選手がピッチでイメージを共有できる
2016年は3バックにする以前から、局面で数的優位を作り出してボールを前進させるビルドアップを実践してきました。CBと相手FWが2対2の同数なら、ボランチが下りて数的優位を生み出すわけですが、このボランチの動きは、プレスをかけようとする相手FWを困らせています。
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さらに最終ラインで空いた1人がボールを中盤へ持ち運べば、相手は誰が対応するべきか迷い始めます。あるいは、その場所を使わなかったとしても、そこに相手が守備のパワーを割いたのなら、どこかほかの場所で数的優位が生まれているはず。そのようにして《良い立ち位置》がチームの利益になっていることを、全員が理解し、共有することが大切です。
そして、最終的には誰かが完全にフリーで、なおかつ、ゴールに向かってスピードに乗った状態でボールを引き出していく。究極の理想は、相手GKと2対1になることです。それを外せば最終的にゴールマウスに対して1対0。無人のゴールにボールを入れるだけという状況です。
もちろん、それは理想なので、相手GKと1対1の状況も、あるいは、相手CBと1対1の状況も、チームにとっては充分な利益です。そこからの逆算として、まずはチーム全体で《良い立ち位置》を取り、相手を困らせることが必要になるわけです。
実はここまで詳しく、選手に言葉で説明したことはありませんでした。それはなぜかと言うと、言葉ばかりになって机上の空論になるのは絶対に嫌だったから。何より、選手がピッチでイメージを共有できたからです。
《立ち位置》の原則に基づくということ
たとえば、トレーニング中によく起きていた現象で言えば、シャドー、あるいは1トップが《良い立ち位置》を取るからこそ、相手DFが中央に集まり、最終的には外からWBがフリーでスピードアップできます。
相手を困らせ、数的優位を生み出し、ゴールに迫る。これは選手にとっては非常にわかりやすい絵であり、トレーニングやゲームを行うことで自然に出てくる現象となればメリットを体感しやすかったと思います。付け加えるとすれば、1トップ・2シャドーと両WBを置く[3-4-3]は、立ち位置のメリットが初期配置の時点で明確に見えやすいシステムでもありました。
このように、選手とはプレーしながらイメージを共有しましたが、言葉で紐解くとすれば、《良い立ち位置を取る》ということが大前提としてあり、「良い立ち位置とは、1人で2人以上を困らせる立ち方のこと」であり、それらはすべて「ゴールを奪うため」にある、と整理することができると思います。
『ポジショナルプレー』の指導とは、このような《立ち位置》の原則に基づいて指導することであると私は解釈しています。
(文:渡邉晋)
【了】