大卒ルーキーの当たり年
新型コロナウイルスの影響で、今季のJリーグは長い中断期間と再開後の過密日程を強いられた。しかし、関係者の尽力、ファン・サポーターの理解と協力もあり、なんとかフルシーズンを終えることができた。
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5人交代制という特別なレギュレーションの中で、多くの若手にチャンスが与えられ、そこで評価を高めて主力のポジションを勝ち取った選手も少なくなかった。今回は独自の評価で東京五輪世代(U-23)のベストイレブンを選出した。
▽GK
沖悠哉(鹿島アントラーズ)
▽DF
森下龍矢(サガン鳥栖)
渡辺剛(FC東京)
瀬古歩夢(セレッソ大阪)
古賀太陽(柏レイソル)
▽MF
山本悠樹(ガンバ大阪)
安部柊斗(FC東京)
田中碧(川崎フロンターレ)
三笘薫(川崎フロンターレ)
▽FW
上田綺世(鹿島アントラーズ)
林大地(サガン鳥栖)
こうして見ると、大卒ルーキーがいかに当たり年であったかが分かる。森下龍矢、山本悠樹、安部柊斗、三笘薫、林大地の5人がこれに該当する。また惜しくもベストイレブンに入れることはできなかったが、旗手怜央は複数のポジションをこなしながら、三笘とともに川崎の独走での優勝に大きく貢献している。横浜FCの瀬古樹はデビュー戦でゴールを決め、その後もシーズンを通して中盤から昇格クラブの健闘を支えた。
目立ったGKの台頭
もう1つの傾向として若手GKの台頭が目立ったが、その中でも沖悠哉の活躍は目覚しかった。クォン・スンテ、曽ヶ端準という実力者を差し置いてゴールマウスを守り、存在感が際立っていた。
ザーゴ監督が掲げる高いラインをベースにしたスタイルを、幅広いカバーリングで支えたことも評価できる。そして、数多く台頭した若手の中でも沖のミスの少なさは特筆に値する。
右サイドバックは橋岡大樹(浦和レッズ)や岩田智輝(大分トリニータ)といった注目度の高い選手たちの成長も見逃せないが、森下龍矢の台頭は大卒ルーキーの活躍の火付け役とも言える。FC東京の中村帆高は左右のサイドバックで奮闘しながら、五輪代表候補にも選ばれた成長株の一人だが、明治大学の同期でもある森下の活躍を刺激にも励みにもしていたようだ。
森下はサイズこそ大きくないものの、力強い守備と攻撃への素早い切り替え、状況に応じたポジショニングで存在感を示した。課題にしていた“止める・蹴る”という技術的な要素も「ホントにうまくなったな」と振り返る。
「キャンプの時から全然ボールが止められない。開幕戦の頃は判断する時間もなかったが、サガン鳥栖の素晴らしいトレーニングで成長できた。ゴールとか守備はストロングの部分ですが、“止める・蹴る”がよくなって発揮できたと思います」
右サイドバックを基本ポジションとしながら3得点を記録した森下。象徴的だったのが第8節のFC東京戦で、ドリブルから左足で初ゴールを決めた。大学時代は中村帆高とともに就職活動をしていたという“非エリート”だが「ゴールに直結するようなプレーがサイドバックであってもできる」という強みを生かしながら、五輪代表候補として来年さらなる飛躍が期待できそうだ。
CBと左SBに選んだのは…
センターバックも候補は多いが、渡辺剛と瀬古歩夢がファーストセットだろう。渡辺剛はDFとしての個人の成長もさることながら、キャプテンの東慶悟を長期の怪我で欠く中、ゲームキャプテンとして後ろからチームをまとめた。
リーダーシップに意識がいくことで、逆にミスが散見されると、長谷川健太監督は期待も込めて渡辺の課題を挙げた。しかし、統率力と個人の守備がさらにレベルアップしていけば、Jリーグを代表するセンターバックに成長することは間違いない。
瀬古歩夢はセレッソ大阪の堅守を支えながら、良質なビルドアップで効果的な機転となった。マテイ・ヨニッチというJリーグ屈指のセンターバックが隣にいる心強さもあるだろう。デビュー時に比べてセンターバックとして芯が通り、安定感が増した。ギリギリの対応の中でもう一歩足りずに失点するシーンも少なくなかったが、そこは年齢に関係なくセンターバックとして成長するための伸びしろでもある。
バックラインではもう一人、古賀太陽を挙げたい。今季の柏レイソルはセンターバックに多くの怪我人が出たため、センターバックでの出場も少なくなかった。右サイドバックでの出番もあったが、どこのポジションに入ってもパフォーマンスが落ちなかったことは特筆に値する。
もともと右利きでありながら左足のキックが非常に正確で、それが左サイドバックの起用が多い理由の1つでもある。そして、左足のキックはセンターバックや右サイドバックに回ったときにも生かされていた。
(文:河治良幸)
【後編に続く】