目次
⚫︎出だしでつまづく2連続ドロー
⚫︎プランBはなかったのか?
⚫︎エリクセンを使いこなせず
⚫︎したたかな若手GKにトドメを刺され…
出だしでつまづく2連続ドロー
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)でインテルのグループステージ敗退にもはや驚きはない。なにせ3年連続である。
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現地9日に行われたグループステージ第6節でシャフタール・ドネツクと0-0で引き分けたインテルは、グループ最下位で大会を去ることとなった。これまでの2年間と唯一の違いは、UEFAヨーロッパリーグ(EL)へ回ることすらできなかったことだ。
ケチのつき始めはボルシアMGとホームで引き分けたグループステージ開幕戦だった。続く第2節でもシャフタール・ドネツクとスコアレスドロー。対戦順を考えれば、この2試合で勝ち点を落とすのは非常に危険だった。出だしのつまづきは3年連続グループステージ敗退の大きな要因の1つに違いない。
おそらくアントニオ・コンテ監督ら首脳陣はボルシアMGとシャフタールに連勝して6ポイントを積んだ状態にし、レアル・マドリードとの2連戦のどちらかに勝利、そして第5節と第6節で3ポイント以上上乗せできれば決勝トーナメント進出という絵を描いていたのではないだろうか。
他の2クラブと比較して厳しい展開が予想されるマドリーとの連戦に、どうしても勝利が必要な状況で挑むのは極めて分が悪い。結局、グループ屈指のビッグカードを2つとも落として勝ち点0。第4節のボルシアMG戦に臨む前に、突破は厳しい状況になっていた。
ここで関連して発生する2つ目の敗退要因は、「抜きどころ」を作れなかったことだ。
例年であればCLのグループステージは2週間に一度のペースで消化するが、今季は開幕が遅れたこともあって毎週のミッドウィークにCLの試合が組まれていた。必然的に週2試合のペースが続くため、日程は非常に過密になる。
すると、やはり常に主力を起用し続けるのは厳しくなる。ベテランの多いインテルなら尚更。だからこそCLでは早めに勝ち上がりを決めて、グループステージ終盤を消化試合にするのが理想の展開だっただろう。
プランBはなかったのか?
インテルは昨季、セリエAで絶対王者ユベントスを1ポイント差まで追い詰めたため、今季こそスクデット獲得という期待も大きい。国内リーグ戦も気の抜けない戦いが続くなら、2つの大会でターンオーバーを敷くなり、疲労が溜まってくる11月から12月にかけてのどこかで少し主力を温存できるタイミングを作りたかったはずだ。
ところが10月下旬にCLが開幕して2試合連続ドロー発進、前後の国内リーグ戦でも2試合連続ドローと、公式戦4試合連続で勝利に見放されてしまった。現地9日のシャフタール戦前は公式戦3連勝していたものの、決して流れのよくない状況でメンバーを落とす「抜く」タイミングを作るのは難しい。
GKのサミール・ハンダノヴィッチを筆頭に、ディフェンスラインのステファン・デ・フライやアレッサンドロ・バストーニ、中盤ではニコロ・バレッラやアルトゥーロ・ビダル、そして前線のロメル・ルカクやラウタロ・マルティネスはほぼ出ずっぱりの日々が続いていた。
シャフタールと引き分けてCLグループステージ敗退が決まった後、伊『スカイ』の番組の中で、コメンテーターを務めていたファビオ・カペッロがコンテ監督に「プランBはなかったのか?」と質問したという。
それに対しインテルの指揮官は「もちろん私はプランBを持っている。だが、公開したくない。もし表に出してしまえば、そのために相手も準備してきてしまうから」と言ってかわしたが、イタリアサッカー界が誇る名将の指摘には痛いところを突かれたのだろう。
例えば対戦相手やチーム状況によってシステムを大きく変更するような策はコンテ監督になかったし、選手起用にも柔軟性はそれほどなかった。CLやELで予選も含めれば通算91試合出場という豊富な経験を誇るクリスティアン・エリクセンの活用法を見出せていれば、結果も少しは違っていたのかもしれないが。
エリクセンを使いこなせず
そしてエリクセンはセリエAでもCLでも満足な出場機会を得られない状況に不満を募らせ、今冬の移籍をちらつかせている。彼のような発言力や話題性のあるスター選手が不満分子となることによって、チームの団結に亀裂が入ることだってありうる。戦力的にも彼のイマジネーションやテクニックを生かせなかった反省はあって然るべきだ。これも今季のCL敗退の要因の1つではないだろうか。
最後にもう1つ、インテルにとって想定外だったことがある。それはシャフタールというクラブ、また彼らを支える19歳の守護神アナトリー・トゥルビンの存在だ。
シャフタールはボルシアMGに2連敗&10失点を喫したものの、インテルと2度引き分け、マドリーには2度とも勝利した。それぞれの対戦相手との結果のコントラストが、グループステージを大いにかき回す要因となった。
おそらく最終節の試合中に同時キックオフだったマドリー対ボルシアMGの動向が情報として入ってきていたのだろう。マドリーが2点リードしていることでボルシアMGが敗色濃厚と読んだシャフタールは、終盤にだいぶ露骨な時間稼ぎを披露した。勝ち点1を積み上げれば、ELの決勝トーナメントに回るという最低限の成果を手にできるからだった。
逆にインテルは何としても勝たなければならない。そこでシャフタールは序盤から前がかりになって攻めてくる相手を5バックで受け止めて粘りつつ、終盤は他会場の動向を見極め、賢く時間を使いながら引き分け狙いに切り替えて自力で最低限の成果を得た。強豪を無失点に抑えるうえで見逃せなかったのが、先に述べた19歳のGKトゥルビンの活躍なのである。
したたかな若手GKにトドメを刺され…
昨季まで正GKを務めていたアンドリー・ピャトフの契約が12月末に満了を迎えることもあって、今季から多くの試合でシャフタールのゴールマウスを任されるようになったのがトゥルビンという若手だった。
CLデビューとなったマドリー戦で3-2の勝利に貢献すると、続くインテル戦は無失点。ボルシアMG戦は6失点と苦杯をなめたものの、2度目のマドリー戦は失点ゼロに抑えて金星に貢献。そして9日のインテル戦もゴールを割らせなかった。5試合で3度のクリーンシートというのは見事な成績だ。
しかも相手は格上ばかり。2-0で勝利した2度目のマドリー戦や、今回のインテル戦でも雨あられのように降り注ぐシュートをひたすら止めまくった。5試合で23本のセーブを記録し、衝突を恐れない勇敢な飛び出しでクロスもことごとくペナルティエリアの外に弾き出した。
第2節のインテル戦でゴール左上角に飛んだルカクのフリーキックを、目一杯に体を伸ばして阻止したセーブは圧巻だった。今回の対戦でも終盤に立て続けに訪れたピンチを鋭い反応で免れ、後半アディショナルタイムには衝突の後に倒れたままになったり、ゴールキックをゆっくり準備したりするなど巧みに時間を稼ぐしたたかさも見せた。結局、インテルには1点も取られていない。
出だしでつまづいたインテルはそれを最後はで引きずり、プランBを用意できぬまま主力に頼りがちに。そして出番の少ないスター選手を持て余し、他力本願な状況を自分たちの過ちによって作ってしまった。そして最後は血気盛んな若手GKにトドメを刺された。
シャフタールには今年8月のEL準決勝で5-0の勝利を収めていたが、数ヶ月後には2試合戦って1点も奪えなくなっていた。3年連続というだけでなく、なんとも後味の悪い失望感ばかりが残るインテルのCLグループステージ敗退だった。
(文:舩木渉)
【了】