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驚嘆のチームが生まれた。リバプールを7点粉砕。アストン・ヴィラとはどんなチームか?【徹底分析・前編】

「プレミアリーグ謀略者たちの兵法」と題してプレミアリーグの監督たちを特集した12/7発売『フットボール批評issue30』から、昨季プレミアリーグ王者リバプールを7-2で圧倒し今シーズン多くのサポーターを驚嘆させた“ヴィランズ”を結城康平氏が掘り下げた記事より一部抜粋して前後編で公開する。今回は前編。(文:結城康平)

text by 結城康平 photo by Getty Images

イングランドとドイツのハイブリッド

アストン・ヴィラ
【写真:Getty Images】

 指揮官ディーン・スミスの求めるハードワークはクラブの文化として醸成しつつあるが、同胞であるダイチとは戦術的な差異も存在する。「タフなチーム」を好むイングランド人指揮官は、激しい中盤の守備からのトランジションゲームを好んでいるのだ。簡単には崩されないような粘り強い守備組織を構築し、相手の嫌がるエリアをカウンターで的確に狙うダイチと比べると、スミスは積極的に自ら主導権を奪おうとするアプローチを好む。

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 そういった意味では、ドイツで一つの流派となったラングニックのような思想と、イングランド伝統の激しさを組み合わせるアプローチが彼の理想だ。ハイラインを保ちながら積極的にボール狩りを狙っていくスタイルは、リスクと隣り合わせだが「ボールを奪ってからのショートカウンター」を常に狙っている。

 特にチャンピオンシップ時代は、相手チームを窒息させるようなハイプレスを最大の武器としていた。プレミアリーグではビルドアップ能力の高いチームが多いこともあり、プレッシングラインを中盤に設定しているゲームも多い。その場合でも左サイドのグリーリッシュは流れの中で前線のプレッシングに参加することが多く、逆サイドのアタッカーは内側に絞っていくことが多い。

 中央でボールを奪おうという意志が強いので、ドイツのプレッシングチームが好むように中盤を圧縮することでスペースと縦パスのコースを消そうとする。ただし、課題となっているのが中盤エリアの連動とエースの存在だ。

キーマンとなる選手は?

 絶対的な存在になっている左サイドアタッカーのグリーリッシュは守備面で自陣に下がることは少なく、逆サイドのアタッカーも極度に中央に絞ってくる。そうなると、サイドからのシンプルな縦パスでボールを前に運ばれやすくなってしまう。プレッシャーの甘くなったサイドバックのスペースから縦にボールを供給され、ダイレクトパスで中央に折り返されると危険な場面を作られてしまうことも少なくない。同時にサイドから揺さぶられると中盤の練度が低くなり、相手の縦パスを消し切れなくなってしまう。

 サウサンプトン戦では徐々に守備の組織力が低下し、バイタルエリアに入った相手に慌ててタックルしてしまう場面が目立った。ジェームズ=ウォード・プラウズのようなフリーキックの達人がいるサウサンプトン相手では、そのような守備は致命傷になってしまう。

 強豪チームとの対戦を考えれば、そのようなリスクマネジメントは1つのカギとなる。どのように危険なゾーンを防ぐかを考えながら、ハイプレスのタイミングを精査していく必要がありそうだ。

 最後尾にはアーセナルから獲得した、エミリアーノ・マルティネスを起用。昨シーズンはレノの離脱時にアーセナルで好パフォーマンスを連発した28歳は、自らのリズムに乗るとビッグセーブを連発する。足下の技術には改善の余地もあるが、長いボールを蹴ることが多いアストン・ヴィラでは大きな問題にはならないはずだ。

(文:結城康平)

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30号_表紙_fix

『フットボール批評issue30』


定価:本体1500円+税
プレミアリーグ謀略者たちの兵法

≪書籍概要≫
監督は謀略者でなければならない。それが世界最高峰の舞台であるプレミアリーグであればなおのことだ。さらに中堅以下のクラブを指揮している場合は、人を欺く行為こそ生存競争を勝ち抜くために必要な技量となる。もちろん、ピッチ上における欺瞞は褒められるべき行為で、それこそ一端の兵法と言い換えることができる。
BIG6という強大な巨人に対して、持たざる者たちは日々、牙を研いでいる。ある監督は「戦略」的思考に則った「戦術」的行動を取り、ある監督はゾーン主流の時代にあえてマンツーマンを取り入れ、ある監督は相手によってカメレオンのように体色を変え、ある監督はRB哲学を実装し、一泡吹かすことだけに英知を注ぐ。「プレミアの魔境化」を促進する異能たちの頭脳に分け入るとしよう。



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【了】

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