攻撃陣が停滞するビジャレアル
ビジャレアルはラ・リーガで3戦連続ドローとなった。公式戦で見ても5試合で1勝4分。唯一の勝利となったスィヴァススポル戦も、75分に奪った決勝点を守り抜いたものだった。
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いかんせんゴールが遠い。4試合連続で1得点が続き、この試合は無得点。攻撃陣が機能していない。
エルチェ戦は1トップにジェラール・モレノ、右ウイングにはサミュエル・チュクウェゼで左には19歳のアレックス・バエナが先発した。4-5-1で守るエルチェに対して前半はほとんどチャンスを作れず。シュート3本で前半を終えている。
ビジャレアルはハーフタイムに交代カードを切る。久保建英とパコ・アルカセルを入れて4-4-2に変更。この2枚替えによって一時的にビジャレアルの攻撃は活性化した。
前半は3本だったシュート数は後半だけで9本を記録している。4-4-2の両サイドハーフ、久保とマヌ・トリゲロスは積極的に中央でプレーした。2人はライン間でボールを引き出し、相手を押し込むことができた。
ビジャレアルにとって最大の決定機が訪れたのは73分。ダニエル・パレホのパスをボックス内で受けた久保がゴールを狙ったが、左足のシュートは相手GKに阻まれた。85分には久保が大外のペルビス・エストゥピニャンにピンポイントでクロスを上げたが、シュートはミートせずGKの両手に収まった。
久保建英を活かす「9番」
9番(センターフォワード)の重要性を改めて認識させられる。ビジャレアルが複数得点を奪えなかった直近の5試合は、パコ・アルカセルの不在期間と重なる。代役を務めたカルロス・バッカも先月29日のレアル・ソシエダ戦で負傷し、直近のスィヴァススポル戦では20歳のフェルナンド・ニーニョが起用されている。
「前半はうまくプレッシングを開始できたが、深さを見つけることができなかった」と、エメリ監督は試合を振り返る。「深さ」とは敵陣でプレーした際の奥行きを指している。そして、深さを作るのは前線の選手の役割になる。
先発した前線の3人は足下でボールを受けようとライン間で待つシーンが多かった。ジェラール・モレノが降りてきたところにバエナやチュクウェゼが走りこめば深さは作れるが、そういった狙いも乏しかった。裏を取る動きがないので、エルチェはブロックをコンパクトにして守ることができた。
ボールタッチ数こそ多くないが、久保と同時にピッチに立ったパコ・アルカセルの働きが効果的だった。しかし、負傷明けのパコ・アルカセルは78分に負傷交代。「同じ(箇所)かどうかは分からないが、筋肉系の怪我だ」とウナイ・エメリ監督は試合後に話したが、パコ・アルカセルを失った試合終盤のビジャレアルは再び攻め手を失った。
データサイト『Whoscored.com』の集計では、30分強プレーしたパコ・アルカセルのボールタッチ数がわずか10だった。しかし、絶えずDFラインと駆け引きするパコ・アルカセルがライン間にスペースを生み出すことで、スペースで活きるタイプのトリゲロスや久保は、何度もそのエリアで前を向くことができる。パコ・アルカセルが深さを生み出したことで久保のプレーが活かされた。
レギュラーに近づくには…
久保が加入後唯一となるゴールを決めた10月22日のスィヴァススポル戦では、カルロス・バッカが深さを作っていた。
「私がバレンシアの監督だった時のダビド・シルバと同じ特徴がある。それは相手のライン間でプレーし、スピーディーにボールを扱うといったものだ」
以前、エメリ監督は久保をこう評したことがある。久保をダビド・シルバに重ねるのであれば、ゴールゲッターだったダビド・ビジャの役割は必要不可欠。ビジャレアルでその役割を担うパコ・アルカセルとカルロス・バッカが今はいない。ジェラール・モレノもできるが、それを続けると彼自身の特徴を殺してしまうことになる。
「タケ(久保)がプレーするとき、彼は最後の3分の1でプレーを終えゴールに貢献する必要がある。彼が貢献できた日には、私たちも一歩前進することになるだろう」とエメリは語る。久保がライン間でプレーすることが得意なのは間違いないが、プレーの選択肢を増やすことで周りを活かし、ひいては自身が活きることになる。チュクウェゼやバエナといった他の若い選手にも言えることだが、プレーの幅を広げることがレギュラーへの近道になるのではないだろうか。
(文:加藤健一)
【了】