギュンドアンとベルナルド・シウバを起用。これがこの試合で功を奏した。
ベルナルド・シウバは右サイドでパスを捌きつつ、スターリングやジョアン・カンセロとポジションを交換しながら相手のブロックにギャップを作った。カンセロは右サイドバックだが、攻撃時はインサイドハーフのポジションでチャンスを演出している。
ギュンドアンはいつもと変わらず的確なポジショニングでロドリやデ・ブライネをサポート。先制点のシーンのようにボックス内への飛び込みも見事だった。フォーデンは左サイドに開いて相手のブロックを広げたかと思えば、ボックス内に入り込んでいく。デ・ブライネは縦横無尽に動いてボールを引き出して起点となった。カンセロを含めればシティは5人の8番がいて、それぞれのタスクを高いレベルで実行していた。
似た特徴を持つ選手を多く起用するとチームとしてのバランスが崩れることもあるが、彼らは異なる役割を背負っていたので、そうはならなかった。彼らは本業をこなしつつ、適宜ポジションと役割を交換することで、チェルシーを困難に陥れていた。
チェルシーの穴
ボールを持ったシティは右サイドから攻撃を組み立てていた。データサイド『Whoscored.com』の集計では、ロドリの108回に次ぐボールタッチ数を記録したのは右サイドバックのジョアン・カンセロで85回。右インサイドハーフのベルナルド・シウバも84回を記録していた。
しかし、シティが右サイドから攻撃を組み立てていたのはチェルシーをおびき出すための餌で、1点目と2点目は左サイドから奪っている。シティはフォーデンがマッチアップするセサル・アスピリクエタをくぎ付けにし、オレクサンドル・ジンチェンコとデ・ブライネがその周りのスペースを自由に使った。
チェルシーの右サイドには問題があり、およそ1か月ぶりに出場したハキム・ツィエクはプレスバックが遅れることが多かった。3分間で2点を取った時点でシティに勝負ありという試合だった。
先制点のシーンを振り返ると、ゴールを決めるまでにシティは50秒間で15本のパスをつないでいる。2点目はゴールの直前に1度はカットされたが、40秒間で15本のパスをつないだ。ボール保持率では下回ったが、2つのゴールはいずれもボール保持の局面からだった。
チェルシーとシティの差は、ボールをつなぐ目的の違いだったかもしれない。シティはボールをつなぐことでチェルシーの選手を動かし、穴になっていたチェルシーの右サイドを突いた。一方でチェルシーはシティのブロックを最後まで崩すことができなかった。
グアルディオラはポジショナルプレーの信奉者であって、ポゼッションに固執するわけではない。ボール保持はあくまでゴールを奪うための手段であり、主導権を握るための対処法に過ぎない。離脱者等の状況を見ればシティの方が不利だったが、チームとしての完成度の差が顕著に出た試合だったのではないだろうか。
(文:加藤健一)
【了】