現在のトレンドを牽引するラングニック
現代サッカーにおいて、ヨーロッパのトレンドを牽引しているスペインも、かつてはフィジカルに偏重していた時代があったと聞きます。FCバルセロナでオランダの「トータルフットボール」の考え方が浸透すると、リヌス・ミケルス(元オランダ代表監督)からそれを受け継いだヨハン・クライフ(元FCバルセロナ監督)によって1980年代後半から1990年代初めにバルセロナでドリームチームが誕生し、そして、ペップ・グアルディオラへと受け継がれました。その間フランスからの影響も受け、それがスペイン化し、代表チームも含めて成功を収めました。
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ドイツも1990年代後半に現代サッカーから取り残され、2000年頃の危機的な状況からスペイン、フランス、オランダの良いところを取り入れて自国化に成功しています。また、サッキのゾーンプレスからヒントを得て、「ゲーゲンプレッシング」そして「8秒以内にボールを奪い、10秒以内にゴールへ至る」という縦に速いサッカーを考え出しました。
現代サッカーを取り入れたラルフ・ラングニック(元RBライプツィヒ)はドイツ内に影響を与えただけではなく、現在ヨーロッパのトレンドを牽引する中心になっています。現在では、他のメソッドが入り込む余地がないほど浸透していると言われています。ヨーロッパでトレンドになっている国でさえも、自国の文化にトレンドを取り入れてプレーモデルの自国化に成功しています。
日本のJFAアカデミー福島のモデルとしても知られているINF(クレールフォンテーヌ国立サッカー学院)は「我々は育成モデルを作るにあたり、東欧から多くのことを学んで取り入れた」と話していました。旧ユーゴスラビアの名門クラブ、レッドスターやパルチザンに5年ほど研修に通い、旧ユーゴスラビアのメソッドの中からテクニック教育を学んだといいます。
オシムとバルセロナに影響を与えた「ナントスタイル」
また、70~80年代のフランスリーグでは、日本でも馴染みのあるイビチャ・オシムやバヒド・ハリルホジッチをはじめ、メフメド・バジダレビッチ(元ボスニア・ヘルツェゴビナ代表監督)など、旧ユーゴスラビアをはじめとした多くの東欧出身選手がプレーし、テクニックの面で影響を与えたそうです。
また、あまり知られていないですが、1998年にワールドカップを制したフランス代表にディディエ・デシャンやマルセル・デサイーなど、5名もクラブに在籍経験のある選手を送り込んだFCナントは独自のスタイルを構築し、アカデミー組織「ナント学校」を作り出し、ヨーロッパ中に広げています。この「ナントスタイル」は、オシムやバルセロナにも影響を与えていたようです。
私が2016〜18年までいたオーストリアは、ローカルなレベルからトッププロまで基本的には同じスタイルのサッカーでプレーしていました。唯一レッドブル・ザルツブルクだけはドイツのRBライプツィヒと同じプレーモデルを持っていますが、オーストリアの名門ラピッド・ウィーンやオーストリア・ウィーンなど伝統のあるチームは、独自のカルチャーこそ持てども基本的には変わりのない「オーストリアスタイル」です。育成年代など、下のカテゴリーを見てもスタイルは大なり小なり同じように見受けられました。
「それでは個性がないのでは?」と考える方もいらっしゃると思いますが、個性はそれぞれのチームにいる選手によって異なってきます。同じモデルでも選手が違えば、個性に違いは出るのです。グアルディオラのバルサとバイエルンでは違いがありましたよね。
(文:濱吉正則)
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