全く変わらないビエルサのコンセプト
マルセロ・ビエルサが表舞台に帰ってきた。
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独自の超攻撃的サッカーでアルゼンチン代表とチリ代表を率いてワールドカップを戦い、アテネ五輪では圧倒的な強さで金メダルを獲得。スペインのアスレティック・ビルバオではあのペップ・バルサとのちに伝説となって語り継がれる一戦を繰り広げるなど、世界中のサッカーファンに強烈な印象を与えてきた。
しかし、以降そのキャリアは平坦とは言い難く、マルセイユ(1年で辞任)→ラツィオ(就任2日で辞任!)→リール(4カ月で解任)と渡り歩き、行き着いた先は当時イングランド1部(チャンピオンシップ)に所属するリーズ・ユナイテッドであった。
この経歴の流れを見れば誰しもビエルサのキャリアは終わった、そう捉えられても仕方ないかもしれない(無論、本人はそんなことなど意に介さないだろうが……)。だが、彼は自分で選んだ道で昇格を掴み取り、プレミアリーグという世界最高峰の檜舞台に戻ってきた。
では、ビエルサが2年の歳月をかけて咲かせた今季のリーズが持つ特徴を戦術的に見ていこう。
といっても、過去ビエルサが率いてきたチームを知っている人ならば、彼のコンセプトが時を経てもまったく変わらず貫かれていることにすぐに気が付くはずだ。
ビエルサが頑なにマンツーマンに拘る理由とは?
まず守備に関しては「+1」と「-1」と「マンツーマン」が基本的な原理原則となる。
「+1」とは後ろの最終ラインのことで、相手が2トップであれば3バック、相手が3トップであれば4バックで「+1」の数的優位を担保する。一番後ろで「+1」を担保するためにはどこかで「‐1」を受け入れなければならない。ビエルサはこの「-1」を最前線のFWに課す。相手が4バックならば3トップ、相手が3バックならば2トップで対峙し、残りの選手は全員マンツーマンでマッチアップを明確にして守る。これはビエルサが過去率いてきたすべてのチームに貫かれている基本原則である。
ビエルサが頑なにマンツーマンに拘る理由はいくつか考えられる。
まず一つ目は現代サッカーでは「ゾーンが主流」ということが挙げられる。ゾーンが主流の時代に育ってきたアタッカーは、当然ゾーンディフェンスを破る術には慣れている。だがマンツーマンには慣れていないので、人にベッタリ張り付かれるのを嫌がる選手は意外と多い。そういう時代性を逆に利用しているのだ。
昨シーズン、イタリアのアタランタが同じくマンツーマンを主体とした戦術でCLベスト8に躍進するなどアップセットを演じたが、「持たざる者」の戦略として時代性を逆手にとった弱者の兵法は極めて理に適っている。
(文:龍岡歩)
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【了】