セットプレーから2発
両者にとって良いチーム状況でマドリード・ダービーを迎えた。アトレティコ・マドリードは8勝2分とリーグ戦で無敗を維持。10試合でわずか2失点と自慢の堅守は健在で、ルイス・スアレスが加わった攻撃陣は進化を遂げている。
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レアル・マドリードは2か月間で2度の連敗を喫したが、カリム・ベンゼマやセルヒオ・ラモスの復帰とともに復調。セビージャとボルシア・メンヒェングラートバッハに連勝して首位アトレティコ・マドリードとの一戦に臨んだ。
スコアを動かしたのはレアルのセットプレー。トニ・クロースが蹴ったアウトスイングのCKをカゼミーロが頭で合わせて15分に先制。63分にはFKのこぼれ球を拾ったダニ・カルバハルが放ったミドルシュートが、ポストとヤン・オブラクに当たってゴールに吸い込まれた。
流れを掴めないアトレティコは30分あたりには布陣を3-5-2から4-4-2に変更し、ハーフタイムに3枚替えを敢行する。後半は少しだけ流れを寄せることができたが、トマ・レマルのシュートは枠を外し、サウール・ニゲスのヘディングシュートはGKティボー・クルトワの正面。セビージャとボルシアMGを無失点に抑えたレアルの牙城を崩すことができなかった。
シメオネの失策
「この試合に対する分析とアプローチは間違っていた」と、ディエゴ・シメオネ監督は敗戦の弁を述べている。アトレティコはここのところ重用している3バックで試合を始めたが、主導権を握ることができなかった。
ヤニス・カラスコとキーラン・トリッピーアーの両ウイングバックはボールを握るレアルに押し込まれた。2トップは前線で孤立し、データサイト『Whoscored.com』の集計では、73分までプレーしたルイス・スアレスのボールタッチ数はわずか23回。ジョアン・フェリックスはシュートを放つことすらできなかった。
4バックへの変更はアトレティコを改善へと導いたがスコアを動かすまでには至らなかった。後半に投入されたレナン・ロディやトマ・レマルを中心に後半は左サイドからチャンスを作ったが、後半になってもレアルの守備の強度は落ちなかった。
レアルは中盤を経由し、ロングボールを使いながら両サイドへとボールを散らす。『Whoscored.com』によれば、ボール保持率が60%を超えた前半のパス成功率は91%。トニ・クロースは前半だけで10本のロングパスを蹴っていた。リスキーな選択をあまりせず、サイドを変えながら正確につないでいった。
レアルのサイドチェンジに対してスライドしなければならないアトレティコの3人のMFは疲弊していく。流れの中から大きく崩れなかったのはシメオネイズムを体現していたが、アトレティコは攻撃にエネルギーを回すことができなかった。かつては「ポゼッションは相手を快適にするもの」と言ったシメオネだが、マドリード・ダービーではボールを握ったレアルが快適にプレーしていた。
老獪なレアルとひ弱なアトレティコ
レアルはセビージャとアトレティコを破って3位に浮上。無敗記録が26試合で途絶えたアトレティコは1試合消化が少ないものの、アトレティコとレアルの勝ち点差は3ポイントに縮まり、2位レアル・ソシエダとは1ポイント差と肉薄。このままアトレティコが簡単に独走することはしばらくなさそうだ。
アトレティコはUEFAチャンピオンズリーグのグループステージ初戦でバイエルン・ミュンヘンに0-4と大敗。既に相手が突破を決めていたリターンマッチでも勝つことができなかった。攻撃的なスタイルへの移行がリバウンドメンタリティの喪失へとつながっているとまでは思えない。ただ、昨季のCLリバプール戦のように、これまでは不屈の精神で強豪相手にも食らいついてきただけに、今季の成績だけを見ると物足りなさが映る。
レアルは対照的に、3試合続けて力のある相手に対する強さを誇示した。35歳になったルカ・モドリッチが3トップと連動して高い位置からプレッシャーをかけて相手の自由を奪う。ボールを持てばトニ・クロースを中心にじっくりとボールを回して勝機を探る。CL3連覇を成し遂げたメンバーは相変わらず老獪で、大一番での勝負強さを改めて示した。
(文:加藤健一)
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