石橋を叩いて渡るビジャレアル
内容は散々だったが、ビジャレアルのウナイ・エメリ監督は「我々は目標を達成できて幸せ」と試合後に語った。グループステージ突破が一番の目標である。得点は1つだけだったが、相手にほとんどチャンスを作らせなかった。引き分け以上で突破が決まる状況で、石橋を叩いて渡るようにリスクを取らない戦い方をしたのはエメリらしかった。
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時計の針が57分を回ったところで最初の交代カードが切られた。ジェレミ・ピノがピッチに入り、久保建英がアウト。5戦連続先発となったこの試合で、久保はチャンスにほとんど絡めなかった。
久保のパフォーマンスを振り返る前に、チームとしての戦い方を整理しなければいけない。久保が不発に終わったと言うよりは、チーム全体としてほとんどチャンスを作ることができていなかった。
スィヴァススポルはほとんどボールを持つことなく自陣に引きこもっている。ビジャレアルのセンターバック2人はノープレッシャーでボールを持つことができたが、前方はスィヴァススポルの選手が壁を作っていた。
スィヴァススポルは4-2-3-1だが、ほとんど6-3-1だった。大外のレーンはサイドハーフが埋めていたので、4バックは中央を固めている。ビジャレアルはチーム全体としてボール保持からフィニッシュにつなげるための方法を見つけることができなかった。
1トップで起用されたニーニョは中央から動かず、サミュエル・チュクウェゼも左サイドに張ったまま。ハーフスペースの久保とアレックス・バエナは中盤にボールをもらいに降りてくる場面があったが、2人はマンマークされている。ニーニョやチュクウェゼがダイアゴナルにDFラインの裏を取ったり、ペーニャがオーバーラップする場面が増えればよかったが、そういうシーンは多くなかった。
右サイドでも輝けず
右サイドで先発した久保のスタートポジションは右のハーフスペースだった。ライン間でボールをもらって前を向くのは得意なプレーだが、この日は左サイドバックが久保にマンマーク。久保が降りてきても、DFラインを放棄して久保についてきた。
なかなかボールが触れない久保はサイドに開こうとするが、そうすると右サイドバックのルベン・ペーニャがオーバーラップするスペースを埋めてしまうことになる。指揮官の声と思われる「タケ」という久保を呼ぶ声が聞こえ、久保がハーフスペースにポジションを戻すシーンが前半だけでも何度かあった。
これまでは左サイドで起用されることも多かったが、右サイドでプレーしたこの日も苦戦していた。得意なポジションではないことが輝けない理由に挙げられることもあったが、この試合に限って言えばサイドは関係ない。個人で打開するタイプではないため、周囲との関係性が重要になるが、この試合の先発メンバーの中でそれを作ることができなかった。個人のパフォーマンスというよりは、周囲との連係こそが輝けない根本的な理由ではないだろうか。
流れを変えたトリゲロス
改めて主力の重要性が分かった試合でもあった。68分にマヌ・トリゲロスとダニエル・パレホがピッチに入ると、ボールの回り方が明らかに変わった。彼らのスペースを生む動きは秀逸だった。
ファーストプレーから違った。パレホが降りてきて相手の中盤を引き連れると、そのスペースにトリゲロスが走りこんで縦パスを受ける。トリゲロスはワンタッチで左サイドに展開してチャンスを作った。データサイト『Whoscored.com』によれば2人は20分強のプレー時間で70本のパスを成功。2人と交代で退いたフランシス・コクランとバエナが68分で合わせて86本だったことからも、その多さが分かるだろう。
バイタルエリアを使えるようになったビジャレアルが、得点を奪うのにそう時間はかからなかった。パレホからパスを受けたトリゲロスがタメを作りながら左サイドにロブパスを送る。大外からDFラインの裏を取ったハウメ・コスタがゴール前に折り返すと、チュクウェゼはゴールに流し込むだけだった。
引き分け以上で良かったビジャレアルは、ボールを回しながら相手をいなして時計の針を進めた。これまで先発の機会が少なかった選手が先発で起用されたが、主力との差が明らかになった試合だった。消化試合となった最終節でも久保は先発することになりそうだが、厳しい状況はまだまだ続くだろう。
(文:加藤健一)
【了】