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バルセロナ、文句なしの90分。メッシも気持ちよくプレー、新システムはどのように機能したのか【分析コラム】

ラ・リーガ第15節、バジャドリー対バルセロナが現地時間22日に行われ、0-3でアウェイチームが勝利している。ロナルド・クーマン監督はこの試合で今季初めてスタートからの3バックシステムを採用。そして見事に完勝を収めている。では、3バックシステムはどのように機能したのだろうか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

3得点大勝

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バルセロナのバジャドリー戦スターティングメンバー

 バルセロナの選手たちは良い感触を得てクリスマスを迎えることができそうだ。2014年3月以来負けていないバジャドリーに対ししっかりと勝利を収め、上位との差を詰めることに成功している。

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「ミスすることはできない。我々は勝たなければいけない」とバジャドリー戦の前日会見で話したロナルド・クーマン監督は、この試合で今季初めてスタートからの3バックシステムを採用。最前線にはマルティン・ブライトワイトが入り、シャドーにはリオネル・メッシとペドリが並んでいた。

 立ち上がりはバジャドリーのプレスに苦戦したバルセロナだったが、21分にクレマン・ラングレが大怪我を負ったムサ・ワゲ(現PAOK)に捧げるゴールをマーク。リードを奪うことができた。

 その後、バルセロナのイレブンはだいぶ落ち着きを取り戻し、試合をコントロール。ボールを失ってもセンターバックのオスカル・ミンゲサやラングレが恐れず前に出るなど即時に奪回し、バジャドリーにペースを渡さなかった。

 前に出るミンゲサやラングレのプレッシャーがかわされた際は少し危険だったが、バジャドリー側が敵陣でのクオリティーを欠いていたこともあり大きなピンチを迎えることはなかった。反対に、流れを掴んだまま35分に追加点。2-0で前半を終えることができた。

 後半に入ってもペースはバルセロナ。バジャドリーを押し込み、GKジョルディ・マシプを襲い続けた。

 すると65分に3点目。流れるようなパスワークから最後はエースのメッシが仕留めている。この時点で勝負あったと言えるだろう。

 その後、クーマン監督はサミュエル・ウンティティやジュニオール・フィルポ、セルヒオ・ブスケッツ、フィリッペ・コウチーニョなどを投入。ただ、彼ら、とくにウンティティとフィルポはうまく試合に入ることができず、軽率なミスからピンチを招くなど、試合のリズムを壊してしまった。

 それでも、守護神マルク=アンドレ・テア・シュテーゲンのビッグセーブなどもあり、今季5度目のクリーンシートを達成。ほぼ文句なしの90分間を過ごしたと言えるだろう。

3バックシステムはどのように機能したのか

 結果論にはなってしまうが、クーマン監督が用意した3バックシステムは大成功だった。シュート数21本、支配率61%、パス成功率90%というデータサイト『Who Scored』による試合後のスタッツを見ても、いかに内容が良かったかは一目瞭然である。

 では、3バックシステムはどのように機能したのだろうか。

 まず攻撃時のカギを握ったのはミラレム・ピャニッチだ。同選手はスタートこそフレンキー・デ・ヨングと中盤底で横並びとなっているが、流れの中ではアンカーになる。そこから自慢のパススキルを駆使してボールを捌き続け、ライン間へ鋭いパスも通すなど、配給役としての任務をしっかりこなしていた。守備時の対応は相変わらず、といった感じだったが、パス数106本で同成功率96%は見事な数字だ。

 最前線のブライトワイトは無理に下がることなく、高い位置を維持することで必然的に深さを作った。そうすることで、2列目の選手が活きるスペースを提供していたのである。90分間でタッチ数は25回と断トツで少なかったものの、ピッチ内でのアクションは決して無駄になってはいなかった。

 そして、バジャドリー戦でかなり重要な役割を果たしていたのがメッシ、ペドリ、デ・ヨングの3人だ。彼らの動きはバジャドリーにとって相当厄介なものとなっていた。

 攻撃の中心はやはりメッシなので、エースがどれだけ良い形でパスを受けられるかが重要となる。その中でシャドーのペドリと攻撃時はピャニッチよりも高めの位置を取るデ・ヨングが意識したのは、ライン間に飛び込みすぎないこと。仮にメッシ、ペドリ、デ・ヨングの3人が一度にライン間に侵入してしまった場合、渋滞してスペースは狭まり、攻撃の幅も減るからだ。そのため、この3人は最高でも2人だけがライン間に入るよう、バランスを見ながらプレーしていた。

 こうすることで、お互いがお互いのスペースを潰すことがほとんどなくなる。バジャドリーの守備陣形が曖昧だった点は否めないが、これがスムーズな攻撃に繋がっていた要因である。とくにメッシは、運動量があり柔軟に動くことができるペドリとデ・ヨングの両者が存在したことで、非常に気持ちよくプレーしていた印象がかなり強かった。

 3点目のシーンはその狙いがうまくハマったと言えるだろう。

 少し低めの位置でボールを受けたメッシに対し、ライン間にはペドリとデ・ヨングがポジショニング。そしてメッシがデ・ヨングにパスを出すと、後者はゴールに背を向けボールコントロール。その間に今度はメッシがデ・ヨングを追い越してライン間に侵入し、最後はペドリを経由してラストパスを受けている。

 ペドリとデ・ヨングはこの日、共にシュート数0本に終わっていた。しかし一方で、メッシは同11本という数字を出している。3バックシステム上でエースがこうした成績を残せた意味は、決して小さくないはずだ。

躍動したセルジーニョ・デスト

セルジーニョ・デスト
【写真:Getty Images】

 そして、3バックシステムにより水を得た魚のように躍動した選手がもう一人いた。セルジーニョ・デストだ。

 今夏アヤックスから加入し、ここまでクーマン監督の下でコンスタントに出場機会を得ているアメリカ合衆国代表DFは、バジャドリー戦で右ウイングバックに入った。すると立ち上がりから鋭い突破でサイドを活性化させ、35分にはブライトワイトの得点をお膳立て。これがラ・リーガ初アシストだった。

 守備では軽さを露呈するシーンもあったが、デストの非凡な加速力を活かした打開力は最後まで光った。バジャドリー守備陣を困らせるのに十分過ぎる存在感を放っていたと言えるだろう。

 平均ポジションで左サイドの攻撃的DFジョルディ・アルバよりも高い位置を記録し、メッシとはあと少しで並んでいたデストは、この日全体トップとなる5本ものキーパスを繰り出している。パス成功率も97%と申し分ない数字だ。

 デストがこれだけ攻撃面で存在感を示せた理由としては、右CBミンゲサの存在が大きいと言えるのかもしれない。21歳の若きDFは恐れず前に出て高い位置で相手を潰すなど、デストが上がったことで生まれたスペースを確実に埋めていた。それにより、背番号2が安心し大胆に前へ出ることができたということだ。

 選手それぞれが躍動し、3-0という勝利を得たバルセロナ。バジャドリー戦1試合を消化し3バックシステムこそ最適、というのは時期尚早だが、一つのオプションとしての可能性は十分に残せたはずだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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