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Jリーグ 4年前

アナリストを充実させたい! 忖度なし。監督とは異なる視点を持つメリットとは?【アナリストとテクノロジー・前編】

ゴールからの逆算、すなわち「良い立ち位置」を追い求め続けた監督時代の6年間を時系列で振り返りながら、来季からレノファ山口の指揮官として現場に帰ってくる「知将」の戦術指導ノウハウをあますところなく公開した渡邉晋氏初の著書『ポジショナルフットボール実践論』から、アナリストとテクノロジーについて論じた「ポジショナルプレー番外編~チームマネジメント論~」を一部抜粋して前後編で公開する。今回は前編。(文:渡邉晋)

text by 渡邉晋 photo by Getty Images

「ここはこうです!」と明確に提出してくれる

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【写真:三原充史】

現在のサッカー界を取り巻く状況を鑑みると、今後指導するチームでは、アナリストの専門家を充実させたいと思っています。実は仙台にはアナリストの専門家がいないことが多く、コーチングスタッフが手分けをして行っていました。私もコーチ時代に経験しましたが、一人のコーチが対戦相手のスカウティングや、自分のチームの映像を作って監督に渡していました。

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 アナリストの専門家がいた時期もありましたが、その頃のことを今思うと、まず仕事が早い。休み明けの朝にはデスクの上に資料が置いてあり、次に対戦する相手についての議論もどんどん進みます。

 また、見方が面白い。非常に客観的にゲームを捉えているので、起きた現象についてクリアかつドライに意見を述べてくれました。私自身が見えていなかった部分を抽出してくれたり、また、違った見方に触れたりしてくれることで多くの刺激をもらうことができました。要は専門を極めているのです。

「監督は多分これを要求している」というようないわゆる忖度もなく、私とは違う見方で、「ここはこうです!」と明確に提出してくれることが、私にとって新鮮で、意外と腑に落ちたりすることがありました。

 ただ、その仕事量を考えると一人では相当大変なので、理想を言えば2〜3人いて、より多角的にいろいろな角度から対戦相手を分析し、また、自分のチームも分析し、今起きている現象を感情論抜きにして解析結果として渡してくれるアナリストが近くにいてくれたら心強いと感じています。

受け入れられるかは監督としての力量

 海外のチームを見に行くと、そのあたりは非常に充実しています。チームが抱えているアナリストの数がそもそも多いし、また、近年はテクノロジーも発達している中、それらを使いこなせる人材も豊富です。その最先端に取り組めば、もっと効率が上がるだろうし、実際にその映像を見た選手にも視覚的にわかりやすいものを提供できるかもしれない。さらには、ゲーム中にリアルタイムで情報をもらいその場ですぐ活用する。そういう部分で監督の決断の選択肢を増やせると思うので、今後はその部門を充実させたいと思っています。

 データには感情がありません。材料として出されるものが、実際に起きている現象のすべてです。もちろん、それらがゲームの内容を克明に表しているとは限りませんが、そこから何を紐解くのか。何を見ようとするのか。そのときのチーム状況を表すヒントがデータには数多く隠されていると思います。ある意味、真実に近いものなのかもしれません。

 それを「必要ない」と拒絶してしまうか、「そういう考えもある」と受け入れられるかは、好き嫌いもありますが、監督としての力量につながる部分かと思います。

(文:渡邉晋)

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『ポジショナルフットボール実践論 すべては「相手を困らせる立ち位置」を取ることから始まる』


定価:本体1700円+税

≪書籍概要≫
渡邉晋は《切る》《留める》《解放》など独自の言語を用い、ベガルタ仙台に「クレバーフットボール」を落とし込んだ。実は選手を指導する際、いわゆる『ポジショナルプレー』というカタカナ言葉は一切使っていない。
にもかかわらず、結果的にあのペップ・グアルディオラの志向と同じような「スペースの支配」という攻撃的なマインドを杜の都に浸透させた。フットボールのすべては「相手を困らせる立ち位置」を取ることから始まる――。
ゴールからの逆算、すなわち「良い立ち位置」を追い求め続けた監督時代の6年間を時系列で振り返りながら、いまだ仙台サポーターから絶大な支持を得る「知将」の戦術指導ノウハウをあますところなく公開する。

詳細はこちらから

【了】

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