効果的だったレアルのサイド攻撃
結局のところ、レアル・マドリードが勝つようにシナリオができていた。シャフタール・ドネツクには連敗したが、最終的には首位で決勝トーナメント進出を決めている。
【今シーズンの欧州サッカーはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】
最終節を前に、ボルシア・メンヒェングラートバッハが勝ち点8で首位に立っていた。レアルとシャフタールは同7だが、直接対決の成績でシャフタールが上。インテルは同5で最下位という状況で最終節を迎えている。
立ち上がりから主導権を握ったのはレアルで、ボルシアMGのプレスを回避して押し込んでいく。ルーカス・バスケスのクロスボールをカリム・ベンゼマが頭で合わせて9分に先制。32分にはロドリゴ・ゴエスのクロスを再びベンゼマが合わせた。
ベンゼマの2得点はいずれも右サイドからのクロスだった。レアルは試合を通じて、明らかに右サイドから攻撃を仕掛けていた。
1つ目の狙いはカウンター対策。右サイドから押し込むことで、ボルシアMGのマルクス・テュラムを低い位置まで戻すことができた。テュラムがボールを持ったとしてもゴールからは遠く、前回対戦に比べてもボルシアMGはカウンターからチャンスを作る場面が少なかった。
ルーカス・バスケスの攻撃面での特徴を活かすこともできた。ダニ・カルバハルの負傷により右サイドバックで高いパフォーマンスを見せているが、本来はウイングの選手である。守備能力は高いが、カウンターを受けたときの対応では少し分が悪い。なるべく前目のポジションでプレーさせた方が特徴は活きる。
後半は決定機をことごとく外したが、2点のリードがあれば十分だった。ボルシアMGのカウンターを封じたことで、レアルは試合の主導権を手放さなかった。
技術でゴールを決めるベンゼマ
試合を決めるのはエースと呼ばれる男の役割である。ベンゼマはきっちり仕事をやってのけた。
185cmと上背があるが、一見そう見えないのは少し猫背だからだろうか。身体能力だけで勝負するようなタイプではなく、ゴールシーンもフリーだった。そこまでの過程が素晴らしかった。
右サイドからのクロスに対して、ファーサイドにポジションを取っていた。175cmと小柄なシュテファン・ライナーの前で、マティアス・ギンターの死角からゴール前に飛び込んでいく。再現性のあるゴールで、相手は防ぐのが難しい。
前回対戦の同点ゴールも右サイドからのクロスだったが、これはセルヒオ・ラモスが合わせている。ベンゼマは自分にクロスボールが合わないと見るや否や立ち止まった。ギンターからマークを外し、セルヒオ・ラモスの折り返しを受ける準備をしている。ボールはカゼミーロの下にこぼれてカゼミーロが決めたが、ベンゼマの冷静な判断が光っていた。
現在のズラタン・イブラヒモビッチもそうだが、身体能力に依存しないゴールバリエーションがあれば、ベテランの域に達しても得点を重ねられる。ギンターも26歳という年齢以上に経験豊富なセンターバックだが、ベンゼマの方が1枚も2枚も上手だった。
黙々と汗をかく35歳の背番号10
主将セルヒオ・ラモスを欠いたチームは勝者のメンタリティを忘れ、ベンゼマを欠くと得点力不足に陥ると言われる。今季は両者の離脱に加えてカゼミーロの不在も響いた。既に昨季に並ぶ3敗をラ・リーガで喫しているレアルだが、UEFAチャンピオンズリーグでは何とか生き残っている。
勝負どころではいつもモドリッチが輝いている気がする。ベンゼマやセルヒオ・ラモスがゴールを決める陰で、10番を背負う35歳はチームのために黙々と汗をかいている。この試合の主演はベンゼマだったが、モドリッチには助演男優賞をあげたい。
トニ・クロースとともにチームの心臓としてピッチの隅々にパスを送り届ける。右サイドでルーカス・バスケスとロドリゴをサポートし、ハーフスペースに走りこんだかと思えば、2人が上がった裏のスペースをカバーしていた。モドリッチを90分見ていれば、チームが置かれている状況と狙いが分かった。2度あった決定機を決めていれば主役になっていたかもしれないが、それでもモドリッチの献身が色褪せることはない。
勝負どころで力を発揮するのがレアルである。35歳のモドリッチも来週33歳になるベンゼマもまだまだ健在だ。彼らがプレーし続ける限り、レアルは今季も優勝候補と呼ぶことができる。
(文:加藤健一)
【了】