バイエルン時代の経験を活かしたシティ
相手ボール時のこのプレースタイルを目の当たりにしたことで、グアルディオラもプレッシングに関する考え方を変えていった。バイエルンが全面的なゲーゲンプレッシングのチームになることはなかったが、自分なりの形でゲーゲンプレッシングを実行するために、チーム構造を多少なりとも変化させたことは事実だった。
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バイエルンはボールを失うと、相手のパスコースとなりえるルートを閉ざし、相手に対してピッチ上で空いているかのように見えるエリアでのプレーを強いる。ボールがそのオープンスペースへと送られるとゲーゲンプレッシングのトリガーが入り、バイエルンはすぐさま相手に襲いかかってボールを奪い取ろうとしていた。
プレッシングシステムに関してグアルディオラのシティに見られるものは、前述の2つのスタイルのある種の複合形だ。バルセロナとバイエルンで過ごした時期に貴重な経験を得られた彼は、今それを活かすことができる状況にある。
ボールを持っていない局面でのプレッシングに関しては、シティはより柔軟で相手に応じたスタイルを採用していることが見て取れるが、その中でもいくつか絶対に守るべきルールがある。
一般的には、相手のGK、あるいはCBがボールを持った際には、まずCFが最初のプレスをかけに行くのが普通だろう。だが、グアルディオラは、両サイドのWG2人が曲線的に走って中央へプレスをかけに行く形を好んでいる。これにより、カバーの影となるサイドのエリアへのパスを防ぎつつ、ボールへのプレッシャーをかけることが可能となる。中盤のセンターでは、2人の「8番」が相手のボランチに対してプレスをかける。
マンチェスター・シティのプレッシングの構造とは?
シティのプレッシングが相手に応じて変化する部分は、CFと両SBの使い方にある。厳しくプレスをかけに行く時にはCFもボールを追い、ボール保持者であるGK、あるいはCBに対して誤った判断を強いることを試みる。両SBもより高い位置からプレスをかけ、相手が最初のプレスの頭上を越えるボールを用いてきたとすれば、相手SBやWGに対処できるようにする。
プレッシングの最初の段階での狙いは、相手がボールを中央のエリアへ展開するよう仕向けることだ。すでに見てきたように、そこはシティが相手に対して数的優位を作り出そうとしていたエリアとなる。
プレーが進められ、相手がまだボールを保持したままシティ側のハーフにまで到達した場合には、優先順位が切り替えられ、シティは中央のエリアを閉ざして相手がサイドのスペースに展開するように仕向けようとする。
こういったすべての動きはわずか数秒の間に実行される。シティがボールを失った際の最初の守備的アクションはプレッシングである場合が多い。フィールドプレーヤーの中で決まりごとが異なっているのは2人のCBと「4番」のみだ。彼らは守備位置を保持し、3人でトライアングルを形成することで、相手が素早いロングパスで中央のエリアへ侵入することを防ごうとする役割がある。
だが、これはシティがいつでも必ずプレッシングを適用しようとしているという話ではない。相手がボールを奪い取った際、最初にプレスをかけたあとは、ラインを下げてコンパクトな守備陣形を敷こうとする場合もある。ラインを下げて相手パスコースを消し、相手にボールを持たせたままにする。
だが、シティには常にいついかなる瞬間にも再びハイプレスを仕掛けることが可能だという感覚がある。その瞬間が訪れるのは、プレッシングのトリガーとなる3つの条件のいずれかが満たされた時で、相手がボールタッチを誤ってプレーの流れを止めなければならなかった時、相手がサイドのエリアへとボールを入れた時、そして相手がシティのゴールに背を向けた選手への縦パスを入れた時だ。
(文:リー・スコット)
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