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バルセロナは最低最悪の結果を招いた。財務問題解決で放出の男が躍動、メッシとC・ロナウドの明暗が分かれた理由【CL分析コラム】

チャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグG組第6節、バルセロナ対ユベントスが現地時間8日に行われ、0-3でアウェイチームが勝利している。バルセロナはこの結果により、2位通過が確定。最低最悪の結果を招いた。90分間で、一体何が起きたのだろうか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

まさかの2位通過

チャンピオンズリーグ
【写真:Getty Images】

 リオネル・メッシは今季開幕前、「チャンピオンズリーグ(CL)を優勝するために戦いたい」と話していた。しかし、その目標を達成するまでの道のりは、これまで以上に過酷なものとなるだろう。

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 グループリーグ第1節から第5節までは順調だった。ディナモ・キエフ、フィレンツェバロスと力の劣る相手にはしっかりと勝ち、最大のライバルであったユベントスにも敵地で0-2と勝利。首位通過をほぼ手中に収めていた。

 ただ、グループリーグ最終節のユベントス戦で、ここまで積み上げてきたものがまるでジェンガのように崩れてしまった印象だ。

 引き分け以上、負けてもスコア次第で首位通過が決まる状況だったバルセロナだが、立ち上がりから不安定な姿を露呈。すると12分、ペナルティーエリア内でクリスティアーノ・ロナウドをロナルド・アラウホが倒してしまいPKを献上。かなり厳しい判定だったようにも思うが、これを決められいきなりリードを許す。

 その後もペースを掴めないバルセロナは、20分にも失点。ファン・クアドラードの上げたクロスをウェストン・マッケニーがボレーシュートで叩き込んだ。

「試合が始まった時、攻撃性がなく、勝つためというより負けないためにプレーしているように見えた」。

 試合後のロナルド・クーマン監督のコメントだ。確かにゲームへの入り、そしてこの試合に懸ける気持ちは明らかにユベントスが上回っていた。結果論にはなってしまうが、それがわずか20分間での2失点に繋がったと言わざるを得ない。

 そしてバルセロナは後半開始早々にも失点。ペナルティーエリア内でクレマン・ラングレがハンドを犯し再びPKを献上。これをC・ロナウドに冷静に流し込まれた。スコアは0-3。この時点でバルセロナはユベントスに順位を上回られた。

 なんとか1点を返したいホームチームだったが、結局最後までユベントスの牙城を崩せず、0-3で完敗。土壇場で2位に転落してしまった。

枠内シュートはメッシのみ

 CLという舞台において、バルセロナが本拠カンプ・ノウで敗戦を喫したのは2012/13シーズンの準決勝バイエルン・ミュンヘン戦以来のことだという。彼らにとっては2位通過という結果も含め、かなり屈辱的な試合となったはずだ。

 現在のバルセロナには攻撃の迫力や可能性というものがない。今季のラ・リーガでも10試合中6試合で最少得点に終わっているなど、ここが不調の原因となっている。

 このユベントス戦では無得点に終わった。イタリア王者もまだ完成形を見せているとは言い難いが、それでもバルセロナは崩し切るに至らなかった。

 ユベントスはスタートシステムは3-5-2だが、守備時はダニーロを右サイドバックに回し、左ウイングバックのアレックス・サンドロを一列下げた4-4-2に変化する。守り方としてはより中央重視。サイドへのボール展開はある程度許し、とにかくゴールに近い中央エリアに人数を集めていた。

 そのユベントスに対し、バルセロナは大いに苦戦を強いられた。上記した通りサイドへはボールを回せるが、前線に高さのないホームチームは単純なクロスを拒む。結局サイドから中へ、中からサイドへを繰り返すだけで、ユベントスに怖さを与えることはなかった。

 右サイドのフランシスコ・トリンコンは、フリーになる回数も少なくなかったため危険なアクションを起こさねばならなかったが、沈黙。それどころかメッシやセルジーニョ・デストが侵入するスペースを埋めてしまうことがあった。まだ若く経験値が浅いのは仕方ないが、攻撃の芽を潰したと言わざるを得ない。

 中が堅いユベントスに対し、バルセロナはペナルティーエリアに侵入することも難しかった。すると必然的に、ボックス外からのシュートが増える。ただ、当然ながら入る確率は高くない。さらに、ユベントス守備陣はシュートブロックに入るスピードが抜群。コースは狭められ、枠に飛んでもGKジャンルイジ・ブッフォンがさすがの力を発揮し、確実にシュートをブロックした。

 好調マルティン・ブライトワイトが入り、チームとしても徐々に慣れてきたのか、後半は時間が経過すると同時にペナルティーエリア内へ鋭いパスが通るシーンが増えた。しかし、ユベントス守備陣の対応の速さもさすがで、簡単にはゴールを許してもらえない。力の差を見せつけられた。

 データサイト『Who Scored』によるとバルセロナはこの日、シュート数20本を記録。これはユベントスの8本を大きく上回っている。しかし、そのうちの60%はペナルティーエリア外から放たれたもの。また、枠内シュートを放ったのはメッシのみ。シュートの「数」は多いが、得点の可能性はそれと全く比例していないのである。

捕まえられないアルトゥール

アルトゥール
【写真:Getty Images】

 ただ、この日無得点に終わった攻撃陣よりも目立ったのは守備陣の脆さだ。「試合をコントロールできていなかったし、守備も悪かった。最初の30分で事実上試合に負けてしまった」と試合後にクーマン監督もコメントしている。

 とくに、今年に財務的な問題を解決するためのトレード要員として放出したアルトゥールには相当手を焼いた。この試合でブラジル人MFが恋しくなったバルセロナサポーターの方も少なくないのではないか。

 中盤底に入ったアルトゥールは、ビルドアップの中心としてプレーしていた。そんな同選手に対し、バルセロナはアントワーヌ・グリーズマンがマーク。流れの中でフランス人FWがサイドに出ていた場合は、中盤底のフレンキー・デ・ヨングを前に上げアルトゥールの自由を奪おうとしていた。

 しかし、デ・ヨングとグリーズマンに共通しているのはなかなか守備範囲が広いということだ。そうなると当然、アルトゥールにプレッシャーを与えられない場面も増える。つまり、マークの付き方が曖昧で捕まえきれなかったのだ。

 そうなると、アルトゥールは躍動する。非凡なパスセンスを武器に攻撃の組み立てに関与し続けてリズムを生み、柔らかいタッチを駆使して密集地帯も難なくくぐり抜ける。味方へのサポート、そしてポジショニングも絶妙で、バルセロナ時代同様に派手さはないが良い効果をもたらしていた。

 後半に入ってからは基本的にペドリがアルトゥールのマークを担当したが、彼には荷が重すぎたようだ。自身の背後を取られる場面もあり、捕まえきるには至らなかった。結局アルトゥールは71分までプレーしたが、GKとDF陣を除き最多となるパス52本を記録し、成功率はチーム内2位の90%を記録。また、チームトップタイとなるドリブル成功数2回という数字も叩き出している。

改善できなかった問題点

 また、バルセロナの守備にはもう一つ大きな問題点があった。それは、中盤と最終ラインの距離感だ。

 ユベントスは先述した通りアルトゥールを中心にボールを回してくる。それに対しバルセロナは、積極的に前から相手を捕まえに行く。中盤底のデ・ヨングもミラレム・ピャニッチも前に出ていく。ここまでは悪くなかった。

 しかし、最終ラインが連動してアップすることができておらず、中盤底2枚のプレスバックも間に合わないことでディフェンスラインと中盤の間に大きなスペースが空く。そこに簡単に侵入を許しては前を向かれ、モラタやC・ロナウドに押し込まれた。そして、ゴール前ではラングレらが不安定な守備を露呈。大量失点を招いたのだ。

 中盤と最終ラインの連係が取れていないと感じたのは、15分の場面だった。

 ユベントスがボールを保持すると、左サイドのA・サンドロに展開。この時トリンコンがプレッシャーを与え、パスコースを限定。そして中を警備しているピャニッチの前にはC・ロナウドがいるという状況だ。

 しかし、A・サンドロのサポートにモラタも寄ってきた。この時、ピャニッチの傍にはC・ロナウドとモラタがいるという状況。当然、パスを出されたくないピャニッチは寄ってきたモラタを警戒。そしてC・ロナウドのマークをデストに託した。が、デストがこれを感じ取れず、C・ロナウドがフリーに。それを見たピャニッチは背番号7の方に重心を寄せるが、今度はモラタがフリーに。そしてA・サンドロからボールを出され、サイドに追い込んだことが無駄になった。

 細かいシーンではある。しかし、モラタにパスが出た瞬間、デ・ヨングは両手を大きく広げ首を傾げるなど不満そうなアクション。ピャニッチもデストに対し手で「前に出てこい!」というジェスチャーを見せた。まさに、お互いに意識が通じておらず、相手を“簡単に”逃がしてしまったという典型的な場面だ。

 バルセロナはこうした曖昧な対応を最後まで改善できずにいた。捕まえられず、逃げられ、押し込まれ、不安定な守備を露呈。そして3失点という最悪の結果を招いた。

 この試合では2大スターの対決にも注目が集まったが、メッシは沈黙。一方のC・ロナウドはPKであるが2点を奪った。チームの状態が、そのままエースの結果にも反映されたと言えるだろう。とにかく、2位通過となったバルセロナは、歴史的大敗を喫したバイエルン、さらにはリバプールらとのいきなりの対戦を覚悟しなければならない。

(文:小澤祐作)

【了】

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